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2020年NBAドラフト再評価:コロナ禍が変えた運命のドラフト、5年後の真実

1. はじめに:異例の2020年ドラフトを振り返る

2020年のNBAドラフトは、その歴史において特異な位置を占めています。世界を襲った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、NBAシーズンの中断、NCAAトーナメントの中止、スカウティングコンバインの不開催、そしてチーム施設への選手訪問制限といった、前例のない事態を引き起こしました 。

これにより、各チームのタレント評価担当者は、選手を直接スカウトする機会が大幅に失われた中で、文字通り「手探り」の状態でドラフトに臨まざるを得ませんでした 。

ボストン・セルティックスのバスケットボール運営部門社長であるダニー・エインジ氏も、過去のワークアウトや対面での接触が選手の評価においていかに重要であったかを強調し、それが一切できなかったことの難しさを語っています 。

ミネソタ・ティンバーウルブズのようなチームは、1000回以上の面談や膨大な試合映像の分析を通じて、この困難な状況に対応しようと試みました 。

こうした状況下で実施されたドラフトの結果は、当時のスカウティングの困難さを如実に示していると言えるでしょう。

HoopsHypeの記事では、このドラフトクラスは「トップ数名のスター選手と堅実なスターターレベルの選手を除けば、全体的に弱かった」と評価されており、COVID-19によるスカウティングの困難がその主な要因であると指摘されています 。

ドラフトから5年が経過した現在(記事の最終更新日が2025年6月10日であることから、2024-25シーズン終了時点での評価と推測されます )、選手たちのキャリアは具体的に形成され、初期のポテンシャル評価だけでなく、実際のNBAでのパフォーマンス、成長、怪我、チームへの適応などが明らかになってまいりました。

この時点で2020年ドラフトを再評価することは、当時のスカウティングの「盲点」を浮き彫りにし、どのチームが優れた眼力を持っていたか、あるいは運に恵まれたかを検証する貴重な機会となります。

また、コロナ禍という特殊な状況下でのドラフトが、その後の選手たちのキャリア形成にどのような影響を与えたのかを深く考察する意義もございます。このドラフトの再評価から浮かび上がるのは、コロナ禍が選手の将来的な活躍を予測するプロセスをいかに複雑にしたかという点です。

通常、NBAのドラフトでは、選手の身体能力、大学での実績に加え、ゲームIQ、適応能力、メンタル、そして怪我への耐性といった多岐にわたる要素が総合的に評価されます。しかし、パンデミックによるスカウティングの制限は、これらの「見えにくい」要素の評価を極めて困難にしました。

例えば、大学で目覚ましい活躍を見せた選手や、優れた身体能力を持つ選手は、限られた情報の中でも高く評価されがちです 。

しかし、NBAでの成功には、単なるスタッツや身体的特徴を超えた、より深いバスケットボールの理解や、プロとしての適応力が求められます。直接的な観察が不足したことで、これらの要素が十分に評価されず、結果としてドラフトクラス全体の「弱さ」という評価につながった可能性が考えられます 。

これは、従来のドラフト評価システムが、対面での詳細な観察と評価に大きく依存していたことの裏返しであり、パンデミックがその脆弱性を露呈させたと言えるでしょう。

このように、コロナ禍は、選手の「現在の能力」だけでなく、「将来のポテンシャル」を正確に評価するプロセスを根本的に阻害し、それがドラフトクラスの全体的な「弱さ」の一因となったという側面が見て取れます。

2. トップピックの変遷:再ドラフトで輝くスターたち

2020年NBAドラフトの再評価において、最も注目すべきは、当時の指名順位と現在の選手たちのパフォーマンスとの間に見られる大きな乖離です。以下に、再ドラフトにおけるトップ10選手と、彼らのオリジナルドラフト順位、そして主要なキャリアスタッツを比較した表を提示いたします。

