2025年のWNBAシーズンも中盤戦に差し掛かり、MVP争いが白熱する中で大きな転機が訪れています。ここまで圧倒的なパフォーマンスで首位を独走していたミネソタ・リンクスのナフィーサ・コリアーが負傷により戦線離脱。この状況が、シーズン最高の個人賞レースに予想外の展開をもたらす可能性が出てきました。個人的には、このタイミングでの負傷は本当に残念でなりませんが、同時に他の有力候補にとっては千載一遇のチャンスとも言えます。
負傷前のコリアーが見せた歴史的なオールラウンドぶり
コリアーの今季のスタッツは、まさに歴史的と呼ぶにふさわしいものでした。平均得点20.4点、リバウンド9.7本、アシスト3.4本、スティール2.3本、ブロック1.4本という5つのカテゴリーすべてでチームをリードする数字を残しています。特筆すべきは、フィールドゴール成功率が49.8%という高確率を維持しながら、3ポイント成功率も38.5%と外角からの脅威も兼ね備えている点です。
リンクスは現在19勝8敗でウェスタン・カンファレンス2位につけており、コリアーの貢献度は計り知れません。直近10試合では7勝3敗と好調を維持していましたが、彼女の不在により、残りのシーズンでチームがどこまでこの勢いを保てるかが大きな課題となっています。守備面でも、対戦相手のエースを抑える役割を担っていただけに、チーム全体の戦術変更を余儀なくされるでしょう。
過去のMVP争いから見る「欠場」という致命的要素
WNBAの歴史を振り返ると、MVP受賞には「可用性(アベイラビリティ)」が極めて重要な要素となってきました。過去10年間のMVP受賞者を見ても、シーズンの80%以上の試合に出場した選手がほぼ全員を占めています。2019年のエレナ・デレ・ダンが32試合中31試合出場でMVPを獲得したケースや、2022年のエイジャ・ウィルソンが36試合フル出場での受賞など、「コートに立ち続けること」がいかに重要かがわかります。
コリアーの負傷期間が仮に4週間程度だとすると、約8〜10試合の欠場となり、全40試合のシーズンで考えると25%の欠場率となります。これは過去のMVP受賞者の基準から見ると、かなり厳しい数字です。さらに、復帰後すぐに100%のパフォーマンスを発揮できるかという懸念もあり、シーズン終盤での巻き返しには相当な努力が必要となるでしょう。
一方で、2018年のブレアナ・スチュワートのように、圧倒的な成績を残していれば多少の欠場があってもMVPを獲得した例もあります。コリアーがこれまでに築いた貯金がどこまで評価されるかが、今後の焦点となります。
エイジャ・ウィルソンとアリッサ・トーマスが見せる追い上げの可能性
この状況で俄然注目を集めているのが、ラスベガス・エーシズのエイジャ・ウィルソンです。2度のMVP受賞経験を持つウィルソンは、今季も平均26.9点、11.9リバウンド、ブロック2.6本という驚異的な数字を残しています。特に得点力では現在リーグトップを走っており、チームの勝利への貢献度も申し分ありません。エーシズは22勝5敗でリーグ最高勝率を誇り、ウィルソンの存在感は圧倒的です。
もう一人の有力候補が、コネチカット・サンのアリッサ・トーマスです。平均14.8点、9.6リバウンド、8.8アシストというトリプルダブルに迫る数字は、まさに「ポイントフォワード」の理想形を体現しています。サンも20勝7敗と好調で、トーマスのオールラウンドな活躍がチームの躍進を支えています。彼女の場合、派手さはないものの、試合をコントロールする能力と勝利への貢献度という点では、他の候補者に引けを取りません。
さらに、ダークホースとして浮上しているのがニューヨーク・リバティのブレアナ・スチュワートです。ディフェンディングチャンピオンのエースとして、平均19.7点、8.4リバウンドを記録。チームも21勝6敗と首位争いを演じており、プレーオフでの活躍次第では一気に評価を上げる可能性があります。
今後の展望:投票者の価値観が問われる選考
MVP選考において最も興味深いのは、「最優秀選手」と「最も価値ある選手」の定義の違いです。純粋な個人成績ではウィルソンが頭一つ抜けていますが、チームへの影響力という点ではコリアーやトーマスも負けていません。投票者がどちらの価値観を重視するかによって、結果は大きく変わってくるでしょう。
また、残りのシーズンでの直接対決も重要な要素となります。8月末にはエーシズ対リンクス、9月上旬にはサン対エーシズの対戦が予定されており、これらの試合でのパフォーマンスが最終的な印象を大きく左右することは間違いありません。特にコリアーが復帰できた場合、これらの大一番でどれだけインパクトを残せるかが鍵となります。
個人的な予想としては、コリアーの欠場期間が長引けば、ウィルソンが3度目のMVPに最も近い位置にいると考えます。しかし、トーマスのようなオールラウンダーへの評価が高まっている現在のトレンドを考えると、最後まで予断を許さない展開になりそうです。
残りシーズンの重要な直接対決とMVP選考への影響
MVP争いの行方を左右する重要な試合が目白押しです。特に注目すべきは以下の直接対決です:
- 8月30日:ラスベガス・エーシズ vs ミネソタ・リンクス(コリアー復帰の可能性)
- 9月5日:コネチカット・サン vs ラスベガス・エーシズ(トーマス対ウィルソン)
- 9月12日:ニューヨーク・リバティ vs ミネソタ・リンクス(東西カンファレンス上位対決)
これらの試合での個人成績はもちろん、勝敗そのものがMVP投票に大きな影響を与えることは間違いありません。特に全国放送される試合でのパフォーマンスは、投票者の印象に強く残る傾向があります。過去のデータを見ても、シーズン終盤の大一番で勝利に貢献した選手が、接戦のMVP争いを制することが多いのです。
また、プレーオフ進出争いが激化する中で、チームの順位がどう変動するかも重要な要素です。仮にリンクスがコリアー不在で大きく順位を落とした場合、彼女のMVP獲得は極めて困難になるでしょう。逆に、チームが踏ん張れば「不在でも影響力を示した」という評価につながる可能性もあります。
今シーズンのMVP争いは、まさに歴史に残る接戦となりそうです。コリアーの復帰時期、ウィルソンの得点ペース、トーマスの安定感、そしてスチュワートの勝負強さ。どの要素が最終的に評価されるのか、最後まで目が離せません。ファンとしては、このハイレベルな競争を純粋に楽しみたいところです。皆さんは誰がMVPにふさわしいと思いますか?
引用:sports.yahoo

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