8カ国、12チーム以上を渡り歩いた流浪のバスケットボール人生。11年間、一度もWNBAドラフトで指名されることがなかった選手が、ついにオールスターの舞台に立ちます。ゴールデンステート・バルキリーズのケイラ・ソーントン(29歳)の物語は、諦めない心が生んだ奇跡の証明です。
2024年12月、バルキリーズは拡張ドラフトの9番目でソーントンを指名。前年にニューヨーク・リバティで優勝を経験したばかりの彼女にとって、この移籍は決して望んだものではありませんでした。「正直、リバティで連覇を狙いたかった」とソーントンは当時の心境を振り返ります。
しかし、元リバティのGMだったオヘマー・ニャニンとの会話が転機となりました。バルキリーズが描くビジョンを聞き、コンフォートゾーンから飛び出す決意を固めたのです。その決断が、彼女の人生を劇的に変えることになるとは、誰も予想していませんでした。
「守備の職人」から「エースストライカー」へ!驚異的な数字が示す大変身
ソーントンのキャリアは常に「守備的役割プレーヤー」として定義されてきました。UTEP時代には2度のカンファレンスUSAオールディフェンシブチームに選出。「私はディフェンスが大好きな選手」と自認する彼女は、これまでエナジープレーヤーとして、時折オープンショットを決める程度の役割に甘んじていました。
しかし、バルキリーズでの数字を見れば、その変貌ぶりは一目瞭然です:
2024年(リバティ)→ 2025年(バルキリーズ)
- 平均出場時間:20.2分 → 30.1分
- 平均得点:5.5点 → 14.0点
- 平均リバウンド:2.6本 → 7.0本
- 使用率:12.6% → 22.7%
特に衝撃的なのは、6月27日のシカゴ・スカイ戦で記録したキャリアハイの29得点。バルキリーズでの22試合で4回の20得点以上を記録していますが、それ以前の274試合では、わずか5回しか20点を超えたことがありませんでした。
「これは彼女がスキルセットを見せる機会です」とナタリー・ナカセHCは語ります。「ニューヨークではブリアナ・スチュワートの後ろでプレーしていた。能力がなかったわけではない。今の出場時間とマインドセットが、選手の自信を押し上げているのです」
拡張チーム史上初の快挙!2003年以来22年ぶりの記録更新
7月6日、ソーントンはキャリア初となるオールスター選出を果たしました。これは単なる個人の栄誉ではありません。拡張チームから怪我による代替選手以外でオールスターに選ばれたのは、2003年以来実に22年ぶりの快挙なのです。
「この瞬間が来るとは思ってもいませんでした。本当に祝福です」とソーントンは感激を隠しません。
バルキリーズのジェス・スミス社長も興奮を抑えきれません。「彼女の選手としての旅路を見守り、このファンベースに受け入れられる姿を見るのは本当に楽しい。ソーントンを通じてバルキリーズが代表されることは素晴らしいことです」
実際、ソーントンが牽引するバルキリーズは、リーグ最下位と予想されていたにも関わらず、オールスター休暇前の時点で10勝12敗の9位。これは過去の拡張チーム、2008年のアトランタ・ドリーム(4勝)と2006年のシカゴ・スカイ(5勝)の合計勝利数(9勝)をすでに上回っています。
チームの強さの秘密は、リーグトップの守備力にあります:
- フィールドゴール成功率被:40.1%(リーグ1位)
- ディフェンシブレーティング:98.8(リーグ4位)
- ホーム成績:7勝4敗
「それが私たちのアイデンティティ。私たちそのものです」とソーントンは胸を張ります。チェイスセンター、通称「バルハラ」でのホームゲームでは、ファンの熱狂的な応援が選手たちを後押し。「信じられないくらい素晴らしい。バルハラが盛り上がると、本当にヤバいんです」
現在、プレーオフ圏内まであと1ゲーム差。WNBA史上初めて、拡張チーム初年度でプレーオフ進出を果たす可能性が現実味を帯びてきました。
7月8日のオールスタードラフトでは、ケイトリン・クラークがソーントンを指名。11年間で一度もドラフト指名されなかった選手が、わずか7カ月で2度もドラフトされるという皮肉な展開となりました。
土曜日の夜、ソーントンは15枚目のプロユニフォームに袖を通します。今度はパスポートを用意する必要も、仕事を失う心配もありません。
「初めてのオールスターだから、すべてを吸収して、世界最高の選手たちに囲まれて楽しみたい」
8カ国を巡った流浪の旅は、ついにゴールデンゲートブリッジのたもとで、最高の形で実を結びました。29歳の「遅咲き」は、夢を諦めないすべての選手たちに希望を与える、生きた証明となったのです。
引用:CBSSPORTS

WNBA FAN BLOG運営者/バスケットボールジャーナリスト
WNBA・NBAをこよなく愛し、バスケットボール歴30年以上。特にWNBAの魅力を日本に広げるため、2025年5月に WNBA FAN BLOG をスタートしました。試合結果や選手情報だけでなく、独自の視点による戦術分析や選手インタビュー、海外ニュースの速報翻訳まで幅広くカバーしています。
現在、日本国内では数少ないWNBA専門メディアとして、最新ニュースをどこよりも速く正確にお届けすることをミッションにしています。
得意分野
試合分析・戦術解説
選手のデータ分析(EFF、PER など)
海外ニュース速報翻訳(英語 → 日本語)
サイト目標
日本最大の WNBA 情報ポータルサイト構築
日本のバスケットボールファンコミュニティ作り
関連 SNS アカウント
X(Twitter):@WNBAJAPAN
フォローしてWNBA の最新情報をキャッチしてください!