この表は、5年間の成長と適応がいかに選手の価値を再定義したかを明確に示しています。

2020 NBA Re-Draft Top 10 比較表

オリジナル指名順位選手名オリジナル指名チーム再ドラフト順位現在のチームキャリア平均得点 (PPG)キャリア平均リバウンド (RPG)キャリア平均アシスト (APG)キャリア平均FG%キャリア平均3P%キャリア総獲得額
1アンソニー・エドワーズミネソタ・ティンバーウルブズ1ミネソタ・ティンバーウルブズ23.95.34.244.6%36.4%$86,447,537
12タイリース・ハリバートンサクラメント・キングス2インディアナ・ペイサーズ17.53.78.847.7%39.2%$60,055,395
21タイリース・マクシーフィラデルフィア・76ers3フィラデルフィア・76ers19.53.04.446.1%38.1%$47,299,560
3ラメロ・ボールシャーロット・ホーネッツ4シャーロット・ホーネッツ21.06.07.442.1%36.5%$70,743,275
30デズモンド・ベインボストン・セルティックス (→メンフィス・グリズリーズ)5メンフィス・グリズリーズ17.84.63.847.2%41.0%$43,950,173
28ジェイデン・マクダニエルズロサンゼルス・レイカーズ (→ミネソタ・ティンバーウルブズ)6ミネソタ・ティンバーウルブズ10.34.21.548.2%34.8%$33,108,121
9デニ・アブディヤワシントン・ウィザーズ7ポートランド・トレイルブレイザーズ11.36.22.846.2%33.7%$35,966,348
25イマニュエル・クイックリーオクラホマシティ・サンダー (→ニューヨーク・ニックス)8トロント・ラプターズ14.03.43.742.1%37.5%$43,303,948
26ペイトン・プリチャードボストン・セルティックス9ボストン・セルティックス9.12.72.545.4%39.9%$17,146,146
11デビン・ヴァセルサンアントニオ・スパーズ10サンアントニオ・スパーズ14.13.82.644.4%36.9%$47,941,325

1位:アンソニー・エドワーズ (Anthony Edwards)

アンソニー・エドワーズは、オリジナルドラフトでミネソタ・ティンバーウルブズに1位指名された通り、再ドラフトにおいてもその地位を揺るぎなく維持しています 。これは、彼がドラフト前の高い評価、例えば「次世代のドウェイン・ウェイド」と比較されるほどのポテンシャル を、期待を裏切ることなく実現している証左と言えます。

彼は現在、NBAで最高のシューティングガードの一人と広く認識されており、「ミッドレンジからのプルアップスコアリング能力を持つ、昔ながらのスラッシング2ガード」と評されるほどの、その多才なオフェンス能力は特筆に値します 。キャリア平均スタッツは23.9得点、5.3リバウンド、4.2アシスト、フィールドゴール成功率44.6%、3ポイント成功率36.4%を記録しています 。

特に目覚ましいのは、2024-25シーズンにおける平均27.6得点、そして3ポイント成功率39.5%という数字です 。大学時代に疑問視された彼のジャンパーは急速に改善され、このシーズンには3ポイント試投数も大幅に増加させながら高い成功率を維持しています 。彼はNBA史上最年少でキャリア1000本の3ポイントシュートを成功させた選手であり、そのシュート力と自信は、彼をリーグで最も危険な3ポイント脅威の一人へと進化させました 。さらに、2025年にはティンバーウルブズ史上初の3試合連続40得点以上を記録し、2024年のウェスタン・カンファレンス準決勝では44得点を挙げてチームのプレイオフ得点記録を更新するなど、勝負どころでの爆発的なスコアリング能力も証明しています 。

エドワーズは、ミネソタ・ティンバーウルブズを2年連続でウェスタン・カンファレンス決勝に導くなど、「勝利をもたらす選手」としての能力を明確に示しています 。彼の存在は、フランチャイズにとって「メインアトラクション」となり、そのエネルギッシュでゲームを変えるパフォーマンスは、ファンを魅了し続けています 。

2位:タイリース・ハリバートン (Tyrese Haliburton)

タイリース・ハリバートンは、オリジナルドラフトで12位指名でしたが、再ドラフトでは2位へと大きく順位を上げ、その潜在能力を最大限に開花させました 。

サクラメント・キングスからインディアナ・ペイサーズへのトレードは、彼にとって転機となり、ペイサーズでチームの「司令塔」としての役割を確立しました 。2024-25シーズンのプレイオフでは、インディアナ・ペイサーズをNBAファイナルに導くという目覚ましい活躍を見せ、重要なクラッチショットを次々と決めることで、かつての批判を黙らせました 。

彼のプレイスタイルは「ファンキーだが非常に効果的」と評されており、その独特のゲームメイクは対戦相手にとって予測困難なものとなっています 。両利きでの正確なパス、コート全体を見渡す視野の広さ、優れたボールハンドリング能力は彼の最大の強みであり、ディフェンダーを巧みに操り、チームメイトに得点機会を創出する能力は高く評価されています 。

