ブリトニー・サイクスはアメリカ合衆国出身の女子プロバスケットボール選手で、WNBA(米国女子プロバスケットボールリーグ)のワシントン・ミスティクス所属のガードです。
守備能力の高さで知られ、リーグを代表するディフェンダーの一人として評価されてきましたが、近年では得点面でもチームを牽引する活躍を見せています。
現在、若いチームとなったミスティクスにおいて主力として奮闘し、そのリーダーシップと攻守両面での貢献で注目を集めています。2017年のプロデビュー以来、着実に経験を積み重ね、リーグ有数の実力者へと成長しました。
大学時代の活躍
サイクスは学生時代、シラキューズ大学でプレーしました。
在学中に2度の膝の前十字靭帯(ACL)断裂という大怪我を経験しながらも復帰し、合計138試合に出場して通算1846得点を記録しました。
大学4年間で平均13.4得点・5.9リバウンドの成績を残し、シラキューズ大学女子バスケットボール史上3番目の通算得点数を達成しています。
また、2017年には全米大学体育協会(NCAA)のオールアメリカンに選出され、チーム史上最多の通算101勝に貢献するなど、大学屈指のスター選手となりました。
WNBAデビュー(アトランタ・ドリーム)
2017年のWNBAドラフトでサイクスは全体7位指名を受け、アトランタ・ドリームに入団しました。新人シーズンでは持ち前の得点力を発揮し、1試合で最高33得点を挙げるなど平均13.9得点を記録しています。
7月と8月には月間最優秀新人(ルーキー・オブ・ザ・マンス)を受賞する目覚ましい活躍を見せ、2017年シーズンのWNBAオールルーキーチームにも選出されました。
新人王投票では10票を獲得して2位となり、またシーズン合計471得点を挙げてドリームの新人記録を打ち立てるなど、デビュー年からリーグに強い印象を残しました。
ロサンゼルス・スパークスでの成長
サイクスはドリームに3シーズン在籍した後、2020年からはロサンゼルス・スパークスに移籍し、2022年までプレーしました。
スパークス時代、サイクスは守備の名手として頭角を現し、2021年と2022年には2年連続でWNBA全体のスティール王(相手からボールを奪った数のリーグ最多)に輝きました。また2020年から2022年にかけて毎年WNBAのオールディフェンシブチーム(最優秀守備チーム)に選出され、そのうち2021年には1stチーム(守備ベスト5)にも名を連ねました。
こうした活躍により、リーグ有数のディフェンス力を持つガードとしての評価を確立しています。
ワシントン・ミスティクスへの移籍と活躍
2023年にはサイクスはワシントン・ミスティクスと3年契約を結び、新天地でさらなる飛躍を遂げました。
ミスティクス加入初年度の2023年シーズン、サイクスは攻守両面でチームを牽引し、自身初めてシーズン平均得点を15点台に乗せています。
特にオフェンス面でのブレイクが目覚ましく、シーズン合計636得点・84スティールを記録してミスティクスの球団記録をいずれも更新しました。
その活躍により、同年には自身2度目のWNBAオールディフェンシブ1stチームにも選出され、攻守にわたる貢献が高く評価されました。
2024年の試練:怪我とメンタルの挑戦
しかし、サイクスにとって2024年シーズンは度重なる負傷に苦しめられました。
開幕直後の第2戦で左足首をひどく捻挫(ハイアンクルスプリエン)し、激痛に見舞われて序盤から戦線を離脱しました。
復帰後も再び足を痛め、結局シーズンの半分以下となる18試合の出場に留まります。キャリアで最も長い離脱期間となり苦難のシーズンとなりましたが、その間にメンタルヘルスの重要性を再認識する契機にもなりました。
怪我による悔しさを乗り越えるため、サイクスはセラピストとともに心のケアに取り組みました。
リハビリ期間中には「セラピーは本当に魔法のよう。毎回の対話で良くなっている自分を感じる」とSNSに記すなど、精神面の強化にも努めています。
2025年シーズンの好調
そうした苦難を経て迎えた2025年シーズン、サイクスは心身ともに充実した状態で開幕を迎え、キャリア最高のスタートを切りました。
開幕戦では終盤に決勝シュートを沈めてチームの白星発進に貢献し、第2戦でも27得点・7アシストの大活躍を見せ、ミスティクスを開幕2連勝へ導きました。
若手主体となったチームにおいてエースとして奮闘する彼女は、序盤から平均20点超えのハイペースで得点を量産しており、シーズン開幕直後のリーグ得点ランキングで4位につけています。
平均アシスト数や出場時間も自己最高ペースで更新する勢いを見せ、攻撃面で一段と成長した姿を示しています。
守備面でも持ち前のスピードと高い状況判断力で相手のミスを誘っており、攻守両面でリーダーシップを発揮してチームを牽引しています。
海外リーグおよび国際大会での経験
サイクスはWNBAのオフシーズンを利用して海外リーグでもプレーし、多彩な経験を積んできました。
過去にはイスラエル、トルコ、スペイン、ハンガリー、ポーランドなど世界各国の強豪チームでプレーした経験があります。
2018-19年シーズンにはトルコリーグで、2021-22年シーズンにはオーストラリアのWNBL(女子ナショナルバスケットボールリーグ)のキャンベラ・キャピタルズでプレーしました。オーストラリアのリーグでは2022年に最優秀守備選手賞を受賞し、ベスト5にも名を連ねました。
また、2024年にはWNBAのスター選手たちが創設した新たな3人制リーグ「Unrivaled(アンライバルド)」に参加し、自身の所属するチーム「ローズBC」を初代優勝に導きました。
米国代表として国際大会に出場した経験も持ち、2019年にはアメリカ代表の一員としてFIBA女子アメリカカップで金メダルを獲得しました。
2024年には3×3バスケットボールの米国代表としてFIBA 3×3アメリカカップに出場し、銀メダルを手にしています。このように国際舞台でもその存在感を示しています。