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スカイラー・ディギンズ=スミス:度重なる困難を乗り越え輝き続けるWNBAトップガード

スカイラー・ディギンズ=スミス選手は、アメリカ女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)を代表するトップガードの一人です。

通算6度のWNBAオールスターゲーム選出やオールWNBAチーム選出を誇り、東京オリンピックの金メダリストでもあります。

大学からプロにかけて輝かしい実績を残す一方、膝の大怪我や二度の出産による離脱と復帰も経験しました。

本記事では、2025年シーズン開幕時点までの最新情報を踏まえ、ディギンズ=スミス選手のキャリアと功績を総合的にまとめます。

ノートルダム大学での活躍

ディギンズ=スミス選手は2009年から2013年までノートルダム大学でプレーし、チームの主力ポイントガードとして活躍しました。

大学在学中、ノートルダム大を3年連続でNCAA女子トーナメントのファイナルフォー(ベスト4)に導き、そのうち2011年と2012年には全国準優勝を果たしています。

個人としても数々の栄誉に輝き、2年連続でカンファレンス(ビッグ・イースト)の年間最優秀選手に選出され、全米トップのポイントガードに贈られるナンシー・リーバーマン賞を2度受賞しました。

大学通算で2,000得点・500リバウンド・500アシスト・300スティール以上を記録し、同校の歴代最多得点およびスティール記録を更新するなど、ノートルダム史上屈指の選手として名を残しています。

WNBAでのキャリアと実績

タルサ・ショック/ダラス・ウィングス時代(2013–2019)

ディギンズ=スミス選手は2013年のWNBAドラフトで全体3位指名を受け、タルサ・ショックに入団しました。

ルーキーイヤーの平均得点は8.5点でしたが、2年目の2014年シーズンに飛躍を遂げ、平均20.1得点・5.0アシストを記録してリーグ屈指のスコアラーとなります。

この年、初めてWNBAオールスターゲームに選出(ファン投票で先発)され、WNBAの「最も成長した選手賞(MIP)」も受賞しました。2015年シーズンは好調を維持していましたが、6月に前十字靭帯断裂の大怪我を負い、残りシーズンを全休します。

それでもファン投票で2年連続オールスター先発に選出されるなど、存在感の大きさを示しました。

怪我から復帰した2016年、チームは本拠地をテキサス州に移し「ダラス・ウィングス」と改称されます。

2017年には全試合に先発出場して平均18.5得点・5.8アシストの好成績を残し、チームをプレーオフに導きました。

2018年シーズンもエースとして牽引し、自己最多の1試合35得点を記録するなど活躍して再びオールスターに選出されます。

その一方で、2018年シーズン終了後に第一子の妊娠が判明し、2019年シーズンは出産・育児のため全休しました。

ディギンズ=スミス選手は後に、2018年シーズン中は妊娠を公表せずにプレーしていたことや、産後うつに苦しんだこと、チームから十分なサポートを得られなかった不満をSNS上で明かしています。2019年シーズン終了後、長年在籍したウィングスからの退団を決意しました。

フェニックス・マーキュリー時代(2020–2023)

2019年オフ、ディギンズ=スミス選手は移籍を志願し、2020年2月にフェニックス・マーキュリーへサイン&トレードで加入しました。

マーキュリーでは伝説的ガードのダイアナ・タウラシ選手やセンターのブリトニー・グライナー選手らと強力なトリオを形成し、2020年の短縮シーズンから主力として活躍します。

2021年シーズンには平均17.7得点・5.3アシストを挙げ、自身初のオールWNBAファーストチームに選出されました。

マーキュリーはその年、WNBAファイナルまで勝ち進んで準優勝を果たしています。2022年もオールスターおよびオールWNBAファーストチームに名を連ね、エースとして存在感を示しました。

しかし同年8月、シーズン終盤に「個人的な理由」でチームを離脱し、残り試合を欠場します。その直後に第二子の妊娠を公表し、2023年シーズンは全休となりました。

休養中には、球団が産休中の彼女に練習施設の使用を認めなかった対応に対して不満を示し、チームとの間に軋轢も生じます。

最終的にディギンズ=スミス選手はシーズン終了後にマーキュリーを離れる道を選びました。

シアトル・ストーム移籍後(2024–)