特に、ピック&ロールにおけるヘジテーションからの正確なパスは、彼のプレイメイキングの質の高さを物語っています 。ハリバートン選手は「バックトゥバックのオールNBA選手」となり、2回のオールスター選出を経験するなど、リーグトップクラスのポイントガードとしての地位を確立しています 。

キャリア平均は17.5得点、3.7リバウンド、8.8アシスト、フィールドゴール成功率47.7%、3ポイント成功率39.2%です 。特にアシスト数は年々増加の一途をたどり、2023-24シーズンには平均10.9アシスト、2024-25シーズンには平均9.2アシストを記録しています 。

高度なスタッツ(EPM、PER、WS、VORPなど)においても非常に高い評価を得ており、オールNBAファーストチームに選出されるほどのリーグ全体への影響力を持っています 。

3位:タイリース・マクシー (Tyrese Maxey)

タイリース・マクシーは、オリジナルドラフトで21位指名という比較的低い順位でしたが、再ドラフトでは3位に急浮上し、フィラデルフィア・76ersにとってまさに「掘り出し物」となりました 。

彼はすでに1回のオールスター選出を経験しており、まだ24歳という若さながら、オールNBA級のポテンシャルを秘めていると高く評価されています 。キャリア平均は19.5得点、3.0リバウンド、4.4アシスト、フィールドゴール成功率46.1%、3ポイント成功率38.1%です 。

特に2024-25シーズンには平均26.3得点、6.1アシストを記録しており、得点とアシストの両面で目覚ましい向上を見せています 。

彼は「3レベルのバケットゲッター」として、リム周り、ミッドレンジ、そして3ポイントラインから巧みに得点する能力を持ち、さらにプレイメイキング能力も向上させています 。彼のスコアリングは効率的であり、チームのオフェンスにおいて重要な役割を担っています 。

記事では、マクシーより上位で指名されたアレクセイ・ポクシェフスキー(すでにNBAに在籍せず)、ジョシュ・グリーン、サディック・ベイ、プレシャス・アチウワといった選手たちが、彼ほどのインパクトを残していないことが強調されています 。これは、76ersがドラフトで、当時の評価をはるかに超える「掘り出し物」を見つけ出すことに成功したことを明確に示しています。

4位:ラメロ・ボール (LaMelo Ball)

ラメロ・ボールは、オリジナルドラフトで3位指名という高順位でしたが、再ドラフトでは1つ順位を落として4位となりました 。

彼は2年目にはオールスターに選出されるなど、一時は1位指名される可能性も示唆されるほどの目覚ましいポテンシャルを見せましたが 、近年の怪我による出場試合数の大幅な減少(最近のシーズンで36試合、22試合、47試合のみ)が、彼の成長を「完全に停滞」させていると指摘されています 。

怪我のトラブルにもかかわらず、彼は「派手なプレイメイカーで爆発的な得点能力を持つ」選手として、依然としてトップ5の評価を維持しています 。

キャリア平均は21.0得点、6.0リバウンド、7.4アシスト、フィールドゴール成功率42.1%、3ポイント成功率36.5%です 。特に2024-25シーズンには平均25.2得点、7.4アシストを記録しており、高い得点とアシスト能力を示しています 。

彼のパス能力は「過小評価されている」という声もあり、チームメイトがシュートを決められれば10アシスト以上も可能だと評価されています 。

彼のゲームメイクは、コート全体を視野に入れ、ディフェンダーを巧みに操ることで、チームメイトに多くのチャンスを生み出します 。

ボールの将来は、怪我からの完全な回復と安定した出場試合数にかかっています。健康な状態を維持できれば、依然としてエリートレベルの選手としての可能性を秘めていると言えるでしょう。

彼の「アイテスト」をクリアする華麗なプレイは、リーグ全体に大きな影響を与え続けています。

5位:デズモンド・ベイン (Desmond Bane)

デズモンド・ベインは、オリジナルドラフトでは1巡目最後の30位指名という、比較的目立たない位置からのスタートでしたが、再ドラフトでは5位にまで大躍進を遂げました 。

