ミネソタ・リンクス所属のナフィーサ・コリアーは、WNBAを代表するフォワードの一人です。
大学時代から高い評価を受け、WNBAデビュー後すぐに新人王を獲得して以降、複数回のオールスター選出や主要個人賞の受賞を重ねています。
アメリカ代表としてオリンピックで金メダルを獲得し、近年では自身が共同設立した新リーグでの活躍や母親としての復帰も話題となりました。
ここでは、2025年シーズン開幕時点までの最新情報を含め、コリアーの大学時代から現在までの歩みをまとめます。
大学時代の活躍(コネチカット大学)
コリアーは2015年に名門コネチカット大学(UConn)に入学しました。当初は他校への進学も検討しましたが、キャンパス訪問でチームの結束の強さに触れ、UConnでプレーすることを決めています。
1年生の2015–16シーズンに早速NCAA女子トーナメント制覇を経験し、その後4年間すべてでチームをファイナルフォーに導きました 。
個人としても在学中に数多くの栄誉を手にしています。大学通算2,401得点・1,219リバウンドを記録し、UConn史上5人目となる「通算2000得点・1000リバウンドクラブ」入りを果たしました 。
これはマヤ・ムーアやブリーナ・スチュワートら歴代名選手に肩を並べる快挙です。またシニア(4年生)シーズンの2018–19年には平均20.8得点・10.8リバウンドのダブルダブルをマークし、NCAAパワーフォワード最優秀賞であるカトリーナ・マクレイン賞を受賞しました 。
同年にはAP通信選出のオールアメリカン(1stチーム)にも選ばれており、2年生の2017年にも同賞1stチーム、3年生の2018年には2ndチームに選出されています 。大学で残した実績と安定した活躍により、コリアーはドラフト上位候補として注目される存在となりました。
デビュー~新人賞とオールスター (2019–2020年)
2019年のWNBAドラフトでコリアーは全体6位でミネソタ・リンクスに指名されました 。
ルーキーながら開幕から先発に抜擢されると、その期待に応える大活躍を見せます。
初出場試合でいきなり27得点を記録する華々しいデビューを飾り 、以降もシーズンを通じて全34試合に先発出場しました。
平均13.1得点・6.6リバウンド・2.6アシストという優れた成績を残し 、オールスターにも新人ながら選出されています(負傷選手の代替指名) 。
シーズン終了後、コリアーは文句なしで2019年のWNBA新人王(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)に輝きました 。
さらに新人として史上初めて400得点・200リバウンド・75アシスト・50スティール・25ブロック・3ポイント25本以上を1シーズンで同時達成し、同様の記録を持つのは伝説的選手のマヤ・ムーア、タミカ・キャッチングス、シェリル・スウープスのみという快挙でした 。
2年目の2020年、WNBAは新型コロナウイルスの影響でフロリダ州の「バブル」で短縮シーズンが行われました(22試合制)。
コリアーはこのシーズンもリンクスの主力として全試合に先発し、平均16.1得点・9.0リバウンドと成績を伸ばします 。
リーグ全体でもリバウンドで3位、得点で12位に入るなど攻守にわたって存在感を発揮し、シーズン終了後には自身初のオールWNBAセカンドチームおよびオールディフェンシブセカンドチームに選出されました 。
また、このバブル期間中には同僚スター選手のエイジャ・ウィルソンとともにポッドキャスト「Tea with A & Phee(ティー・ウィズ・A&Phee)」を開設し、バスケットボールや社会問題について発信を始めたことも話題となりました 。
エースへの成長と産休からの復帰 (2021–2023年)
2021年シーズン、コリアーはチームの中心選手としてプレーを続け、2度目のオールスター選出を果たします。
同年のリンクスはプレーオフに進出し、コリアー自身も平均16得点台と安定した成績を残しました。オフシーズンには東京オリンピックに初めてアメリカ代表として参加して金メダルを獲得するなど、充実したキャリアを積み重ねます。
しかしその翌年の2022年、コリアーは第一子となる女児を妊娠・出産し、シーズン開幕前から産休に入りました。
5月に出産した後、同年シーズンの大半を欠場しましたが、驚くべきことに出産からわずか約3か月後の8月にコートへ復帰します 。
これは長年チームメイトであり偉大な先輩でもあるシルビア・ファウルズの現役最後の試合に間に合うよう、コリアー自身が強く望んだ復帰でした 。
出産後わずかな試合数ながら復帰を果たした姿は、母となったトップアスリートの挑戦として大きく報じられました。
その後、オフシーズンを経てコンディションを万全に整え、コリアーは翌2023年シーズンに本格的なカムバックを遂げます。
