ケイラ・ソーントン

ケイラ・ソーントンの軌跡:ドラフト外から頂点へ、そして新天地での飛躍

WNBAで地道にキャリアを積み重ね、ついに頂点まで登り詰めた選手がいます。ケイラ・ソーントン、32歳。ドラフト外からスタートした彼女の物語は、まさに「努力は報われる」ことを証明する感動的なサクセスストーリーです。

テキサスの大学で築いた基盤

テキサス州エルパソ出身のソーントンは、地元のUTEP(テキサス大学エルパソ校)で2010年から2014年まで4年間プレーしました。特に注目すべきは4年生時の成績で、平均19.5得点・10.1リバウンドというダブルダブルを達成。これはUTEP史上初の快挙でした。

卒業時には通算1,679得点・1,032リバウンドを記録し、同校女子バスケットボール史上最高得点者として名前を刻みました。守備面でも優秀で、カンファレンスUSAのオールディフェンシブチームに2度選出されています。その功績は2024年に永久欠番という形で讃えられ、背番号5番は女子選手として初めて永久欠番に指定されました。

ドラフト外からの挑戦

しかし、2014年のWNBAドラフトで指名を受けることはできませんでした。多くの選手がここで諦めてしまう中、ソーントンは海外でのプレーを選択します。プエルトリコやイスラエルでバスケットボールを続け、2015年にようやくワシントン・ミスティクスと契約を結びました。

ルーキーシーズンは10試合の出場にとどまり、翌2016年はWNBAでプレーできませんでした。それでも韓国やオーストラリアなど海外リーグで腕を磨き続け、2017年にダラス・ウィングスとの契約を獲得したのです。

ダラスでの成長期

2017年から2022年まで6シーズンをダラス・ウィングスで過ごしたソーントンは、この期間で真のWNBA選手へと成長しました。主にフォワードとして堅実なロールプレーヤーの役割を担い、リバウンドとディフェンス面でチームに欠かせない存在となりました。

2022年には特に印象的な活躍を見せ、平均オフェンスリバウンド数でリーグ上位15位にランクイン。同年7月30日のアトランタ戦では自己最高の21得点、6月5日のラスベガス戦では15リバウンドを記録するなど、攻守両面での貢献度の高さを示しました。

ウィングス時代を通じて平均7点台・4リバウンド台のスタッツを安定して残し、チームのフロントコートに粘り強さとエナジーをもたらし続けました。

リバティでの栄光

2023年シーズン前、大型トレードによってニューヨーク・リバティへ移籍したソーントン。この3チーム間トレードでは、リバティが元MVPのジョンケル・ジョーンズとソーントンを獲得する内容でした。

リバティのGMはソーントンについて「ディフェンスのフィジカルさとオフェンスでのスペーシング能力を併せ持つ希少なコンビネーション」と評価しました。

加入後は主にシックスマンとして活躍し、2023年にはWNBA初開催のミッドシーズントーナメント「コミッショナーズカップ」制覇に貢献。そして2024年、ついにフランチャイズ史上初のWNBA優勝を成し遂げました。

この年、ソーントンは全40試合に出場(うち11試合先発)し、自己最多の45本もの3ポイントシュートを成功させるなど、オフェンス面でも成長を見せました。ファイナルでは全試合でプレーし、特に優勝を決めた対ミネソタ・リンクスとの第5戦では約21分間出場して相手を苦しめる堅守を発揮しました。

新天地での更なる飛躍

2024年12月、WNBAの拡張に伴い新設されたゴールデンステート・ヴァルキリーズにエクスパンション・ドラフトで指名されたソーントン。リバティでの契約が残っていましたが、新チームでの挑戦を受け入れました。

2025年シーズン、ヴァルキリーズでのソーントンは完全に別次元の活躍を見せています。開幕から先発を任され、自己最高となる平均30分以上のプレータイムを与えられるとともに、キャリア初の平均二桁得点(15点前後)と7リバウンド超えを記録しています。

特筆すべきは守備面での飛躍で、2025年序盤には1試合平均スティール数2.3本でリーグトップに立ちました。これまでのキャリアで最高でも平均1.1本だったことを考えると、驚異的な成長です。

6月9日のロサンゼルス・スパークス戦では延長戦で勝負を決める3ポイントを決め、6月7日のラスベガス・エイシーズ戦ではキャリアハイの22得点・11リバウンドのダブルダブルを記録しました。

守備のスペシャリストとして

身長185cmのフォワードであるソーントンの最大の武器は、身体を張った守備とリバウンドです。ダイブやチャージングも厭わず、ルーズボールに飛び込む姿勢は多くのファンに愛されています。

本人は「ワシントン時代にサイズが足りないと言われたことで、見返してやろうと守備に情熱を注ぐようになった」と語っており、その経験が現在の地位につながっています。

コーチ陣からは「混沌を起こすディフェンダー」と評され、チームメイトからも「彼女のアグレッシブさと勘の良さは非常に重要」と信頼されています。

逆境を力に変えた10年

ドラフト外からスタートし、海外リーグを転々とし、一度はWNBAから離れることもあったソーントン。しかし、その全ての経験が現在の彼女を形作っています。

32歳となった今も大きな怪我なく高いパフォーマンスを維持し、新チームではリーダーとして若い選手たちを牽引しています。派手なスター選手ではないかもしれませんが、「勝利に不可欠な名脇役」として、どのチームでも愛され続けています。

ケイラ・ソーントンの物語は、努力と献身で道を切り拓くアスリートの成功例そのものです。そして彼女の挑戦は、新天地ゴールデンステートでまだまだ続いていきます。

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