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WNBA労使交渉が約40日間延長決定!110万ドル超の最高年俸提案も選手会は納得せず

WNBAと選手会(WNBPA)が11月30日深夜、労働協約(CBA)の期限を2026年1月9日まで延長することで合意しました。これで女子バスケットボール史上最も重要とも言われる労使交渉は、新たなフェーズに突入します。

筆者としては、この延長合意は「決裂回避」という最低限の成果ではあるものの、両者の溝が埋まらないまま時間稼ぎに終わる可能性も否定できないと感じています。特に今回の延長には「48時間前通告での解除権」が双方に与えられており、いつでも交渉が決裂しうる緊張状態が続くことになります。

延長合意の経緯と提示された条件

今回の延長は、当初10月31日だったCBA期限から数えて2度目の延長となります。選手会は当初24時間の延長を提案していましたが、リーグ側は21日間を主張。最終的に約40日間という折衷案で決着しました。

注目すべきは、リーグ側が11月中旬に提示した新たな条件です。報道によれば、最高年俸は110万ドル(約1億6500万円)以上、最低年俸は22万ドル(約3300万円)以上という大幅な引き上げが盛り込まれていました。2025年シーズンの最低年俸が66,079ドル、スーパーマックス契約でも249,244ドルだったことを考えると、数字だけ見れば約4倍もの増額提案です。

しかし、複数の情報源によれば、この110万ドルという数字には「基本給+レベニューシェアリング(収益分配)」が含まれており、純粋な基本給は80万〜85万ドル程度にとどまるとのこと。選手会はこの提案に対し、ある選手が「顔に平手打ちを食らったようなもの」と表現するほど強い不満を示しています。

なぜ選手たちは納得しないのか?金額ではなく「仕組み」の問題

選手会が求めているのは、単なる年俸アップではありません。NBAが採用している「バスケットボール関連収入(BRI)」に連動したサラリーキャップ制度への移行です。

現行のCBAでは、サラリーキャップは毎年3%ずつ固定で上昇する仕組みになっており、2025年は約150万ドルでした。一方、リーグの収益は爆発的に成長しています。調査会社デロイトのレポートによれば、女子バスケットボール市場の収益は2024年の7億1000万ドルから2025年には10億3000万ドルへと45%以上も急増すると予測されています。

ここに問題があります。2022年時点で選手の基本給はリーグ総収入のわずか約9%に過ぎませんでした。その後もサラリーキャップは年3%しか上がっていない一方、リーグ収益は急成長。つまり、選手への還元率は実質的に低下し続けているのです。

選手会会長のネーカ・オグウミケは「私たちが求めているのは、ビジネスの成長とともに増えていく収益の一定割合です」と明言しています。NBAでは選手がBRIの約50%を受け取る仕組みになっていますが、WNBAではそうした直接的な連動がありません。

さらに現行CBAには、リーグが一定の収益目標を達成した場合に選手へボーナスが支払われる条項がありますが、コロナ禍で2020年シーズンがバブル開催となり観客収入がゼロだったため、累積目標の達成は事実上不可能になっていました。選手たちはこの「機能しない仕組み」に不信感を抱いています。

2026年シーズンへの影響と今後のシナリオ

交渉が決裂した場合、WNBAは29年の歴史で初めてのストライキまたはロックアウトに直面する可能性があります。インディアナ・フィーバーのソフィー・カニンガムは「ロックアウトの可能性がある。私たちにふさわしいものを得るまでプレーしない」と強い姿勢を示しています。

2026年シーズンに向けては、トロント・テンポとポートランド・ファイアという2つの新規参入チームによるエクスパンションドラフト、フリーエージェント交渉、そしてカレッジドラフトという重要イベントが控えています。CBA交渉が長引けば、これらのスケジュールが大幅に圧縮される「極端なシナリオ」も想定されており、3月末から4月にかけて全てが短期間で実施される可能性も報じられています。

筆者の見解としては、リーグ側も選手側も「決裂」という最悪の結果は避けたいはずです。ゴールデンステート・ヴァルキリーズが初年度で5億ドルの価値評価を受け、リーグ全体の観客動員数やテレビ視聴率が過去最高を記録する中、この成長を止めることは誰にとっても得策ではありません。

しかし、選手たちが求めているのは「今だけの昇給」ではなく「将来の成長を約束する仕組み」です。この根本的な哲学の違いが埋まらない限り、1月9日の新たな期限でも決着しない可能性は十分にあります。女子プロスポーツ史上最も重要な労使交渉は、まだ本当の山場を迎えていないのかもしれません。

引用:yardbarker

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