彼はキャリアのスタートを期待をはるかに超える形で切り開いており、メンフィス・グリズリーズにとって非常に価値のある選手となっています 。

当初は3ポイントシューターとして期待されていましたが、その後の成長は目覚ましく、巧みなプルアップシュート能力を持つ「3レベルスコアラー」へと進化しました 。キャリア平均は17.8得点、4.6リバウンド、3.8アシスト、フィールドゴール成功率47.2%、3ポイント成功率41.0%と、非常に高い3ポイント成功率を維持しています 。彼は優れたリバウンダーであり、プレイメイカーとしても貢献するなど、多角的なスキルセットを身につけました 。

ジャ・モラントの不在時にも、グリズリーズの競争力を維持する上で重要な役割を果たしており、そのリーダーシップと多才さがチームに不可欠な存在であることを示しています 。彼の成長は、ドラフト時の評価が必ずしも選手の真のポテンシャルを反映しているわけではないという典型的な例と言えるでしょう。

ドラフト順位と実際のパフォーマンスの乖離から見る「スカウティングの限界」

タイリース・ハリバートン(12位→2位)、タイリース・マクシー(21位→3位)、デズモンド・ベイン(30位→5位)といった選手たちは、オリジナルドラフト順位を大幅に上回るパフォーマンスを見せています 。

一方で、ジェームズ・ワイズマン(2位→26位)、パトリック・ウィリアムズ(4位→19位)、アイザック・オコロ(5位→18位)といった上位指名選手は、再ドラフトで大きく順位を落としました 。

この現象は、ドラフト時点でのスカウティングが、選手個々の成長曲線やNBAレベルでの適応能力を正確に予測することがいかに困難であるかを示しています。特に2020年ドラフトは、コロナ禍の影響でスカウティングが制限されたことが、この予測の難しさをさらに増幅させたと考えられます 。

直接的な観察機会の不足は、選手のゲームIQ、ワークエシック、怪我への耐性、そして特定のチームシステムへの適合性といった、数字には表れにくい、しかしNBAでの成功に不可欠な要素の評価を困難にしました。

上位指名選手が期待に応えられない一方で、下位指名選手がスター選手へと成長するケースは、ドラフトが「ポテンシャルの宝くじ」であることを改めて示しています。

チームは、単に身体能力や大学での実績だけでなく、より深層的な要素、例えば選手の学習能力、メンタル的な強さ、そしてプロとしての献身性などを評価する必要があることを示唆しています。

このような乖離は、将来のドラフト戦略において、より多様なスカウティング手法(高度なデータ分析の強化、メンタル面評価の導入、複数年での成長予測モデルなど)の必要性を浮き彫りにします。

また、ドラフト後の選手育成プログラムの質が、選手のキャリアを大きく左右する要因であることも示唆しています。2020年ドラフトの再評価は、スカウティングの限界と、選手育成の重要性という、NBAチーム運営における根本的な課題を浮き彫りにしたと言えるでしょう。

3. 注目すべき「大躍進」選手たち

2020年ドラフトクラスは、トップ数名のスター選手以外は全体的に「平凡」と評される一方で 、オリジナルドラフト順位をはるかに超える活躍を見せた「大躍進」選手たちが多数存在します。

彼らの成長は、ドラフト評価の難しさと、適切な育成環境、そして選手自身の努力がいかに重要であるかを物語っています。

プレイヤーパフォーマンスハイライト表

選手名オリジナル順位再ドラフト順位特筆すべきキャリア実績
ジェイデン・マクダニエルズ286優れた守備のスペシャリスト、多才なロールプレイヤー
デニ・アブディヤ97遅咲きの「何でも屋」フォワード、攻守両面での貢献
イマニュエル・クイックリー258巧みなスコアリングガード、プレイメイキング能力の向上
ペイトン・プリチャード269シックスマン・オブ・ザ・イヤー受賞、NBAチャンピオン、優秀なアウトサイドシューター
アイザイア・ジョー49143ポイントシューティングスペシャリスト、高効率の得点力
オビ・トッピン815爆発的なパワーフォワード、ペイサーズのファイナル進出に貢献
コール・アンソニー1512爆発的なスコアリング能力、時折の得点爆発
アーロン・ネスミス1413イースタン・カンファレンスで最高のロールプレイングウィングの一人、ペイサーズのファイナル進出に貢献
アイザイア・スチュワート1616堅実なビッグマン、スクリーン、リバウンド、フロアスペーシング、ブロック
ナジ・マーシャルUndrafted17アンディラフテッドからスターター、キャリアで最も生産的なシーズン
サディック・ベイ1920平均的なスポットアップシューター、ドライブからの得点、スラッシャー
トレ・ジョーンズ4121安全なフロアジェネラル、アシスト/ターンオーバー比が高い
K.J. マーティン5223スラッシングウィング、リバウンド能力、セカンドラウンド指名からのNBA定着
サム・メリル6024アウトサイドスポットアップシューティングの達人、堅実なキャリア
ニック・リチャーズ4225優れたフィニッシュ能力を持つバウンシーなビッグマン、ロブ脅威
ポール・リード5828エネルギッシュなロールプレイングビッグマン、フィラデルフィアのファンのお気に入り
ザビエル・ティルマン3529エネルギッシュなビッグマン、リバウンドと強さでNBA定着
ラマー・スティーブンスUndrafted30アンディラフテッドから1巡目指名、アンダーサイズながらスコアリング能力

