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ヤニス・アデトクンボのニックス行き構想が浮上―バックス王朝崩壊の序章か

10月7日、ESPNのシャムズ・シャラニアが衝撃的なレポートを発表しました。ミルウォーキー・バックスのスーパースター、ヤニス・アデトクンボが今夏、キャリアで初めてチーム移籍を真剣に検討し、その第一希望がニューヨーク・ニックスだったというのです。

両チームは8月にトレード協議を行いましたが、交渉は進展せず、アデトクンボは少なくとも今シーズンはバックスでプレーすることになりました。しかし、この報道は単なる噂話以上の意味を持っています。2度のMVP受賞者の心が揺れ動いている事実が明らかになった今、NBA全体の勢力図が大きく変わる可能性が出てきたのです。

なぜニックスだったのか

シャラニアの報道によれば、アデトクンボの代理人であるアレックス・サラツィスは5月のNBAドラフトコンバインの頃から複数チームからの熱烈な関心を受け、外部の最適なフィット先について真剣なデューデリジェンスを行いました。その結果、浮上したのがニックスだったといいます。

インサイダーのイアン・ベグリーは「ニックスで優勝するというアイデアがアデトクンボを惹きつけている」と追加報道しています。ニックスは昨シーズン、イースタン・カンファレンス・ファイナルに進出。カール=アンソニー・タウンズとミカル・ブリッジスを獲得し、さらに強力なコンテンダーへと進化しました。

アデトクンボにとって、ジェイレン・ブランソンという確立されたポイントガードと組み、ニューヨークという大舞台で2つ目のチャンピオンリングを目指せる環境は魅力的に映ったのでしょう。

トレードが成立しなかった理由

8月の交渉が進展しなかった背景には、複雑な事情がありました。

まず、バックスは本気でアデトクンボを手放す気がなかったようです。シャラニアの報道では「バックスはニックスからの電話を渋々受けた」とされ、ミルウォーキー側は「ニックスの提示が十分に強力ではなかった」と考えていたとのことです。

一方、ニックス側は全く異なる見方をしていました。複数週間に及ぶプロセスを経て、ニックスは「バックスが本気でトレードを検討する意思が最初からなかった」と結論づけたといいます。いわば、バックスにとっては「独占的交渉期間」のようなもので、アデトクンボに対して「真剣に検討した」というアピールに過ぎなかったのかもしれません。

もう一つの大きな障壁が、ニックスの手札不足でした。昨オフシーズン、ニックスはタウンズとブリッジス獲得のために合計6つのファーストラウンド指名権、1つのスワップ権、そしてジュリアス・ランドルとドンテ・ディビンチェンゾという重要な選手を放出しました。

現在、ニックスが提供できる指名権は実質的に価値のない2026年ウィザーズのファースト(1〜8位プロテクト付き)のみ。ウィザーズが9位以下で指名する可能性は低く、この指名権は2つのセカンドラウンド指名権に変わる可能性が高いのです。

来夏が真の勝負

興味深いことに、ニックスは完全にドアを閉ざしたわけではありません。2026年夏になれば、彼らの2033年ファースト指名権がトレード可能になります。この時点でアデトクンボは38歳、ブランソンは36歳。つまり、その指名権は将来的に非常に価値が高くなる可能性があるのです。

バックスがデイミアン・リラードを獲得した際も、似たような戦略が取られました。バックスは2029年のアンプロテクト指名権と2030年・2032年のスワップ権という「遠い未来の資産」を提供し、さらにジュルー・ホリデーという高レベルの選手を加えることでトレードを成立させました。

ニックスも同様のアプローチを取る可能性があります。2033年指名権に加え、タウンズ、ブリッジス、OGアヌノビーといったベテランを提示し、バックスがそれらの選手をさらに他チームに転売して資産を集めるというシナリオです。

ただし、問題はこれらのベテランの市場価値です。ブリッジスは2026-27シーズンに3300万ドル以上、アヌノビーは4200万ドル以上、タウンズは2027-28シーズンに6100万ドル超の高額契約を抱えています。さらに、それぞれに欠点があります。タウンズはディフェンス、アヌノビーは耐久性、ブリッジスは過去数年の明らかな衰えです。

ブランソンをトレードに含めるのか?

