シーズン終盤を迎え、前代未聞の接戦となっているMVP争い
2025年のWNBA MVPレースは、近年まれに見る大混戦となっています。レギュラーシーズン残り2週間という段階で、明確な本命が存在しない状況は、リーグ全体のレベルアップを象徴する現象といえるでしょう。
今シーズンの特徴は、ミネソタ・リンクスを除いて、どのチームも絶対的な支配力を発揮できていないことです。ラスベガス・エーシズやニューヨーク・リバティといった強豪チームでさえ、順位表の上下を繰り返す不安定なシーズンを送っています。さらに、主力選手の負傷離脱も相次ぎ、MVP候補筆頭だったナフィーサ・コリアーも長期離脱を余儀なくされました。
この状況下で、複数の選手が驚異的なパフォーマンスを見せており、誰が受賞しても不思議ではない、まさに「ハイレベルな争い」となっています。最終的に受賞を逃した選手も、決して「不当な扱い」を受けたわけではないということを、ファンの皆様には理解していただきたいです。
4人の有力候補者の現状と課題
ナフィーサ・コリアー(ミネソタ・リンクス)のケースは最も複雑です。シーズン序盤から圧倒的なパフォーマンスでMVP最有力候補として君臨してきました。現在もリーグトップの平均23.9得点、フィールドゴール成功数でも8.7本でリーグ首位を記録しています。30得点以上を6試合で記録し、復帰初戦でも32得点という驚異的な数字を残しました。
しかし、8月2日のエーシズ戦で負った足首の負傷により7試合を欠場したことが、MVP選考に影響を与える可能性があります。興味深いのは、彼女不在の間もリンクスが5勝2敗と好成績を収めたことです。チームメイトのコートニー・ウィリアムズは「フィーがいない間、18本も20本もシュートを打たなければならなくて疲れました。10本か12本に戻れて嬉しいです」と冗談交じりに語っていますが、これはチームの層の厚さを示す一方で、コリアーの必要不可欠性に疑問を投げかける要因にもなっています。
アリーシャ・グレイ(アトランタ・ドリーム)は、チームの飛躍的な成長の立役者です。過去2シーズンはプレーオフに進出しながら勝利を挙げられなかったドリームが、今季は優勝候補の一角に名を連ねるまでに成長しました。グレイは平均18.8得点(リーグ7位)を記録し、5人がダブルダブル平均得点を記録するバランスの良いチームの中で、攻撃の要として活躍しています。
カール・スメスコヘッドコーチは「彼女はリーグでトップ4、5に入る選手であり、MVP候補に名前が挙がるのは当然です」と評価しています。ただし、グレイの課題は、他の候補者と比較して主要スタッツでの上位ランクインが少ないことです。得点以外の主要カテゴリーでトップ10に入っていない点が、投票時にどう評価されるかが鍵となります。
アリッサ・トーマス(フェニックス・マーキュリー)は、コネチカットで11シーズンを過ごした後、フェニックスでの初年度に素晴らしい活躍を見せています。トリプルダブル7回(リーグ最多)、ダブルダブル20回(エンジェル・リースと並んでリーグ最多タイ)という数字が彼女の万能性を物語っています。
最も注目すべきは、フォワードでありながらリーグのアシスト王に君臨していることです。平均9.0リバウンド(リーグ3位)も記録しており、従来のポジション概念を覆すプレースタイルは、対戦相手にとって守りにくい存在となっています。ネイト・ティベッツヘッドコーチは「彼女がMVPを獲得するためには、チームが勝ち続ける必要がある」と語り、現在23勝14敗で4位のマーキュリーの更なる躍進が求められています。
エイジャ・ウィルソンの4度目受賞を阻む唯一の障壁
エイジャ・ウィルソン(ラスベガス・エーシズ)については、実力面での議論の余地はありません。ベッキー・ハモンヘッドコーチは「彼女は毎試合、観客を立ち上がらせるような圧倒的なプレーを見せる。彼女のブロックは男子のポスタライズドダンクに匹敵するインパクトがある」と絶賛しています。
ウィルソンは2020年、2022年、2024年(満票)でMVPを受賞し、2022年と2023年には最優秀守備選手賞も獲得。2023年にはファイナルMVPも手にしています。今季もエーシズの終盤の巻き返しの原動力となっており、実力的には文句なしのMVP候補です。
唯一の懸念材料は「投票者の疲労感」です。1990年代のマイケル・ジョーダンが、1993年にチャールズ・バークレー、1997年にカール・マローンにMVPを譲ったのと同じ現象が起きる可能性があります。ジョーダンはその両年ともNBAファイナルを制し、ファイナルMVPを獲得しました。もしウィルソンが今年MVPを逃しても、ジョーダンのように「個人的な動機」として、プレーオフでの圧倒的なパフォーマンスにつなげる可能性は十分にあります。
今年のMVPレースは、単なる個人賞の争いを超えて、WNBAの競争力の高さと選手層の厚さを示す象徴的な出来事となっています。誰が受賞しても歴史に残る価値があり、同時に受賞を逃した選手たちも等しく称賛に値するシーズンを送っています。
引用: sports.yahoo

WNBA FAN BLOG運営者/バスケットボールジャーナリスト
WNBA・NBAをこよなく愛し、バスケットボール歴30年以上。特にWNBAの魅力を日本に広げるため、2025年5月に WNBA FAN BLOG をスタートしました。試合結果や選手情報だけでなく、独自の視点による戦術分析や選手インタビュー、海外ニュースの速報翻訳まで幅広くカバーしています。
現在、日本国内では数少ないWNBA専門メディアとして、最新ニュースをどこよりも速く正確にお届けすることをミッションにしています。
得意分野
試合分析・戦術解説
選手のデータ分析(EFF、PER など)
海外ニュース速報翻訳(英語 → 日本語)
サイト目標
日本最大の WNBA 情報ポータルサイト構築
日本のバスケットボールファンコミュニティ作り
関連 SNS アカウント
X(Twitter):@WNBAJAPAN
フォローしてWNBA の最新情報をキャッチしてください!