2023年、チームから退いたファウルズに代わりコリアーはリンクスの主将に就任し、文字通りチームの大黒柱となりました。
産休明けとは思えない圧巻のパフォーマンスでシーズンを牽引し、この年自己最高の平均24.7得点・8.5リバウンドというハイアベレージを記録します 。
6月には1試合で31得点・8リバウンド・5アシスト・6ブロックという珍しいスタッツを残し、WNBA史上2人目となる「30+得点・5+リバウンド・5+アシスト・5+ブロック」を達成する離れ業も見せました 。
コリアーはこの活躍により自身3度目のオールスターに選出されるとともに、念願のオールWNBAファーストチームにも初めて名を連ねました 。
リンクスは2022年に逃したプレーオフにも復帰(カンファレンス準決勝に進出)し、チーム成績の面でもコリアーはリーグ屈指のリーダーとして評価されます
MVP級の活躍とリーグを代表する選手へ (2024年)
2024年シーズン、コリアーはさらなる飛躍を遂げ、リーグトップクラスの「MVP級」と称される活躍を見せました。
開幕直後から攻防両面で支配的なプレーを見せ、5月には5試合のスパンで115得点・50リバウンド・20アシスト・25スティール・25ブロック以上を記録するWNBA史上初の離れ業を達成しています 。
また8月には1試合で27得点・18リバウンド・5アシスト(FG成功率73.3%)を記録し、相手チーム全体のリバウンド数(17本)を一人で上回るなどの歴史的偉業も成し遂げました 。
シーズン中、月間MVP(ウェスタン・カンファレンス)や週間MVPにも複数回選出され 、その勢いのままリンクスをリーグ有数の強豪チームへと押し上げました。
レギュラーシーズン終盤、コリアーはWNBA最優秀守備選手賞(DPOY)を受賞し、WNBAオールディフェンシブ1stチームにも選出されます 。
さらにシーズン平均では自己最高の得点とリバウンドを残し、リーグMVP投票では優勝チームのエイジャ・ウィルソンに次ぐ2位につけました 。
リンクスはレギュラーシーズンでフランチャイズ新記録となる30勝をマークし、プレーオフでも勝ち上がってWNBAファイナルに進出します 。
ファイナルでは惜しくもニューヨーク・リバティに敗れタイトル獲得はなりませんでしたが、コリアー自身はプレーオフ史に残る活躍を見せました。
初戦から連続して35得点以上を記録するなど得点を量産し、最終的に1つのポストシーズンにおける総得点(285点)およびスティール+ブロックの合計数(48)でリーグ歴代最多記録を更新しています 。
こうした活躍ぶりから、かつてのエースであるマヤ・ムーアが引退セレモニーのため来訪した際には
「今まさに彼女(コリアー)は全盛期に差し掛かっていて、将来は青天井だ」
と称賛の言葉を贈りました 。コリアーは文字通りリンクスの新たなフランチャイズプレーヤーとして、リーグを代表するスターの地位を確立したのです。
米国代表での成績(オリンピック・W杯)
コリアーはアメリカ合衆国代表(Team USA)のメンバーとしても活躍しています。初選出は2021年、東京オリンピックの女子バスケットボール米国代表12名の一人に抜擢されました 。
東京大会では主にリザーブとして出場し、チームUSAの金メダル獲得に貢献しました(決勝では日本代表を90-75で下し優勝) 。
その後、産休から復帰した翌年には代表合宿への参加は見送られましたが、2024年パリ・オリンピックでは再び代表に選出されています 。
パリ大会の決勝ではフランスを67-66で辛くも破り、大会8連覇となる金メダルを獲得しました 。
コリアー自身にとってはオリンピック2大会連続の金メダルとなり、世界最高峰の舞台で勝利を経験した選手となりました。
一方で、FIBA女子ワールドカップ(W杯)にはまだコリアーの出場経験はありません。
直近の2022年大会では産休の影響もありロスター入りしませんでしたが、この大会でもアメリカ代表は優勝しており、引き続き世界最強の座を守り続けています。
コリアーも将来的にワールドカップへ参加し、米国代表としてさらなる実績を積むことが期待されています。
オフコートでの活動と最新ニュース
コリアーはコート外での活動や社会的な取り組みにおいても注目される存在です。
前述したように、2020年にはエイジャ・ウィルソンと共同でポッドキャスト「Tea with A & Phee」を開始し、バスケットボールの話題から社会問題まで幅広いテーマで発信を行ってきました。
この番組は翌年にスポーツメディアの「Just Women’s Sports」によって配信が拾われ、WNBAファンを中心に人気を博しています 。
また、WNBAオフシーズンの選手の活躍の場を広げるため、自ら新たなリーグ設立にも乗り出しました。
2023年7月、コリアーは同じくWNBAを代表する選手であるブリーナ・スチュワートと共同で女子プロバスケットボールの新リーグ「Unrivaled(アンライバルド)」を立ち上げる計画を発表しました 。
