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バハマからWNBAへ、世界を翔けるスター:ジョンケル・ジョーンズの現在地

2025年WNBAシーズン開幕にあたり、ジョンケル・ジョーンズ選手が所属するニューヨーク・リバティは前年のリーグ優勝チームとして新シーズンを迎えました。

ジョーンズ選手自身は昨季のファイナルMVPに輝いた勢いそのままに、開幕直後からチームの中心として活躍しています。

5月下旬のインディアナ・フィーバー戦では26得点・12リバウンドのダブルダブルを記録し、90-88の僅差の勝利に大きく貢献しました。

リバウンドやブロックでも存在感を示したジョーンズ選手の活躍により、リバティは開幕から3戦全勝と好スタートを切っています。

連覇を目指す今シーズン、ジョーンズ選手は引き続きチームの柱として期待されており、その安定したパフォーマンスでチームを牽引しています。

WNBAでのキャリア

ジョーンズ選手は2016年のWNBAドラフト1巡目全体6位でロサンゼルス・スパークスから指名されましたが、ドラフト当日にトレードでコネティカット・サンに移籍し、同年にWNBAデビューを果たしました。

ルーキーイヤーから長身(198cm)と高い身体能力を活かしインサイドで頭角を現すと、2年目の2017年シーズンには平均ダブルダブルの成績を収めてリーグの最優秀進歩選手賞(MIP)を受賞し、初のWNBAオールスター選出も果たします。

この年にはシーズンリバウンド記録を更新し、一躍リーグ屈指の万能フォワードとして注目を集めました。

またその卓越したスコアリング能力から、メディアやファンから”女性版ケビン・デュラント”と称されることもありました。

2018年シーズン、ジョーンズ選手はチーム事情に合わせてシックスマン(ベンチスタートの第6の選手)役を務め、自身は先発出場が減ったにもかかわらず安定した活躍でWNBAシックスマン賞を受賞しました。

翌2019年には再び主力としてリーグトップのリバウンド数を記録し、この年2度目のオールスターに選出されます。

ジョーンズ選手の活躍もあり、サンは2019年シーズンに14年ぶりとなるWNBAファイナル進出を果たしました。

惜しくも優勝は逃したものの、大舞台での経験を積んだことで彼女はさらに成長していきます。

その後もジョーンズ選手は着実に実績を重ね、2021年シーズンには自己最高の成績を挙げてリーグMVP(最優秀選手)に輝きました。

同年にはオールディフェンシブ・ファーストチームにも選出され、攻守両面でリーグを代表する存在となりました。

これまでにMIP、シックスマン賞、そしてMVPをすべて受賞した選手はWNBA史上初であり、ジョーンズ選手の多才さとチームへの貢献度の高さが窺えます。

翌2022年シーズンもサンの主力としてWNBAファイナルに進出(この年は準優勝)し、幾度もあと一歩でタイトルに手が届かない悔しさを味わいました。

そしてさらなる飛躍を求めて、ジョーンズ選手は2023年シーズン開幕前にニューヨーク・リバティへの移籍を決断します。

ブリアナ・スチュワートやサブリナ・イオネスクらスターが集う新天地では、それまで以上に自らの役割を調整し、個人の栄光よりチームの勝利を優先する道を選びました。

移籍初年度の2023年、リバティでジョーンズ選手は持ち前の得点力と守備力を発揮し、シーズン途中のコミッショナー杯でチームを優勝に導いて大会MVPを受賞しています。

同年のリーグ戦でもリバティはWNBAファイナルまで勝ち進みましたが、惜しくも優勝はなりませんでした。

雪辱を期した2024年シーズン、ジョーンズ選手とリバティは見事に快進撃を遂げます。チームはレギュラーシーズンを勝ち抜き、ジョーンズ選手自身も安定した活躍で5度目のオールスター選出を受けました。

