ラスベガス・エーシズとワシントン・ミスティックスの一戦は、終盤に劇的な展開が待っていました。
ホーム開幕戦となったエーシズは立ち上がりからやや硬さが見られ、序盤はミスティックスが主導権を握ります。第1クォーターはミスティックスが18-16とリードし、第2クォーターには新人のソニア・シトロンが連続3ポイントを決めるなどして一時10点差をつけました。
エーシズも13-5のランで追い上げる場面がありましたが、前半終了時点では42-33とミスティックスが9点のリードを保ちました。
後半に入ってもミスティックスの堅実な攻守は続き、第3クォーター終盤にはシトロンとジェイド・メルボルンの得点で再び二桁点差を確保します。
59-50で最終クォーターを迎えると、第4クォーター序盤は互いに守備が光り、残り6分で63-55とロースコアの展開が続きました。
その中でミスティックスはルーキーのキキ・イリアフェンがオフェンスリバウンドから押し込む得点を挙げ、さらにシトロンが巧みなドライブからバスケット・カウントのレイアップを成功させます。残り3分49秒、ミスティックスは68-59と再びリードを9点に広げ、敵地で勝利に大きく前進しました。
しかし、WNBA連覇中のエーシズは最後まで諦めませんでした。
ジャッキー・ヤングがフリースロー2本を沈めた後、自らスティールを奪って速攻からレイアップを決め、残り2分には68-66と一気に2点差まで詰め寄ります。
会場のミケロブ・ウルトラ・アリーナが沸き立つ中、シトロンが再び期待に応えました。
残り約1分40秒、シトロンが左ウィングからこの日4本目の3ポイントを沈め、71-66とミスティックスが突き放します。
さらにジェイド・メルボルンが残り1分15秒でフリースローを1本決め、72-66とリードは6点差。その後、ヤングが再び躍動します。
残り1分を切ったところでヤングがドライブからファウルを誘いフリースローを2本決めて72-68。さらに直後の守備でもヤングは相手ボールを奪い取り、そのままレイアップへ持ち込み残り約30秒で72-70と遂に2点差に迫りました。
逆転を狙うエーシズに対し、ミスティックスは残り時間を使いながら最後の攻撃を試みましたが、堅いラスベガス守備の前にシュートまで持ち込めず、残り15秒で24秒バイオレーションとなってしまいます。
ボールを手にしたエーシズはタイムアウト後のプレーで、エースのエイジャ・ウィルソンが果敢にゴール下へ切れ込みながらも冷静に味方を探し、フリーになっていたヤングへパス。
ヤングが楽々とレイアップを沈め、残り11秒で72-72の同点に追いつきました。土壇場で試合を振り出しに戻されたミスティックスは、最後の攻撃でシュートに持ち込む際にファウルを獲得したかに見えましたが、これはビデオ判定の末に取り消され、代わりにエーシズボールとなります。
そして残り時間わずか7.2秒、エーシズはウィルソンからコーナーのジュエル・ロイドにボールを託しました。ロイドは迷わず放った3ポイントを見事に沈め、75-72とついに逆転に成功します。
残り約2秒、最後のワシントンのハーフコートからの同点シュートはリングに嫌われ試合終了。エーシズが試合終了間際の9連続得点で劇的な逆転勝利を収めました。
注目選手とスタッツ
勝利したラスベガス・エーシズでは、ガードのジャッキー・ヤングがゲームハイとなる25得点と勝負強さを発揮しました。
ヤングは第4クォーター終盤の追い上げで立て続けに6得点を挙げてチームを牽引し、守備面でもスティールから速攻を決めるなど要所で存在感を示しました。
エースのエイジャ・ウィルソンはこの日シュート精度が伸び悩み比較的静かな活躍に留まりましたが、それでも15得点12リバウンド5アシスト3ブロックとオールラウンドな数字を記録しています。
特に終盤にはウィルソンがアシスト役に回り、決勝点となるロイドへのパスを含め的確な判断でチャンスを演出しました。
