2024年パリオリンピックから1年。元フランス代表ヘッドコーチのビンセント・コレが、ジョエル・エンビードの代表選択について衝撃的な本音を明かしました。
リトアニアのビリニュスで開催されたB8サミットで、BasketNewsの独占インタビューに応じたコレは「エンビードが昨年来なくて嬉しかった」と率直に語りました。
自国開催のオリンピックで、世界最高峰のセンターを獲得できなかったことを「嬉しかった」と表現する監督。その言葉の裏には、現代バスケットボール界が抱える深刻な問題が隠されていました。
「大臣からの圧力があった」政治的な帰化推進の実態
コレの告白はさらに続きます。「私は本当に反対することができなかった。なぜなら、それはもっと上から来ていたから。大臣のような高い地位から」
フランス政府は、自国開催のオリンピックでメダル獲得を確実にするため、エンビードの帰化を強力に推進していました。「オリンピックがフランスで開催されることもあり、彼らはそれが我々にとってより良い成績を収めるための保険だと考えていた」とコレは説明します。
しかし、現場の指揮官としてのコレの考えは違いました。「でも私にとって、それはそんなに明確なことではなかった」
「帰化選手は必要ない」コレが守りたかったフランスバスケの誇り
コレは帰化選手の起用について、明確な立場を示しました。「我々にはそれが必要ないと思う」
そして、他国の帰化政策について理解を示しながらも、批判的な見解を述べています。「なぜチームがそうするのか理解できる。でも私にとって、それはフェアではない」
フランス代表の哲学:
- 自国で育った選手を中心にチーム構築
- 帰化による即戦力獲得に頼らない
- 長期的な育成システムの重視
- 代表チームのアイデンティティの維持
実際、フランスは自国育成の選手たちで2024年パリオリンピックで銀メダルを獲得。エンビードのいる米国に決勝で敗れたものの、その戦いぶりは世界中から称賛されました。
エンビードの選択がもたらした波紋
エンビードは最終的に以下の3つの選択肢から米国代表を選びました:
- カメルーン(出身国)
- フランス(フランスパスポート保持)
- アメリカ(市民権取得)
彼の決断は、特にフランスとカメルーンのファンから大きな批判を浴びました。パリでの試合では激しいブーイングを受け、「裏切り者」と呼ばれることもありました。
しかし、コレの告白は意外な事実を明らかにしています。少なくとも現場の最高責任者は、エンビードがフランスを選ばなかったことに安堵していたのです。
ダリル・モーリーが語るエンビードの現在「リベンジツアーの準備」
一方、エンビードの所属する76ersでは、ゼネラルマネージャーのダリル・モーリーが30分にわたる記者会見を行いました。
モーリーはエンビードの健康状態について言及し、来シーズンへの期待を語っています。元NBA選手のケンドリック・パーキンスも「エンビードはリベンジツアーに出ると信じている。彼はミッションを持って戻ってくるはずだ」と予想。
パーキンスはさらに踏み込んで「エンビードとポール・ジョージは、NBA全体で最もプレッシャーがかかっている2人だ。カンファレンスファイナルが最低ライン」と、高い期待を示しました。
帰化選手問題が突きつける「代表の意味」
コレの告白は、現代スポーツが直面する根本的な問題を浮き彫りにしています。
帰化選手をめぐる議論:
- メダル獲得のための即戦力 vs 長期的な育成
- 政治的圧力 vs 現場の哲学
- グローバル化 vs ナショナルアイデンティティ
- 勝利至上主義 vs スポーツの本質
近年、多くの国が帰化選手の獲得に積極的です。特にバスケットボールでは、ギリシャ(ヤニス・アデトクンボ)、スロベニア(ルカ・ドンチッチ)など、帰化選手が代表チームの中心となるケースが増えています。
しかし、コレのような考えを持つ指導者も少なくありません。代表チームは単に最強の選手を集めれば良いのか、それとも国のアイデンティティを体現する存在であるべきなのか。この問いに正解はありません。
エンビードの未来と代表チームの在り方
エンビードは米国代表として金メダルを獲得し、個人としては最高の結果を手にしました。しかし、彼の選択が投げかけた波紋は今も続いています。
コレの「嬉しかった」という言葉は、単なる負け惜しみではありません。それは、勝利よりも大切なものがあるという、一人の指導者の信念の表れでした。
2028年ロサンゼルスオリンピックに向けて、各国は再び代表チーム編成を考えることになります。その時、コレが示した哲学は、多くの国に影響を与えるかもしれません。
帰化選手に頼らず、自国の選手だけで戦うことの意味。それは時に非効率で、勝利から遠ざかるかもしれません。しかし、そこにこそスポーツの本質があるのかもしれません。
エンビードの選択は正しかったのか。コレの哲学は時代遅れなのか。その答えは、これからの国際大会が教えてくれることでしょう。
引用:HOOPSHYPE

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