WNBAラスベガス・エイセズ所属のチェルシー・グレイ選手は、リーグを代表するポイントガードの一人です。
その卓越したゲームメイク能力から「ポイント・ゴッド(Point Gawd)」とも称され、これまでにWNBAで3度の優勝とファイナルMVP受賞、さらにオリンピック2大会連続金メダルなど輝かしい実績を残しています。
怪我を乗り越えながら成長を続けたグレイ選手のこれまでの歩みを、2025年シーズン開幕時点まで振り返ります。
大学時代の試練とWNBA挑戦
グレイ選手はカリフォルニア州出身で、名門デューク大学で大学バスケットボールに打ち込みました。
しかし大学3年生だった2013年に右膝を脱臼し、その後の2014年シニアシーズン序盤にも同じ右膝を再び負傷してしまいます。
この重傷により大学でのキャリアは途中で断たれましたが、それでも卓越した才能が評価され、2014年のWNBAドラフトでは全体11位でコネティカット・サンから指名されました。
リハビリのためドラフト直後の2014年シーズンは全休しましたが、翌2015年に晴れてWNBAデビューを果たし、プロの舞台に立ちました。
ロサンゼルス・スパークスでの飛躍
2016年シーズン開幕前、グレイ選手はトレードによりロサンゼルス・スパークスへ移籍します。
この年、スパークスでは控えポイントガードとしてプレーしましたが、プレーオフで存在感を発揮しました。特にWNBAファイナルでは、第5戦で後半に連続11得点を挙げる活躍を見せ、チームの13年ぶりの優勝に大きく貢献します。
これがグレイ選手にとって初のWNBAチャンピオンとなりました。
翌2017年シーズン、スターターに抜擢されたグレイ選手は一躍リーグ屈指の司令塔として台頭します。5月には自身初の1試合25得点を記録し、シーズンを通じて得点やアシストで自己最高を更新しました。
また同年には初めてWNBAオールスターに選出されます。スパークスはこの年もWNBAファイナルに進出し、グレイ選手は第1戦で残り2秒から決勝シュートを沈めました。
惜しくも連覇はなりませんでしたが、その後のシーズンでもグレイ選手は安定した活躍を続けます。2019年にはキャリア最高の1試合30得点をマークし、チーム史上3人目となるトリプルダブル(13得点・13アシスト・10リバウンド)も達成しました。
同年にはオールWNBAファーストチームにも選出されるなど、リーグトップクラスのポイントガードとして地位を確立しています。
グレイ選手は2020年シーズンまでスパークスに在籍し、5年間で3度のオールスター選出など輝かしい実績を残しました。
そして2021年、新天地ラスベガス・エーシズへと活躍の場を移すことになります。
ラスベガス・エーシズでの黄金期
2021年、グレイ選手はフリーエージェントでラスベガス・エーシズと契約し、新たな挑戦を始めました。
エーシズはグレイ選手の加入後さらに強力なチームとなり、2022年シーズンには球団史上初のWNBA制覇を成し遂げます。
グレイ選手自身も司令塔として攻守にわたりチームを牽引し、この2022年ファイナルではシリーズMVP(ファイナルMVP)に輝きました。
勢いに乗ったエーシズは翌2023年シーズンにもWNBAを制し、グレイ選手は2年連続でチャンピオンリングを手にしました。
チームの連覇達成にあたり、グレイ選手は2023年シーズンに平均15.3得点・7.3アシスト・4.0リバウンドと自己最高の成績を残し、リーグを代表する選手として活躍します。
しかし、2023年WNBAファイナル第3戦で左足を負傷し、第4戦を欠場するアクシデントもありました。エーシズはグレイ選手不在の中でも勝利して連覇を果たしましたが、この負傷により彼女はオフシーズンをリハビリに費やすことになります。
グレイ選手は2024年シーズン開幕当初こそリハビリのため戦列を離れていましたが、同年6月に復帰を果たし、再びチームの司令塔としてコートに立ちました。
エーシズは三連覇を目指しましたが、2024年シーズンはプレーオフで惜しくも敗退しチャンピオンの座を明け渡しています。
そうした中、グレイ選手は2024年4月にエーシズとの契約延長に合意し、2025年までチームに残留することが発表されました。
アメリカ代表での活躍
WNBAで輝きを放つ一方、グレイ選手はアメリカ女子代表の一員としても活躍しています。
2021年には東京で開催された2020年オリンピックの代表メンバーに選出され、初出場のオリンピックで金メダルを獲得しました。
さらに2022年にはFIBA女子ワールドカップ(オーストラリア大会)でも代表チームの主力としてプレーし、チームは優勝を飾ります。
グレイ選手自身も大会を通じて平均約9得点・5アシストを記録し、決勝の中国戦では10得点8アシスト3スティールと活躍しました。
そして2024年のパリ・オリンピックでも再び代表に選ばれ、フランスとの決勝戦を67-66の僅差で制して2大会連続となる金メダルを手にしています。
コート外でのエピソード
グレイ選手はコート外でも模範的な存在です。
自身がLGBTQ+コミュニティの一員であることを公表しており、2019年11月には大学時代からの友人で元女子バスケットボール選手のティペーサ・ムーアラーさんと結婚しました。
2023年には夫人が第一子を妊娠したことを明かし、翌2024年2月には長男が誕生しています。
さらにオフシーズンにはアマチュア選手の育成にも積極的で、地元のAAU(アマチュア体育連合)の場で子どもたちにバスケットボールを指導するなど、次世代への貢献にも力を入れています。
2025年シーズンに向けて
2025年シーズン開幕を迎え、グレイ選手は引き続きラスベガス・エイセズの主力としてチームを牽引する予定です。
契約延長により少なくとも2025年までエイセズに在籍することが決まっており、本人も「ラスベガスで歴史を追求したい」と語るなど、チームへの強い愛着とさらなる優勝への意欲を見せています。
2024-25年のオフシーズンには、新設された女子3人制バスケットボールリーグ「Unrivaled(アンライバルド)」に参戦し、自身がキャプテンを務めたチーム「ローズBC」を初代優勝に導きました。
グレイ選手はその決勝戦でもMVPに選出され、依然として健在ぶりを示しています。連覇を逃したエイセズにとって2025年シーズンは王座奪還を期す戦いとなりますが、経験豊富なグレイ選手の存在はチームにとって心強い支えとなるでしょう。
出典
- Chelsea Gray – Wikipedia英語版
- Las Vegas Aces sign Chelsea Gray to contract extension – ESPN(Associated Press配信)
- Rose win Unrivaled’s first women’s 3-on-3 title – ESPN,
- Gray, Lawson, U.S. Women’s National Team Win FIBA World Cup Gold – デューク大学公式サイト
- Las Vegas Aces’ Chelsea Gray and Wife Share Adorable Halloween Baby Announcement – People
- Kelsey Plum Extends Her Warm Wishes as Teammate Chelsea Gray Welcomes New Family Member – Essentially Sports,