そして迎えたWNBAファイナルでは、リバティが接戦の末に優勝を果たし、ジョーンズ選手は悲願の初タイトルを手にするとともにファイナルMVPに選出されます。

最終第5戦でチームトップの得点を挙げるなど決定的な働きを見せ、大舞台で堂々たる存在感を示しました。

この優勝によってジョーンズ選手は長年の努力が実を結び、WNBAを代表するスター選手として揺るぎない地位を築いたのです。

大学時代の実績

ジョーンズ選手は米国メリーランド州の高校を経て、大学はジョージワシントン大学(GW)に進学しました。

バハマ出身の彼女は14歳で渡米し、高校から頭角を現した後、当初はクレムソン大学に入学しましたが、その後GWへ転校して才能を開花させます。

GWでは身長とウイングスパンを活かしたリバウンドとブロックで圧倒的な存在感を示し、チームの中心選手として活躍しました。

2014-15シーズン(ジュニア〈3年次〉)には平均15.3得点・12.5リバウンドの成績を収めてリーグトップのリバウンド数を記録し、カンファレンス年間最優秀選手と最優秀守備選手の双方を受賞しています。

同一年に両賞を受賞するのはカンファレンス史上4人目という歴史的快挙でした。

加えて、この年はチームを12年ぶりのカンファレンストーナメント優勝とNCAA全国大会出場に導き、自身も大会最優秀選手に選ばれています。

最終学年となった2015-16シーズンも平均14.6得点・14.7リバウンドという驚異的なダブルダブル平均を維持し、NCAA全体でもリバウンド部門1位に輝きました。

シーズン途中の怪我で一時離脱を強いられながらも復帰後は存在感を発揮し、カンファレンスのオールディフェンシブチームに選出。

さらに2年連続でAP通信およびWBCAからオールアメリカン(全米トップクラスの選手)に選出されるなど、大学バスケットボール界でも屈指のフォワードとして名を馳せました。

在学中に積み重ねた通算1,000得点・1,000リバウンド以上・100ブロック以上の記録は、GWの女子バスケットボール史でもわずか3人目の快挙でした。

これら大学時代の功績が評価され、後年ジョーンズ選手はGW体育会の殿堂入りも果たしています。

海外リーグでの活動 WNBAのオフシーズン期間、ジョーンズ選手は積極的に海外リーグでもプレーしてきました。

その目的は競技力向上はもちろん、収入面でもより高い報酬を得るためで、彼女自身「WNBAの待遇改善は進んでいるが、現状では海外との収入差は大きい」と語りオフには毎年海外でプレーする道を選んでいます。

2016-17年シーズンには初の海外挑戦として韓国WKBLのアサン・ウリ銀行に所属し、シーズン優勝とともにリーグの最優秀外国人選手賞および最優秀守備選手賞を受賞しました。

翌2017-18年シーズンは中国WCBAの山西フレーム(山西炎霊)に活躍の場を移し、高い得点力でチームを牽引します。

2018年からはヨーロッパ最高峰のロシア・リーグ、UMMCエカテリンブルクに加入しました。同チームは世界各国のスター選手が集まる名門で、ジョーンズ選手はWNBAのオフに毎年参加してロシアリーグやユーロリーグでのタイトル獲得に貢献しました。

エカテリンブルクではブリアナ・スチュワートやブリトニー・グライナーといったトップ選手たちとチームメイトとなり、その中でも引けを取らない活躍で存在感を示しました。

しかしロシアでのプレーは2022年2月のウクライナ情勢の悪化に伴い中断を余儀なくされます。

ジョーンズ選手も他のWNBA選手たちと同様にロシアを離れ、安全を考慮して契約先を変更しました。その後2022年には活動の場をトルコに移し、強豪チームのチュクロヴァ・バスケットボール(メルシン)と契約します。

トルコリーグでも持ち前の万能ぶりでチームを支え、厳しい欧州リーグでの経験を積み重ねました。

さらに近年では再び中国に渡り、2022-23年シーズンにはWCBAの内モンゴルチームに加わりリーグ準優勝に導く活躍を見せています。

2024-25年シーズンも引き続き中国リーグ(四川ユエンダ美莱)でプレーすることが報じられており、年間を通じて世界各国で競技を続けています。こうした各国リーグでの経験によって、ジョーンズ選手は国際舞台でも屈指の実力者としての地位を確立しました。

