2025年シーズンを終えたWNBAは今、リーグの未来を左右する重要な局面を迎えています。10月31日に現行の労使協定(CBA)が期限切れとなる中、NBAコミッショナーのアダム・シルバーが選手たちの報酬について「大幅な増額」を約束しました。この発言は、長年給与面での不満を抱えてきたWNBA選手たちにとって、一筋の光明となるのでしょうか。
「レベニューシェア」は正しい指標なのか
WNBA選手たちが求めているのは、単なる給与アップだけではありません。彼女たちはリーグの収益分配率の大幅な改善を要求しています。現状、WNBA選手が受け取る収益分配率はわずか9%です。これに対し、NBA選手はリーグ収益の約50%を受け取っています。
この数字だけを見れば不公平に感じられますが、シルバーは「収益分配率という指標自体が適切ではない」と主張しています。NBAとWNBAでは収益規模が大きく異なるため、パーセンテージではなく絶対額で評価すべきだというのが彼の論点です。実際、NBAの年間収益は100億ドルを超える一方、WNBAは数億ドル規模にとどまっています。
しかし選手たちの視点は異なります。リーグの急成長を自分たちが牽引してきたという自負があり、その成果に見合った報酬を求めているのです。2024年シーズンは視聴率が大幅に向上し、観客動員数も過去最高を記録しました。ケイトリン・クラークやエンジェル・リースといった新星の活躍により、WNBAへの注目度は飛躍的に高まっています。
給与だけではない、待遇改善への強い要求
今回の交渉で選手たちが求めているのは給与アップだけではありません。チャーター機の全チーム保証継続は最優先事項の一つです。2023年シーズンまで、多くのチームは商業便での移動を余儀なくされ、選手たちは厳しい移動スケジュールに苦しんできました。ようやくチャーター機が導入されましたが、これを恒久的な制度として確立したいというのが選手たちの願いです。
さらに、ロースターサイズの拡大も重要な議題となっています。現在、各チームの最大登録選手数はわずか12名です。この制限により、毎年ドラフトで指名された有望な新人の多くが、シーズン開幕前に解雇される事態が続いています。トップピック以外の選手にとって、WNBAでキャリアを築くのは極めて困難な状況なのです。
この問題の深刻さは、2024年シーズンのインディアナ・フィーバーで浮き彫りになりました。フィーバーは5人の選手がシーズン中に長期離脱を強いられ、試合ごとに十分な選手を確保するのに苦労しました。ロースターに余裕がないため、怪我人が出ると即座にチーム運営が行き詰まるのです。
審判の質についても、選手やコーチから厳しい批判が上がっています。今シーズンは判定の一貫性の欠如が問題視され、それが過度にフィジカルなプレーを助長しているとの指摘もありました。プロリーグとして高い水準の審判技術が求められています。
選手たちの声は届くのか
選手たちは今シーズンを通じて、自分たちの要求を明確に示してきました。オールスターゲーム前のウォームアップでは、「Pay Us What You Owe Us(私たちに正当な報酬を)」と書かれたTシャツを着用してアピールしました。
さらに印象的だったのは、ミネソタ・リンクスのスター選手ナフィーサ・コリアーの発言です。彼女はシーズン終了後、WNBAコミッショナーのキャシー・エンゲルバートを名指しで批判し、「世界最高のファンがいるのに、世界最悪のリーダーシップしかない」と述べました。これはリーグのトップに対する異例の強い批判でした。
この発言を受けて、エンゲルバートの退任が近いのではないかという憶測も流れましたが、WNBA側は「そのような報道は全くの虚偽だ」と否定しています。とはいえ、シルバー自身が「エンゲルバートと選手たちの間には関係性の問題がある」と認めており、CBA交渉以前に解決すべき課題があることは明らかです。
交渉の行方とリーグの未来
NBAはWNBAの株式の42%を保有しており、シルバーもこの交渉に直接関与しています。彼が「大幅な増額」を約束したことは、交渉が前進する可能性を示唆していますが、具体的な数字はまだ明らかになっていません。
もし10月31日までに新しいCBAが合意に至らなければ、ロックアウトの可能性も浮上します。これは選手にとってもリーグにとっても望ましくない事態です。特に、ようやく盛り上がりを見せ始めたWNBAの勢いが失速するリスクがあります。
選手たちが求めているのは、リーグの成長に見合った待遇です。視聴率の向上、観客動員の増加、スポンサー収入の拡大といった成果を自分たちが生み出してきたという自信があるからこそ、強気の交渉姿勢を貫いているのです。
今後数週間の交渉結果は、WNBAが真にプロフェッショナルなリーグとして次のステージに進めるかどうかの試金石となるでしょう。選手たちの声が反映された新しいCBAが締結されれば、リーグはさらなる成長を遂げることができるはずです。逆に、選手たちの要求が十分に満たされなければ、労使関係の悪化がリーグの発展を阻害する可能性もあります。
アダム・シルバーの「大幅な増額」という言葉が、どれほどの実質的な改善をもたらすのか。10月31日の期限に向けて、WNBAの未来を決める重要な交渉が続いています。
引用: cbssports

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