また、ウィルソンはこの試合で通算447ブロックに達し、WNBA歴代10位に浮上する節目も迎えています。
ベテランガードのチェルシー・グレイも17得点を挙げ、要所でミドルシュートやドライブを決めてチームを支えました。ジュエル・ロイドはフィールドゴール2/9とシュートに苦しみ9得点に留まりましたが、残り約2秒で値千金の3ポイントを沈めています。
新加入のロイドにとってはエーシズ移籍後初の大舞台での活躍となり、今後に弾みをつける一投となりました。
ベンチメンバーではダナ・エバンスが終盤に重要な3ポイントを決めるなど3得点を記録しています。
一方、惜しくも敗れたワシントン・ミスティックスでは新人のソニア・シトロンがチーム最多の19得点と奮闘しました。
シトロンは3ポイントを4本沈め、第4クォーターにも勝負どころでレイアップからバスケットカウントを獲得し、さらに貴重な3ポイントを決めるなど終始堂々としたプレーぶりでした。
同じくルーキーのキキ・イリアフェンも17得点13リバウンドを挙げて存在感を示しています。イリアフェンは開幕から3試合連続でダブルダブルを記録しており、これはミスティックスの新人選手として史上初の快挙となりました。
加えてイリアフェンは攻守にわたりエナジーを発揮し、第4クォーターにはオフェンスリバウンドから粘り強く得点するプレーでチームを勢いづけました。
先発ポイントガードを務めたサグ・サットンは要所で3ポイントを沈めて10得点。ジェイド・メルボルンは14得点をマークし、第3クォーターには連続得点でリード拡大に貢献、終盤にもフリースローを獲得するなど積極性を見せました。
ベテランのステファニー・ドルソンは得点こそ8点でしたが、6リバウンドに加えてゲームハイの8アシストを記録し、巧みなハイポストからのパスワークで若いチームを支えています。
試合後のコメント
劇的な勝利を収めたエーシズのベッキー・ハモン・ヘッドコーチは、試合後にチームの粘りを称賛しました。
「簡単な試合ではありませんでしたが、最後まで集中を切らさずによく戦いました。劣勢でも諦めなかった選手たちを誇りに思います」
とハモンHCは語り、土壇場での逆転劇に胸を張りました。
特に決勝シュートを沈めたジュエル・ロイドについて問われると、「彼女はシュートが入らない時間帯が続いても自信を失わずにいてくれました。
あの場面では迷わず放ってくれて、本当に大きな一本でした」とロイドの勝負強さを高く評価しました。
ロイド自身もチームメートとファンに感謝の思いを述べています。
「仲間が信じてボールを託してくれたおかげで、思い切って打つことができました。あのシュートを決められて最高の気分です」
とロイドは笑顔で振り返りました。移籍後まだ日が浅いロイドにとって、この劇的な3ポイントはエーシズの一員として大きな自信になった様子です。
一方、僅差で勝利を逃したミスティックスのエリック・ティボー・ヘッドコーチは悔しさを滲ませました。
「勝利まであと一歩でした。選手たちはよく戦いましたが、最後に細かなミスが重なってしまった」
とティボーHCは振り返り、終盤のゲーム運びに課題を残したことを認めました。
それでも若手選手の活躍には前向きな評価を与えており、
「ルーキーたちが大舞台で物怖じせず力を発揮してくれたのは大きな収穫です。この悔しい経験を次に生かしたいですね」
と語っています。
開幕から奮闘する新人たちの台頭は、主力不在の中で戦うミスティックスにとって明るい材料です。アリエル・アトキンスは、
「最後に詰めが甘くなってしまった。非常に悔しい敗戦です」
としながらも、「チーム全員で成長していくしかありません。今日のような試合から多くを学びたい」と前を向きました。
ミスティックスは2連敗となりましたが、チームは課題と収穫を胸に次戦へと臨みます。