NBAファイナルMVPの真価が問われるシーズンが始まっています。2024年のチャンピオンリングを手にしたボストン・セルティクスは、ジェイソン・テイタムのアキレス腱断裂という予期せぬ事態に直面していますが、ジェイレン・ブラウンはこの逆境を自身の飛躍の機会に変えています。11月6日のワシントン・ウィザーズ戦で、ブラウンはセルティクスの長い歴史の中で誰も成し遂げたことのない記録を樹立しました。
効率性の極致──25分間の完璧なパフォーマンス
136-107という大差でウィザーズを下したこの試合で、ブラウンは35得点、5リバウンド、5アシストという数字を記録しました。しかし、真に驚くべきは、これをわずか25分のプレイタイムで達成したという事実です。
セルティクスの歴史を振り返れば、ビル・ラッセル、ラリー・バード、ポール・ピアース、ケビン・ガーネットといった殿堂入り選手たちが名を連ねています。それでもなお、30分未満で35得点、5リバウンド、5アシストという数字を記録した選手は、ブラウンが初めてなのです。
この試合でブラウンは21本のフィールドゴールのうち13本を決め、62%という高い成功率を記録しました。3ポイントシュートも4本中2本を決め、さらに1スティールも記録しています。相手が1勝7敗のウィザーズだったとはいえ、この効率性は別格です。第4クォーターにはベンチに下がり、若手選手たちに出場機会を譲る余裕さえありました。
テイタム不在が明らかにした真の実力
今シーズン開幕から9試合を消化した時点で、セルティクスは4勝5敗とやや苦しいスタートを切っています。多くの専門家が優勝候補から外し始める中、ブラウンは静かに、しかし確実に自身の価値を証明し続けています。
シーズン序盤の9試合で、ブラウンは5試合で30得点以上を記録しています。10月26日のデトロイト・ピストンズ戦では41得点をマークしましたが、チームは敗れました。この試合からも分かるように、ブラウンの個人パフォーマンスとチームの勝利は必ずしも一致していません。それでも、彼のシーズン平均は26.8得点、4.4リバウンド、4.3アシストという堂々たる数字を維持しています。
これまでブラウンは、テイタムという輝かしい才能の影に隠れがちな存在でした。しかし、テイタムの長期離脱という状況が、29歳のブラウンに真のファーストオプションとしての責任を背負わせています。そして彼は、その重圧を力に変えているのです。
4度のオールスター選出が示す継続的な成長
ブラウンは既に4回のオールスター選出を経験しており、2024年のファイナルMVPという最高の栄誉も手にしています。しかし、今シーズンの彼のプレイには、これまでとは異なる次元の安定感と自信が感じられます。
セルティクスのヘッドコーチは、ブラウンにオフェンスの起点となることを求めており、彼はその期待に応えています。ピックアンドロールからのドライブ、ミドルレンジでのプルアップシュート、そしてトランジションでの爆発的な得点力。ブラウンの武器は多彩であり、相手ディフェンスは一つの守り方に絞ることができません。
特筆すべきは、得点だけでなくプレイメイキング能力も向上している点です。1試合平均4.3アシストという数字は、彼が単なるスコアラーではなく、チーム全体の攻撃を組み立てられる選手へと進化していることを示しています。
今後の展望──優勝連覇への険しい道のり
セルティクスにとって、テイタムの復帰時期が最大の焦点です。アキレス腱断裂からの復帰には通常9ヶ月から12ヶ月を要するため、レギュラーシーズン中の復帰は難しいかもしれません。つまり、プレーオフまでブラウンが第一の柱として戦い続ける可能性が高いのです。
4勝5敗というスタートは決して理想的ではありませんが、東カンファレンスの混戦状態を考えれば、まだ挽回の余地は十分にあります。問題は、ブラウン一人に負担が集中し続けることで、プレーオフ前に疲労が蓄積してしまうリスクです。
クリスタプス・ポルジンギスやジュルー・ホリデーといったベテランたちが、これまで以上に重要な役割を果たさなければなりません。また、ペイトン・プリチャードのようなベンチメンバーの台頭も、チームの勝利には不可欠です。
まとめ──セルティクスの歴史に新たな1ページ
ジェイレン・ブラウンがわずか25分で達成した35得点、5リバウンド、5アシストという記録は、単なる統計上の数字ではありません。それは、彼がテイタムと並ぶ、いやそれ以上の存在になり得ることを証明する瞬間でした。
セルティクスの長い歴史の中で、多くの伝説的選手たちが素晴らしい記録を残してきました。しかし、ブラウンは自分自身の道を切り開き、独自の遺産を築こうとしています。今シーズンが終わる頃、私たちはブラウンをセルティクスのオールタイムグレートの一人として語っているかもしれません。

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