国際大会・代表歴 ジョンケル・ジョーンズ選手はバハマ出身ですが、2018年にボスニア・ヘルツェゴビナ国籍を取得し、同国代表のエースとして国際大会に出場しています。

元々U16世代ではバハマ代表としてプレーした経験もありましたが、シニアレベルでは自身の競技機会を広げるため欧州のボスニア代表に加わる道を選びました。

その選択は両国のバスケットボール界にとっても大きな意味を持ち、ボスニア・ヘルツェゴビナは彼女という強力な帰化選手を得て躍進を遂げます。

ジョーンズ選手が代表合流後、ボスニア・ヘルツェゴビナ女子代表は史上初めてFIBA女子ヨーロッパ選手権(ユーロバスケット)で上位進出を果たしました。

特に2021年のユーロバスケットでは、ジョーンズ選手が大会平均24.3得点・16.8リバウンドという圧倒的な成績で得点王・リバウンド王の二冠に輝き、同大会のベスト5(オールスターファイブ)にも選出されています。

ボスニア代表は大会5位入賞という健闘を見せ、これは同国史上最高成績となりました。

その活躍によりボスニア・ヘルツェゴビナは女子ワールドカップ2022への出場権も獲得し、世界の舞台に初めて名乗りを上げます。

ワールドカップ本大会でもジョーンズ選手は平均ダブルダブル級の活躍でチームを支え、強豪国相手に善戦しました(結果はグループリーグ敗退となりましたが、存在感は十分示しました)。

一方、故郷バハマへの愛着も強く、若い頃からバハマ代表や地元のバスケットボールイベントにも関わってきました。

大学在学中の2015年には感謝祭休暇を利用して母校GWのチームメイトと共にバハマの子供たち向けのバスケットボールクリニックを開催したこともあります。

国籍は異なれど、バハマ出身のスター選手として故国のバスケットボール界からも尊敬を集めており、将来的にはバハマのバスケットボール発展にも貢献したいと語っています。国際舞台で培った経験を活かし、今後もそれぞれのルーツを持つ国々でバスケットボールを通じた架け橋となる存在として期待されています。

コート外での活動・話題 コート上で偉大な実績を残すジョーンズ選手は、コート外でも多方面で注目されています。

彼女は自らがLGBTQ+コミュニティの一員であることを公言しており、その経験を活かして多様性と包摂性(インクルージョン)の推進に取り組んでいます。

女子スポーツにおける平等と女性のエンpowerメント(地位向上)を訴える活動にも熱心で、若い世代のアスリートのロールモデルとしても知られています。

こうした姿勢が評価され、ジョーンズ選手はUSAトゥデイ紙の「今年の女性(Women of the Year)」の一人に選出されるなど、社会的なインパクトを与える人物としても表彰されています。

また、2025年5月には母校ジョージワシントン大学の卒業式に招かれ、学生たちに向けてコミencement スピーチを行いました。

WNBA現役スター選手が大学の卒業式講演者を務めるのは異例であり、この場でジョーンズ選手は名誉文学博士号も授与されています。

自身の歩んできた挑戦と成功のストーリーを後輩たちに語りかけ、その謙虚で力強いメッセージは多くの卒業生の心を打ちました。

ジョーンズ選手の勇気ある人生と情熱は母校の精神を体現するものと評価されており、スポーツを超えて社会に希望と刺激を与える存在となっています。

さらに、ジョーンズ選手はオフシーズンに入ると故郷バハマに戻り、地元の子どもたちにバスケットボールを教えたり、地域の支援活動を行ったりすることでも知られています。

幼少期から支えてくれた家族やコミュニティへの恩返しとして、バハマでユース向けのバスケットボールキャンプを開催したり、必要な物資を寄付するといった慈善活動にも参加しています。自身が歩んだ道のりが少しでも次世代の助けになるようにと、精力的に社会貢献を続けているのです。

コート内外でのこうした取り組みにより、ジョンケル・ジョーンズ選手は単なるトップアスリートに留まらず、人々にインスピレーションを与える存在として広く敬愛されています。

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