WNBAの2026年エクスパンション(チーム拡張)が現実味を帯びる中、ダラス・ウイングスにとって衝撃的なシミュレーション結果が発表されました。The Athleticが実施したモックドラフトで、ウイングスはリー・ユエル(李月汝)とアリケ・オグンボワレという2人の重要戦力を失う可能性が示されたのです。ペイジ・ベッカーズを中心とした新体制を構築しようとする最中、この予測はチームの将来設計に大きな影響を与えかねません。
リー・ユエルの成長がもたらした皮肉な結果
2024-25シーズン、リー・ユエルは自己最高のパフォーマンスを見せました。平均6.0得点、4.5リバウンド、3ポイント成功率36.4%という数字は一見地味に映るかもしれませんが、彼女の真価はより深い部分にあります。
6フィート7インチ(約201cm)の長身ながらスポットアップでの成功率は46.5%を記録。ポストアップでの守備でも相手のFG成功率を50%以下に抑え、攻守両面で存在感を発揮しました。特筆すべきは、300分以上出場したウイングスの選手の中で、オン/オフのネットレーティングがベッカーズに次いで高かったという事実です。26歳という年齢も含め、拡張チームが最も欲しがるタイプの選手に成長してしまったのです。
モックドラフトでは、トロント・テンポが全体1位指名でリー・ユエルを選択。ウイングスはベッカーズ、ルイーザ・ガイゼルセーダー、アジアハ・ジェームズ、ダイアモンド・ミラー、マディ・シーグリストの5人をプロテクトしたため、リーグ屈指のストレッチ5として成長したリー・ユエルは無防備な状態で獲得対象となりました。
4人ルーキー先発の歴史的挑戦と拡張ドラフトのジレンマ
ウイングスは昨シーズン、25年ぶりに4人のルーキーを長期間にわたってスターターとして起用するという歴史的な決断を下しました。GMのカート・ミラーは若手育成と長期的なロスター構築を重視し、ルーキースケール契約を活用したキャップの柔軟性確保、育成重視のミニッツ配分、そして文化の醸成を優先してきました。
しかし、この戦略が裏目に出る可能性があります。若手が育てば育つほど、拡張ドラフトでの魅力が増すというパラドックスです。ウイングスは最大11人の選手が契約下または保有権を持つ状態でオフシーズンに入る見込みですが、プロテクト枠は限られています。
さらに衝撃的だったのは、第7ラウンドでポートランド・ファイアがアリケ・オグンボワレを指名したという予測です。4度のオールスター選出、元得点王というフランチャイズの顔が流出する可能性は、ファンにとって受け入れがたい現実でしょう。
ベッカーズ時代の幕開けと避けられない痛み
ウイングスは明確にベッカーズ中心のチーム構築へと舵を切っています。2026年ドラフトで全体1位指名権を獲得し、新たな練習施設も建設中。ベッカーズはUSAバスケットボールのシニア代表キャンプにも招集され、フランチャイズプレイヤーとしての地位を確立しつつあります。
しかし、拡張ドラフトは避けて通れません。新たに加わるトロント・テンポとポートランド・ファイアに対し、各チームは限られた人数しかプロテクトできないルールが予想されています。CBAの交渉が続いており、具体的なルールは未確定ですが、カート・ミラーは「リーグ全体で、GMたちは眠れない夜を過ごすことになる」と述べています。
筆者の見解として、ウイングスが直面している状況は他チーム以上に複雑です。ベテラン主体のチームであれば、拡張チームにとっての魅力は限定的です。しかし、若く伸び盛りの選手を多く抱えるウイングスは、まさに拡張チームが狙う「宝の山」なのです。リー・ユエルの流出は痛手ですが、もしオグンボワレまで失うことになれば、チームのアイデンティティそのものが揺らぎかねません。
一方で、これを機にベッカーズへのオフェンス移行が加速するという見方もできます。重要なのは、失う選手の穴をどう埋めるかより、新体制でいかにケミストリーを構築するかでしょう。

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