最も議論を呼ぶ質問は、ニックスがブランソンをトレードパッケージに含めるかどうかです。

これは単純な損得勘定の問題ではありません。ブランソンはニックスのフロントオフィス責任者レオン・ローズの名付け親であり、特別な関係にあります。また、ブランソンは今世紀のニックスで最も人気のある選手であり、ファンにとってトレードは感情的に受け入れがたいでしょう。

バックスは間違いなくブランソンを要求するはずです。ニックスは間違いなく拒否するでしょう。そこから真の睨み合いが始まります。

なぜなら、ヒューストン・ロケッツやサンアントニオ・スパーズといった他の有力候補は、山のようなトレード可能な指名権と、安いルーキー契約の才能ある若手選手を大量に抱えているからです。純粋なオファーの質で勝負すれば、おそらくニックスは勝てません。

となると、アデトクンボ本人がどこまでニックス行きを強く望むかが鍵になります。

レイカーズという「脅し」

アデトクンボには、アンソニー・デイビスが使った戦略を真似る選択肢があります。デイビスは2019年、ボストン・セルティックスが最高のオファーを提示したにもかかわらず、「そこでプレーしたくない」と明確にすることで、最終的にロサンゼルス・レイカーズへの移籍を実現させました。

アデトクンボの場合、2027年夏にフリーエージェントになる予定ですが、その時点でニックスにマックス契約を結ぶキャップスペースはありません。しかし、レイカーズにはあるのです。

レイカーズにはルカ・ドンチッチがいます。優勝を目指すなら、ドンチッチとのパートナーシップは理にかなっています。大きな市場を望むなら、ロサンゼルスも該当します。これがアデトクンボの交渉カードです。

他チームに対して「レイカーズに行く前の腰掛けにされるだけだ」と警告することで、トレードに手を出すチームを減らすことができます。実際、レイカーズは延長保証なしでドンチッチをトレードで獲得したばかりで、同じことをする可能性は十分にあります。

さらに、ニューヨークという都市にこだわるなら、ブルックリン・ネッツも2027年にマックススペースを持つ見込みです。ウォリアーズやクリッパーズも同様です。選択肢は豊富なのです。

バックスの正念場

バックスにとって、今シーズンは極めて重要です。3年連続でファーストラウンド敗退に終わり、リラードがアキレス腱断裂で今シーズン全休が決まった今、チームは岐路に立たされています。

バックスはリラードを伸ばして放出し、インディアナ・ペイサーズからマイルズ・ターナーを獲得するという大胆な動きに出ました。しかし、これが優勝争いに十分かどうかは疑問です。

バックスは現在、2031年か2032年のファーストラウンド指名権をトレードできます。この指名権は、アデトクンボが残っても出て行っても、非常に価値があるでしょう。しかし、この指名権を使って真の優勝コンテンダーになる道を探るべきか、それとも将来の再建に備えて温存すべきか。難しい決断を迫られています。

シャラニアの報道は「アデトクンボがミルウォーキーの真の優勝争い能力に懐疑的である」ことを明確にしました。バックスがこのスーパースターを引き留める希望は、以前よりも薄れているのです。

しかし、まだ完全に消えたわけではありません。イースタン・カンファレンスは今季、セルティックスとペイサーズが調子を落としているため、バックスには予想を上回る成績を残すチャンスがあります。

ボールは今、バックスのコートにあります。アデトクンボはニックスを望んでいるかもしれませんが、今はまだバックスの選手です。そして、ミルウォーキーには、フランチャイズの象徴がチームを離れないようにするチャンスがまだ残されているのです。

結論

この報道が示すのは、単なる噂話ではありません。NBAのスーパースター市場は常に流動的であり、選手の意向が最終的な結果を大きく左右する時代になったということです。

アデトクンボのニックス志向は明確になりました。しかし、実現するかどうかは、今シーズンのバックスの成績、ニックスが来夏どれだけ魅力的なパッケージを組めるか、そしてアデトクンボ本人がどこまで強硬手段に出る覚悟があるかにかかっています。

2025-26シーズンは、バックスにとって「優勝か破滅か」の重要な年になります。そして、NBA全体がその行方を注視しているのです。


引用: cbssports

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