2025年のWNBAは歴史的な転換点を迎えています。リーグの急速な成長と共に、選手たちの労使交渉(CBA)への要求も高まり、7月のオールスターゲームで選手たちが着用した「Pay Us What You Owe Us」のTシャツが大きな話題となりました。アスレチックのベン・ピックマン記者が指摘するように、過去の財務損失はもはや交渉において重要ではないという議論が注目を集めています。
急成長するWNBAビジネスの実態
WNBAは今、驚異的な成長を遂げています。2024年にはケイトリン・クラークやエンジェル・リースといった若いスーパースターの活躍により、観客動員数と視聴率が史上最高を記録しました。さらに注目すべきは、フランチャイズの価値が急騰していることです。
ニューヨーク・リバティは5〜7年前にわずか500万〜1000万ドルで売却されましたが、最近では少数株式を4億5000万ドルの評価額で売却しています。これは約45倍もの価値上昇を意味します。新規参入チームのゴールデンステート・ヴァルキリーズは5000万ドルの参入費を支払いましたが、今後参入予定の3チームはそれぞれ2億5000万ドルを支払う予定です。
2024年に締結された新しい放映権契約は11年間で22億ドル(年間2億ドル)という巨額なものです。これによりリーグの収益構造は劇的に改善され、理論上は一夜にして黒字化する可能性すら出てきました。
過去の赤字議論がなぜ無意味なのか
ピックマン記者は、WNBAの過去の財務状況を持ち出すことの無意味さを鋭く指摘しています。「正直なところ、WNBAがどれだけ利益を上げているか、どれだけの収益があるかは誰も正確には知らない」と彼は述べています。
実際、多くのスポーツチームは運営経費の関係で単年度では利益を出していません。NBAですら2011年のCBA交渉時には「年間3億ドルの損失があり、30チーム中22チームが赤字」と主張していました。2017年にはESPNが14チームの赤字を示す機密記録を入手しています。
重要なのは、ビジネスが明らかに好調であることです。記録的な成長、新規参入を希望する投資家の増加、フランチャイズ価値の急騰など、すべての指標が上向いています。「過去にWNBAが何であったかは、現在の状況にとって無関係」とピックマンは結論づけています。
選手たちが求める真の公平性
選手たちが求めているのは、NBA選手と同じ給与ではありません。彼女たちが要求しているのは、収益に対する公正な分配比率です。現在、WNBA選手は収益の約9.3%しか受け取っていませんが、NBA選手は49〜51%を受け取っています。
ロサンゼルス・スパークスのケルシー・プラムは「私たちは男子選手と同じ給与を求めているわけではない。収益の同じ割合を求めているだけです」と明確に述べています。仮に選手たちが収益の40%を受け取ったとしても、新しい放映権契約による利益増加分のごく一部に過ぎません。
現在の最高年俸は約25万ドルですが、これは2020年の11万9000ドルから大幅に増加しています。しかし、リーグの成長速度を考えると、この増加率はまだ不十分だと選手たちは主張しています。
今後の展望と労使対立の可能性
10月31日のCBA期限まで時間は限られています。選手会のテリ・かテリー・ジャクソン事務局長は、適切な合意に達するまで時間をかける意向を示し、ワークストップ(ストライキ)の可能性も排除していません。
選手たちの交渉力は以前より格段に強くなっています。UnrivaledやAthletes Unlimitedなどの新リーグが競争力のある給与を提供し、若手選手はNIL契約で既に相当な収入を得ています。これにより、必要であればストライキに耐える財政的基盤ができています。
WNBAコミッショナーのキャシー・エンゲルベルトは「変革的な」合意を目指すと述べていますが、両者の間にはまだ大きな隔たりがあります。選手たちは収益分配、チャーター便の恒久化、ロースター拡大、家族支援の充実などを求めています。
WNBAは2030年までに18チームに拡大予定であり、リーグの将来は明るいです。しかし、その成功の果実を誰がどのように分配するかという根本的な問題に、今まさに直面しています。過去の赤字を理由に選手への投資を渋ることは、急成長するリーグの可能性を制限することになりかねません。
引用:clutchpoints

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