第二子の出産を経て、ディギンズ=スミス選手は2024年2月にフリーエージェントでシアトル・ストームに加入し、新天地で再起を図りました。

2024年シーズンは約2年ぶりのコート復帰ながら開幕から先発に定着し、全40試合に出場しました。

平均15.1得点・6.4アシスト・1.7スティールを記録し、アシストはリーグ4位の好成績でした。同年にはAP通信選定の「カムバック・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー(年間カムバック選手賞)」にも輝き、困難からの見事な復活を印象づけました。

さらに2024-25年オフシーズンには、新設された女子3人制リーグ「アンライバルド(Unrivaled)」にも参加し、開幕戦で決勝の3ポイントシュートを沈める活躍も見せています。

2025年シーズン開幕時点でもストームの主力ポイントガードとしてチームを牽引しており、キャリア11年目を迎えた現在もその輝きは健在です。

アメリカ代表としての実績

ディギンズ=スミス選手はアメリカ代表としても活動しており、ジュニア年代から国際大会で数多くのタイトルを経験しました。

高校卒業直後、U18アメリカ代表の一員として2008年のFIBAアメリカ選手権と2009年のFIBA U19世界選手権で金メダルを獲得し、2011年のユニバーシアードでも優勝を飾っています。

シニア代表では2014年の女子ワールドカップ(世界選手権)候補メンバーに選ばれたものの最終選考で落選する悔しさも味わいましたが、その後、2021年開催の東京オリンピックで念願の米国代表入りを果たしました。

東京大会ではバックアップガードながら決勝戦の終盤にコートに立ち、チームの金メダル獲得に貢献しています。

オリンピック金メダリストとなったことで、ディギンズ=スミス選手は大学の先輩でもある名ガード、ドーン・ステーリー氏に続き、偉大なキャリアの一里塚を刻みました。

怪我・出産による離脱と復帰

プロキャリアの中で、ディギンズ=スミス選手は度重なる離脱と復帰を経験してきました。

2015年には前述のとおり前十字靭帯断裂によりシーズン途中で戦線を離脱しましたが、翌2016年に復帰し、再びチームの司令塔として活躍します。

2019年には第一子出産のためシーズンを全休しましたが、翌2020年にフェニックスで復帰して早速オールWNBAセカンドチーム(2020年)に選出される活躍を見せました。

さらに2023年は第二子の出産・育児のため1年間のブランクが生じましたが、この間に産後うつを経験し、一時は引退も考えたと本人が明かしています。

それでも家族やトレーナーの支えを受けて心身を立て直し、2024年シーズンに見事な復活を遂げました。

このように、大きな試練を乗り越える度に確かな復調を遂げている点もディギンズ=スミス選手のキャリアの顕著な特徴と言えるでしょう。

コート外での社会・ビジネス活動

ディギンズ=スミス選手はコート外での活動にも積極的です。

2018年にはWNBAの「ドーン・ステーリー・コミュニティ・リーダーシップ賞」を受賞し、青少年支援など地域社会への貢献が評価されました。

また、現役選手としてのプレーと並行してメディアやビジネス面でも存在感を示しています。

2020-21年シーズンにはNBAのフェニックス・サンズ戦中継でゲスト解説者を務め、その放送チームの一員として地域エミー賞を受賞するなど新たな分野で才能を発揮しました。

さらに、大学卒業後にはラッパーのジェイ・Z氏が設立したロック・ネイション(Roc Nation)と契約した初の女子バスケットボール選手となり、自身のブランド価値向上にも努めています。

SNS上でも100万以上のフォロワーを抱える発信力を生かし、女性アスリートの地位向上や母親となった選手への支援策の充実について積極的に発言するなど、様々な形でスポーツ界に貢献しています。

参考文献

  1. Percy Allen, “Skylar Diggins-Smith reflects on journey to Storm after Mercury exit”, The Seattle Times, June 15, 2024
  2. Michaela Scheinin, “Storm off the Court: Skylar Diggins-Smith is continuing to develop her game and personal brand”, Seattle Storm (WNBA.com), Jan. 6, 2025
  3. 「Skylar Diggins」, Wikipedia(英語)
  4. “Skylar Diggins Stats, Height, Weight, Position, Draft Status and More”, WNBA.com
  5. Associated Press, “Notre Dame Women’s Basketball alums Skylar Diggins-Smith, Jewell Loyd win gold with Team USA”, WNDU News, Aug. 8, 2021wndu.com
  6. 「Skylar Diggins-Smith」, Wikipedia(英語)

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