ジェイデン・マクダニエルズ (Jaden McDaniels)

ジェイデン・マクダニエルズは、オリジナルドラフトで28位指名でしたが、再ドラフトでは6位へと大きく順位を上げました 。

彼のこの高い評価は、2020年ドラフトクラスがトップ数名の選手以外は「平凡」であるという全体的な評価を浮き彫りにしています 。

マクダニエルズは「ウィングの優れたディフェンダー」として知られ、そのリーチの長さと横方向の素早さにより、複数のポジションを守ることが可能です 。彼は主に「3&Dのロールプレイヤー」として活躍しており、スラッシング以外の得点能力は限定的です 。

しかし、その守備力と、チームのオフェンスにおけるコネクターとしての役割 、そして堅実な3ポイントシューティング(キャリア平均34.8% )は、彼の価値を大きく高めています。特に、2024-25シーズンにはキャリアハイの12.2得点を記録し、ディフェンス面でも高い評価を得ています 。

デニ・アブディヤ (Deni Avdija)

デニ・アブディヤは、オリジナルドラフトで9位指名でしたが、再ドラフトでは7位へと順位を上げました 。

キャリアのスタートは緩やかでしたが、その後は著しく成長を遂げ、2023-24シーズン以降は平均15.8得点、7.2リバウンド、3.9アシスト、フィールドゴール成功率49.1%という数字を記録しています 。

彼はウィングとしては優れたサイズとタフネスを持ち合わせており、リバウンドとディフェンスの両面でその能力を発揮しています 。

アブディヤは「何でも屋のツーウェイフォワード」へと進化し、攻守両面でチームに貢献できる多才な選手となりました 。彼の成長は、ドラフト後の地道な努力と、プレイスタイルの適応がいかに重要であるかを示しています。

イマニュエル・クイックリー (Immanuel Quickley)

イマニュエル・クイックリーは、オリジナルドラフトで25位指名と、1巡目下位での指名でしたが、再ドラフトでは8位にまで大きく順位を上げました 。

彼は「実際のドラフト順位をはるかに上回る活躍」を見せており、その巧みなスコアリング能力とプレイメイキング能力は高く評価されています 。

キャリア平均は14.0得点、3.4リバウンド、3.7アシスト、フィールドゴール成功率42.1%、3ポイント成功率37.5%です 。

クイックリーは、素早いクロスオーバー、急停止からの3ポイントシュートやミッドレンジからの得点、そして優れたアウトサイドシューティング能力を兼ね備えています 。彼は現代のコンボガードとして非常に価値のある選手であり、その得点能力とプレイメイキングはチームのオフェンスに大きな影響を与えています 。

特に、チームの得失点差に与える影響を示すON-OFFレーティングで高い数値を示しており、彼のコート上での存在がいかにチームにプラスに作用しているかが分かります 。

ペイトン・プリチャード (Payton Pritchard)

ペイトン・プリチャードは、オリジナルドラフトで26位指名でしたが、再ドラフトでは9位に順位を上げました 。

彼は、シックスマン・オブ・ザ・イヤーを受賞し、ボストン・セルティックスのNBAチャンピオンシップ獲得に貢献するなど、ベンチからの重要な役割を確立しました 。キャリア平均は9.1得点、2.7リバウンド、2.5アシスト、フィールドゴール成功率45.4%、3ポイント成功率39.9%です 。

