2023年9月に起きたドメスティックバイオレンス事件から約2年。NBA界を震撼させたケビン・ポーター・ジュニア(25歳)に対する処分が明らかになりました。リーグが下した「4試合出場停止」という判定に、多くのファンから「これは冗談か?」という怒りの声が上がっています。
The Athleticのロー・マレー記者が報じたところによると、NBAは長期にわたる調査の末、ポーターに対して4試合の出場停止処分を科すことを決定。しかし、驚くべきことに、この処分は「すでに消化済み」として扱われ、今後一切試合を欠場する必要がないというのです。
事件の経緯と被害者の証言が生んだ「矛盾」
2023年9月11日、ポーターは当時交際していた元WNBAプレーヤーのカイスリー・ゴンドレジックとの口論の末、暴行と絞首の重罪容疑で逮捕されました。マンハッタンの検察は当初、ポーターが「拳で顔面を何度も殴打した」と主張していました。
しかし、事件から数週間後、被害者であるゴンドレジック本人がニューヨーク・ポスト紙に対して衝撃的な証言をします。「彼は決して拳を握って私を殴っていません。顔を何度も殴ったなんてことは絶対にありませんでした」「口論は10秒にも満たない短いものでした」
さらに、当初ポーターが原因とされた椎骨骨折についても、後の調査で先天性の欠損であることが判明。第2級暴行罪は取り下げられ、最終的にポーターは2024年1月に第3級無謀暴行(軽罪)と第2級ハラスメント(違反行為)で司法取引に応じました。
この一連の展開は、検察の初期発表と被害者本人の証言の間に大きな乖離があることを浮き彫りにしました。多くのファンが「真実は何なのか」と困惑する中、NBAの調査は続いていたのです。
シーズン全休という「見えない処分」の真相
ポーターは事件後、ヒューストン・ロケッツからオクラホマシティ・サンダーへトレードされ、即座に解雇。2023-24シーズンを全休することになりました。この期間、彼はギリシャのリーグでプレーしていましたが、NBA復帰への道は閉ざされていました。
NBAはこの「実質的な追放期間」を処分の一部と見なし、今回の4試合出場停止はすでに消化済みという判断を下しました。つまり、2024-25シーズンは1試合も欠場することなくプレーできるということです。
この決定に対して、SNS上では怒りの声が爆発しています。
「これは完全にジョークだ。彼は実際に4試合の出場停止を受けるべきだ」
「NBAは女性に対する暴力を軽視している。これが最後のチャンスであるべきだ」
「450人しかいないNBA選手という特権的な立場で、数百万ドルを稼げる仕事なのに、最悪の人間を雇い続けるのか」
特に批判的なファンは、才能があれば女性への暴力も許されるというメッセージを子供たちに送っていると指摘。「試合のチケットは数百ドルもするのに、見せられるのは『スポーツが上手ければ女性を虐待してもいい』という教訓なのか」と憤りを隠しません。
リーグの姿勢が問われる「ダブルスタンダード」
今回の処分決定で最も問題視されているのは、NBAが調査に2年もかけたという点です。さらに驚くべきことに、ポーターがギリシャでプレーしている間、調査を一時停止していたことも明らかになりました。
2024年7月にロサンゼルス・クリッパーズと契約してから調査を再開し、その後2025年2月にミルウォーキー・バックスへトレード。現在は同チームと2年契約を結んでいます。
この一連の流れに対して、あるファンは皮肉を込めてこう語ります。「クリッパーズは問題児ばかり集めている。高額な年俸総額に苦しんでいるからといって、プロバスケ界最悪の人間たちを最低保証額で雇うなんて」
実際、NBAは「暴力反対」「女性の尊重」「選手は子供たちのロールモデル」といった価値観を掲げています。しかし、今回の処分は、これらの理念と実際の行動の間に大きなギャップがあることを露呈しました。
一方で、ポーターを擁護する声も存在します。
「彼は当時23歳だった。25歳の男性は23歳の時より10倍賢い」
「被害者自身が検察の主張を繰り返し否定している」
「黒人被告人は実際の犯罪以上に重い罪で起訴される傾向がある。これは司法制度の問題だ」
「1年以上の実質的な追放は、彼の行為に対して十分重い処分だった」
しかし、これらの擁護論も、リーグの一貫性のない対応への批判を和らげるには至っていません。
今後、WNBAの選手たちがこの問題について声を上げることが予想されます。特に、元WNBA選手が被害者であったことを考えると、女子バスケ界からの反応は避けられないでしょう。
ポーターは確かに才能ある選手です。かつてロケッツで平均19.2得点、5.7アシストを記録し、将来のオールスター候補と目されていました。しかし、この事件によってキャリアに大きな傷がつきました。
今回の「実質的なお咎めなし」という処分が、彼にとって本当に「セカンドチャンス」となるのか、それとも「甘い処分」として批判され続けるのか。NBAの価値観と実際の行動の乖離は、今後も議論を呼び続けることでしょう。
リーグが本当に暴力を許さないのであれば、より厳格で一貫性のある処分基準を設けるべきではないでしょうか。才能と人格、どちらを重視するのか。NBAは難しい選択を迫られています。
引用:HOOPSRUMORS

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