ロサンゼルス・レイカーズのセンター、ジャクソン・ヘイズが、チームメイトのルカ・ドンチッチと国際舞台でもプレーするため、スロベニア国籍の取得を目指していることが明らかになりました。この驚きの決断の背景には、NBAでのキャリアを左右する重要な戦略が隠されています。
ドンチッチとの絆を国際舞台へ
プレシーズンゲーム後、ヘイズは「彼は最高の仲間だよ。来年の夏に一緒にプレーできるよう、今スロベニアのパスポート取得に取り組んでいるんだ」と語りました。この発言は、単なる思いつきではありません。実は、ドンチッチがまだダラス・マーベリックスに所属していた時期から、両選手の代理人であるビル・ダフィーがこの計画を提案していたのです。
2024-25シーズン、ヘイズはレギュラーシーズン56試合に出場し、平均6.8得点、4.8リバウンド、1.0アシストを記録しました。特筆すべきは、フィールドゴール成功率72.2パーセントという驚異的な数字です。これはキャリアハイの記録であり、ドンチッチとのピック&ロールで多くのイージーバスケットを量産した結果と言えるでしょう。
ドンチッチが2月にレイカーズにトレードされて以降、ヘイズはアンソニー・デイビスの不在を埋める形でスターターとして35試合に先発出場しました。2人のコンビネーションは、2月から3月にかけて特に機能し、ヘイズにとってはキャリア最高のパフォーマンスを発揮する期間となりました。
スロベニアの帰化選手戦略
スロベニアバスケットボール連盟は、センターポジションの強化を長期的な課題として認識しています。連盟の広報担当者は「センターポジションで新たな帰化選手を獲得する可能性を検討しています。今後数年間のチームの安定性を確保するため、長期的に選手を確保することを目指しています」と述べています。
スロベニアには帰化選手を活用してきた実績があります。2017年のユーロバスケットでは、アンソニー・ランドルフが帰化選手として加わり、当時18歳だったドンチッチとともに優勝を果たしました。その後、マイク・トビーが2021年の東京オリンピック予選に向けて帰化し、さらに2024年にはジョシュ・ニボがスロベニアパスポートを取得しました。
FIBA規定では、16歳以降に取得したパスポートを持つ選手は「帰化選手」として扱われ、各国代表は1試合につき1人の帰化選手のみをロスターに登録できます。この規定により、カメルーン出身のジョエル・エンビードが2024年パリオリンピックでアメリカ代表としてプレーすることも可能になりました。
キャリア戦略としての国籍取得
ヘイズのこの決断は、純粋にバスケットボールへの情熱だけではなく、賢明なキャリア戦略でもあります。現在25歳のヘイズは、今シーズン終了後にアンリストリクテッド・フリーエージェントとなります。一方、ドンチッチは2029年まで契約しており、2028-29シーズンにはプレイヤーオプションも持っています。
スロベニア代表でドンチッチとの絆を深めることで、レイカーズとの契約延長の可能性が高まります。レイカーズは今オフシーズンにデアンドレ・エイトンを獲得し、センターポジションの層を厚くしました。ヘイズにとって、ドンチッチとの関係性を強化することは、チームに不可欠な存在として認識されるための重要な要素となるでしょう。
さらに長期的な視点では、スロベニア国籍の取得により欧州連合のパスポートを手に入れることができます。スペインのリーガACBをはじめ、多くのヨーロッパリーグでは非EU選手の登録人数に制限があります。スロベニア国籍を持つことで、将来NBA以外の選択肢が必要になった際、ヨーロッパでのプレー機会が大幅に広がるのです。
USA代表への不満も背景に
ヘイズは、USAバスケットボールの選考プロセスに対する不満も口にしています。「自分の国を代表したいが、オープントライアウトがないんだ。現実はそういうものさ」と語るヘイズ。アメリカ代表は招待制のトレーニングキャンプのみで、控え選手には国際大会でプレーする機会がほとんどありません。
一方、スロベニア代表であれば、ヘイズは主力選手として国際経験を積むことができます。次の主要な国際大会は2027年のFIBAワールドカップ(カタール開催)と、2028年のロサンゼルスオリンピックです。特に2028年のオリンピックは、レイカーズの本拠地ロサンゼルスで開催されるため、ヘイズにとって特別な意味を持つでしょう。
レイカーズのヘッドコーチ、JJ・レディックもヘイズの決断を支持しています。「自分自身の経験から言えば、国際大会での経験は非常に価値がある。偉大な選手たちの周りで学ぶことができるからね」とレディックは語りました。
プレーオフでの課題
ただし、ヘイズには克服すべき課題もあります。2024-25シーズンのプレーオフ第1ラウンドでは、ミネソタ・ティンバーウルブズとの対戦で苦戦を強いられました。平均出場時間はわずか7.8分に減少し、1.8得点、2.0リバウンド、0.3ブロックという物足りない成績に終わりました。特にゲーム5では健康であるにもかかわらず出場機会がなく、その試合でルディ・ゴベアが27得点24リバウンドの大活躍を見せたことで、ヘイズのディフェンス力に疑問符がつきました。
身長213センチを誇るヘイズですが、体重は約99キロと細身で、インサイドでのフィジカルな戦いやポジショニングディフェンスに課題を抱えています。また、試合ごとにエネルギーと努力のレベルにムラがあることも指摘されています。
今後の展望
スロベニアバスケットボール連盟は、まだ具体的な選手名については公表していませんが、センターポジションでの帰化選手獲得を積極的に進めていることを認めています。通常、スロベニアの国籍取得には10年間の継続的な居住が必要ですが、スポーツ、文化、ビジネス目的の特別申請による取得方法も存在します。
ヘイズが実際にスロベニア国籍を取得できるかどうかは、連盟の決定と各種手続きの進行状況にかかっています。しかし、過去の事例を見る限り、スロベニアが望む選手であれば、帰化のハードルはそれほど高くないことが分かります。
ドンチッチは2025年夏のユーロバスケットで平均34.7得点を記録し、1989年のニコス・ガリス以来となる高得点パフォーマンスを見せました。このレベルのスーパースターと継続的にプレーできることは、ヘイズにとって技術面でも精神面でも大きな成長の機会となるでしょう。
ヘイズのこの決断は、NBAと国際バスケットボールの境界がますます曖昧になっていることを示しています。選手たちは、キャリアを最大化するために、従来の枠組みにとらわれない選択をするようになってきているのです。
引用: yardbarker

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