プリチャードは「ダブルスコアラー、優れたアウトサイドシューター(ドリブルからも)、そして良いプレイメイカーへと開花」しました 。

彼の高い再ドラフト順位は、2020年クラス全体の層の薄さと、彼がNBAで最も影響力のあるベンチプレイヤーの一人として果たしている役割の大きさを反映しています 。

アイザイア・ジョー (Isaiah Joe)

アイザイア・ジョーは、オリジナルドラフトで49位指名という2巡目下位での指名でしたが、再ドラフトでは14位にまで劇的に順位を上げました 。

彼は「ロールプレイングシューティングスペシャリスト」としてその価値を確立し、特にアウトサイドシューティングで目覚ましい活躍を見せています 。

過去3シーズンで5.4本の3ポイント試投に対し、41.2%という高い成功率を記録しており、そのシュート力はチームにとって不可欠な武器となっています 。

平均得点は8点未満であるにもかかわらず、彼の再ドラフト順位が高いのは、2020年ドラフトクラス全体の層の薄さと、現代NBAにおける高効率な3ポイントシューターの価値の高さを示しています 。

彼はベンチからの得点源として、またスターターとして出場した際には、平均12.2得点、3.5リバウンド、2.4アシストを記録するなど、そのインパクトは数字以上に大きいものがあります 。

オビ・トッピン (Obi Toppin)

オビ・トッピンは、オリジナルドラフトで8位指名でしたが、再ドラフトでは15位へと順位を落としました 。

彼は再ドラフトの1巡目前半におけるもう一人のロールプレイヤーとして位置づけられています 。トッピンは「爆発的だが、ややアンダーサイズなパワーフォワード」であり、フロアを広げる能力も持ち合わせています 。

彼はインディアナ・ペイサーズのNBAファイナル進出に貢献し、「小さなことをうまくこなす」ことでチームに貢献しました 。彼のキャリア平均は8.5得点、3.4リバウンド、1.2アシスト、フィールドゴール成功率52.3%、3ポイント成功率35.5%です 。

大学時代にはドラフトクラスで最高のシーズンを送ったと評され、そのダンクの才能や、ポンプフェイクからのドライブ、そして意外なほどのシューティングレンジ(大学時代は3ポイント成功率39%)が注目されていました 。

4. オリジナル上位指名組の明暗

2020年ドラフトの再評価では、オリジナルドラフトで上位指名されたにもかかわらず、期待されたほどの成長を遂げられなかった選手たちの現状も浮き彫りになりました。彼らのケースは、ドラフト評価の難しさと、NBAでの成功にはポテンシャルだけでなく、様々な要素が絡み合うことを示唆しています。

オニエカ・オコング (Onyeka Okongwu)

オニエカ・オコングは、オリジナルドラフトで6位指名と高い期待を背負っていましたが、再ドラフトでは11位へと順位を落としました 。

5シーズンが経過し、彼は「ある程度、NBAスターターとしての足場を固めた」と評価されています 。

彼は、フェイスアップからのドライブや、ディフェンスにおける横方向の素早さなど、多才な能力を持っています 。

キャリア平均は9.6得点、6.7リバウンド、1.3アシスト、フィールドゴール成功率61.4%です 。ドラフト前は、その身体能力とオールラウンドなスキル、そしてリムプロテクト能力が非常に高く評価されていました 。

しかし、彼の成長は、当初のトップピックとしての期待値には届かず、堅実なロールプレイヤーとしての地位を確立するに留まっています。

アイザック・オコロ (Isaac Okoro)

アイザック・オコロは、オリジナルドラフトで5位指名という高順位でしたが、再ドラフトでは18位へと大きく順位を落としました 。

彼は「エリート級の守備ポテンシャルとスラッシング能力」を理由にトップ5で指名されましたが、そのレベルで「期待通りにはいかなかった」と評価されています 。

彼のサイズ不足は、ディフェンス面で相手のリムアタックを阻止する上で障害となり、またリムアタッカーとしての能力も十分に発揮できていません 。3ポイントシュートは予想より改善したものの、その向上が彼の全体的なオフェンスの課題を完全に補うには至っていません 。

キャリア平均は8.1得点、2.8リバウンド、1.6アシスト、フィールドゴール成功率46.7%、3ポイント成功率35.1%です 。ドラフト前は、その運動能力と高いエフォートレベル、そしてボールハンドラーを執拗に追いかける守備力が評価されていました 。しかし、NBAレベルでの攻撃面での成長の停滞が、彼の評価を押し下げた要因と言えるでしょう。

