サトゥ・サバリー

WNBA労使交渉が紛糾|サトゥ・サバリーが新CBA提案を「顔面への平手打ち」と痛烈批判

WNBAの急速な成長の陰で、深刻な労使対立が表面化しています。フェニックス・マーキュリーのサトゥ・サバリーが、WNBA選手会(WNBPA)の共同委員長として、リーグからの新たな労働協約(CBA)提案を「顔面への平手打ち」と痛烈に批判しました。

昨シーズンのケイトリン・クラーク効果により観客動員数、視聴率、ファンの関心が急上昇する中、WNBAは矢継ぎ早に拡張計画を発表しています。既にゴールデンステート・バルキリーズが今シーズンから参戦し、2026年にはポートランドとトロント、さらに2028年にクリーブランド、2029年にデトロイト、2030年にフィラデルフィアの新チーム設立が決定されました。

しかし、この華々しい拡張の裏で、現在の選手たちへの待遇改善が置き去りにされているという批判が噴出しています。

「リーグからの提案は正直、顔面への平手打ちだった」

新チーム拡張のニュースについて問われたサバリーは、率直にこう答えました。「リーグからの提案は正直、顔面への平手打ちだった。今リーグにいる選手たちに重点を置く必要がある。リーグが成長しているのを見るのは嬉しいが、ロースターの拡張も同時に行えばどれほど素晴らしいかと思う」

現在のWNBAでは、各チームのロースター上限が12名に設定されています。選手会側はこの上限拡大を求めていますが、リーグ側は財政的に実行可能ではないとの立場を取っています。

サバリーはさらに踏み込んで批判を続けました。「選手への投資を怠る言い訳を継続的に見つけているチームにまず焦点を当て、十分に支えられない人材をさらに追加することに集中する前に、既存のチームに注力すべきではないか」

この発言は、WNBAが新チーム設立による収益拡大を優先し、既存選手の待遇改善を軽視しているという選手会の不満を如実に表しています。

CBA交渉の焦点は給与、収益分配、家族計画支援

現在進行中のCBA交渉では、選手給与、収益分配、家族計画に関する給付が主要な争点となっています。WNBAの人気急上昇により収益が大幅に増加している中、選手側は適切な分配を求めています。

5月9日付けのESPN記事によると、キャシー・エンゲルバート・コミッショナーはロースター拡大について、選手を増やすことは新チーム設立ほどの収益成長をもたらさないと主張し、財政的に実行可能ではないとの見解を示しています。

この見解に対して選手側は強く反発しており、明らかに両者の間には大きな溝が存在します。リーグが数十億円規模の拡張計画を進める一方で、選手の基本的な労働条件改善には消極的であることへの不満が高まっています。

ロックアウトの可能性も浮上、選手会は覚悟を決意

交渉が難航する中、今シーズン終了後のロックアウト(労働争議による競技停止)の可能性も現実味を帯びてきました。WNBPA会長のニーカ・オグミケは「私たちは自分たちの価値を反映したCBAを求めているのではなく、それを獲得したからこそ要求している」と強い意志を示しています。

エンジェル・リースやディジョナイ・キャリントンなど、若手スター選手たちもストライキの可能性を示唆する発言を行っており、選手会全体の結束は固いようです。どちらの当事者も労働争議という事態は望んでいませんが、選手側はその可能性に備えて準備を進めています。

サバリーの言葉を借りれば、新チームへの興奮は現実的なものですが、リーグは既に「蒔かれた種を完全に支えることができる」ことを確実にしなければ、「穀物にさらに追加」することはできないということです。

拡張か選手支援か、WNBAの選択

WNBAが直面しているのは、短期的な拡張による収益拡大と、長期的な競技レベル向上のための選手支援のバランスをどう取るかという根本的な問題です。

確かに新チーム設立は一時的な話題性と収益をもたらしますが、選手の技術レベルや労働環境が改善されなければ、リーグ全体の競技品質や持続可能性に影響を与える可能性があります。特に、限られたロースター枠で競争が激化する現状では、多くの有能な選手が海外リーグに流出するリスクも懸念されます。

一方で、リーグ側の財政的制約も理解できる部分があります。新チーム設立による確実な収益増加と比較して、ロースター拡大による収益への直接的な貢献は測定が困難であることも事実です。

2025年シーズン終了までがタイムリミット

現在のCBAは2025年シーズン終了とともに期限を迎えるため、両者にとって時間は限られています。リーグが選手会の要求にどのように応えるか、そして妥協点を見つけることができるかが、WNBAの今後を大きく左右することになります。

クラーク効果により未曾有の人気を獲得したWNBAにとって、この労使交渉は成長を持続させるための重要な試金石となります。拡張による量的成長と、選手支援による質的向上の両立が求められる中、リーグ運営陣の手腕が問われる局面を迎えています。

サバリーの「顔面への平手打ち」という強烈な表現は、選手たちの フラストレーションの深さを物語っています。WNBAが真の意味で成功を収めるためには、スター選手たちの声に耳を傾け、持続可能な成長戦略を構築することが不可欠でしょう。

引用:YARDBARKER

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