海外リーグに頼らずオフシーズンも国内で競技と収入の機会を得られる場を作ることが目的で、2025年シーズンに米国マイアミで初開催されたこのリーグにはWNBAのトップ選手36名が参加し、3対3形式と1対1トーナメント形式の独自ルールで競い合いました 。
コリアー自身、「Lunar Owls(ルーナー・オウルズ)」というチームの一員として inauguralシーズンに出場し、2025年2月には1対1トーナメントの優勝と賞金20万ドルを獲得しています 。
さらにリーグ全体でも安定した活躍を見せ、記念すべきアンライバルド初年度のMVPおよびベストチーム(1stチーム)に選出されました 。
選手が主体となって創設したこの新リーグで自らトッププレーヤーとなったことで、コリアーは競技面だけでなく運営者・発信者としても大きな成功を収めたと言えるでしょう。
プライベートでは、出産・育児を経ても競技を続けるワーキングマザーとして注目されています。
産後の早期復帰については賛否もありましたが、コリアーは家族やチームの支えのもとで競技者としてのキャリアを諦めることなく両立への道を切り開きました。
その姿はWNBAにおける「ママさん選手」のロールモデルの一人として評価され、リーグ全体でも選手の出産・育児支援に関する議論を促す契機にもなりました。
最後に、2025年シーズン開幕時点までの最新ニュースにも触れておきます。
コリアーは前述のアンライバルドでの成功を経て、2025年のWNBAレギュラーシーズン開幕直前に大手スポーツブランドのジョーダン・ブランド(Nike傘下)とシューズ契約を結びました 。
ジョーダン・ブランドにとってもWNBAを代表する若きスターとの契約となり、「未来の殿堂入り選手になりうる存在」としてコリアーに大きな期待を寄せています 。
また、2025年のWNBA開幕戦ではリンクスのエースとして34得点を叩き出しチームを白星で導くなど、シーズン序盤から絶好調のスタートを切りました 。
開幕後数試合を終えた時点で平均得点はリーグトップの約28点に達しており 、各球団ゼネラルマネージャーによる投票でも2025年シーズンのMVP最有力候補に推されています 。
コリアーは今やリンクスのみならずWNBA全体の顔の一人となっており、そのオンコート・オフコート双方での活躍は女子バスケットボール界に大きな影響を与え続けています。
情報源
•   Napheesa Collier – College career summary (Wikipedia)
•  WNBA.com – Collier named Minnesota Sports Awards Professional Athlete of the Year (2019 rookie season recap)
•  Wikipedia – 2020 WNBA bubble, podcast, All-WNBA/Defensive Second Team
•  WNBA.com – Collier named to All-WNBA Second Team (2020 season stats)
•  Wikipedia – 2022 maternity leave and brief return
•  Wikipedia – 2023 season All-WNBA First Team and stats
•  Lynx Official Release – All-WNBA First Team 2023 (season averages)
•  Wikipedia – 2024 DPOY award and MVP voting result
•  Wikipedia – 2024 WNBA Finals and playoff records
•  Reuters – WNBA GM Survey 2025 (Collier’s 2024 accolades, MVP favorite)
•  Wikipedia – Collier & Stewart announce new league Unrivaled (2023)
•  Wikipedia – Collier wins Unrivaled 1-on-1 tournament (Feb 2025)
•  Swish Appeal – Collier co-founds Unrivaled, named inaugural MVP (2025)
•   Sports Illustrated – Collier signs with Jordan Brand (2025)
•  Swish Appeal – 2025 season opener performance (34 points)
•  Wikipedia – Olympic gold medals (Tokyo 2020, Paris 2024)