パトリック・ウィリアムズ (Patrick Williams)

パトリック・ウィリアムズは、オリジナルドラフトで4位指名という非常に高い順位で指名されましたが、再ドラフトでは19位へと大きく順位を落とし、「トップ5からの大きな期待外れ」と評されています 。

彼の最大の課題は、「ゲーム感覚が非常に乏しく、改善が見られない」点にあります 。彼は堅実な3ポイントシューター(キャリア平均39.2% )ではあるものの、スポットアップジャンパー以外のオフェンスゲームはほとんどなく、ダンクを決めることすら苦労する場面が見られます 。

守備面においても、「足がやや遅い」ため、輝きを放つことができていません 。キャリア平均は9.6得点、4.1リバウンド、1.5アシスト、フィールドゴール成功率45.2%です 。

ドラフト前は、その強靭な体格と、攻守両面で「何でもできる」ポテンシャル、特にピック&ロールゲームやジャンパーのレンジが期待されていました 。

しかし、NBAレベルでの適応と成長が期待通りに進まなかったことが、彼の評価を大きく下げた原因と考えられます。

ジェームズ・ワイズマン (James Wiseman)

ジェームズ・ワイズマンは、オリジナルドラフトで2位指名という非常に高い順位でゴールデンステート・ウォリアーズに指名されましたが、再ドラフトでは26位へと劇的に順位を落としました 。

記事では、「これほど弱いクラスでなければ、おそらく指名されなかっただろう」とまで言及されるほど、彼のNBAでの苦戦は顕著です 。

身長と運動能力に恵まれているにもかかわらず、キャリア平均は10得点未満、6リバウンド未満と、期待されたパフォーマンスを発揮できていません 。

ドラフト前は、彼の身長、リーチ、オールラウンドなスキル、運動能力の組み合わせは「地球上に10人もいない」とまで評され、エリート級のリムプロテクターとしてのポテンシャルも指摘されていました 。

しかし、NBAでの出場機会は限られ、2024-25シーズンデビュー戦でのアキレス腱の怪我は、彼の将来をさらに複雑にしています 。彼のケースは、ドラフト前の高いポテンシャル評価が、必ずしもNBAでの成功を保証するものではないという現実を突きつけています。

5. 2020年ドラフトの全体像と教訓

2020年NBAドラフトクラスを全体的に見ると、その特徴は「トップ数名のスター選手と、その後の堅実なロールプレイヤー層との明確な差」にあると言えます 。アンソニー・エドワーズ、タイリース・ハリバートン、タイリース・マクシー、そして怪我の影響を受けつつも才能を見せるラメロ・ボールといった選手たちは、リーグのトップレベルで輝きを放っています。

しかし、彼らに続く選手たちは、主に「3&D」型や特定の役割に特化した堅実なロールプレイヤーが多く、スターターレベルの選手が続くものの、その層は比較的薄いという評価です 。

このドラフトクラスの全体的な評価は、コロナ禍におけるスカウティングの難しさが、いかにドラフト結果に影響したかを強く示唆しています 。

直接的なスカウティング機会が制限されたことで、チームは「手探り」で選手を選ばざるを得ず、結果として、本来のポテンシャルを見誤ったり、特定のスキルセットを持つ選手が過小評価されたりするケースが発生しました。

このドラフトから得られる重要な教訓の一つは、「3&D」型ロールプレイヤーの価値再認識と、それがドラフト戦略に与える影響です。ジェイデン・マクダニエルズ(28位→6位)、アーロン・ネスミス(14位→13位)、アイザイア・ジョー(49位→14位)、そしてデズモンド・ベイン(30位→5位)といった選手たちは、当初は「3&D」型やシューティングスペシャリストとして認識されていましたが、予想を上回る活躍を見せました 。

彼らは、現代NBAにおいて不可欠な3ポイントシュート能力と堅実なディフェンスを兼ね備え、チームの勝利に大きく貢献しています。これは、リーグがより効率的なスペースとシューティングを重視する傾向にある中で、特定の専門スキルを持つロールプレイヤーの価値が再評価されていることを示しています。

これらの選手がオリジナルドラフト順位を大きく上回るパフォーマンスを見せたことは、チームがドラフト戦略において、ハイリスク・ハイリターンのスター候補だけでなく、堅実な専門スキルを持つ選手をより高く評価するようになってきている可能性を示唆しています。

パンデミックによるスカウティングの制約があったからこそ、確実性の高いスキルを持つ選手が結果的に成功を収めるケースが目立ったのかもしれません。

また、怪我のリスクとキャリア成長の予測不可能性も、このドラフトクラスから学ぶべき重要な要素です。

ラメロ・ボールは、その華麗な才能とオールスター選出という早期の成功にもかかわらず、度重なる怪我によって成長が停滞しました 。

一方、ジェームズ・ワイズマンは、ドラフト前の高い評価にもかかわらず、NBAでの適応に苦しみ、怪我も重なり、期待された活躍を見せることができていません 。

これらのケースは、選手のポテンシャルを評価する際に、単なる身体能力やスキルだけでなく、怪我への耐性や、プロリーグの厳しい環境下での継続的な成長能力を見極めることの難しさを示しています。選手のキャリアは、ドラフト時点では予測不困難な要因(怪我、チーム環境、コーチング、個人のメンタルなど)によって大きく左右されることが改めて浮き彫りになりました。

結論として、2020年ドラフトは、ドラフト評価の難しさと、選手の成長曲線を見極めることの重要性を強く示しています。

当時の特殊な状況下でのスカウティングの限界が、結果として多くの「掘り出し物」と「期待外れ」を生み出しました。これは、NBAチームが今後、より多角的な視点から選手を評価し、長期的な育成計画を立てることの重要性を再認識するきっかけとなるでしょう。

6. 結論:未来への示唆

2020年NBAドラフトの再評価は、その特殊な背景と、その後の選手たちの多様なキャリアパスを通じて、NBAにおけるタレント評価と育成の複雑さを浮き彫りにしました。

このクラスは、アンソニー・エドワーズやタイリース・ハリバートンといった、リーグを代表するスター選手を輩出した一方で、多くの選手が当初の期待値を大きく超えたり、あるいは下回ったりする結果となりました。

この分析から導かれる主要な点は、以下の通りです。

第一に、スカウティングの限界と適応能力の重要性です。コロナ禍によるスカウティングの制限は、チームが選手を「手探り」で評価せざるを得ない状況を生み出し、結果としてドラフト順位と実際のパフォーマンスの間に大きな乖離が生じました。

これは、選手の真のポテンシャルを評価するには、統計データや身体能力だけでなく、ゲームIQ、コート上での適応能力、そしてプレッシャー下でのメンタルといった、より定性的な要素が不可欠であることを示しています。将来のドラフトにおいては、多様な情報源と評価手法を組み合わせ、選手の適応能力や成長曲線を見極めることが、これまで以上に重要となるでしょう。

第二に、「専門性」を持つロールプレイヤーの価値の再認識です。ジェイデン・マクダニエルズやアイザイア・ジョーのように、特定のスキルセット(特に「3&D」能力)に特化した選手が、期待を上回る活躍を見せました。

これは、現代NBAにおいて、スター選手を補完し、チームのバランスを保つ上で、堅実で効率的なロールプレイヤーがいかに不可欠であるかを示しています。

ドラフト戦略においては、ハイリスク・ハイリターンのスター候補と、堅実な専門スキルを持つ選手とのバランスを考慮することが、チームの成功に繋がる可能性が高いと言えます。

第三に、キャリア成長の予測不可能性と怪我のリスクです。ラメロ・ボール選手やジェームズ・ワイズマンのケースは、ドラフト時点での高いポテンシャル評価が、必ずしもNBAでの成功を保証するものではないという現実を突きつけます。

怪我の発生や、プロの環境への適応の難しさなど、予測困難な要因が選手のキャリアに大きな影響を与えることを示唆しています。

チームは、選手の長期的な健康管理と、継続的な成長をサポートする育成プログラムの重要性を再認識する必要があるでしょう。

2020年ドラフトクラスは、NBAに新たなスターと堅実なロールプレイヤーをもたらし、リーグのダイナミクスに影響を与えました。このドラフトの経験は、今後のドラフト評価において、より柔軟で多角的な視点を持つことの重要性を強調しています。選手個々の成長は多様であり、ドラフトはあくまでそのスタート地点に過ぎません。

チームは、ドラフト後の選手育成に継続的に投資し、選手が最大限のポテンシャルを発揮できる環境を整えることが、長期的な成功への鍵となるでしょう。

参照:hoopshype

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