ダラス・ウイングスのペイジ・ベッカーズが、USAバスケットボールのシニア代表キャンプに初招集されました。12月12日から14日までデューク大学で開催されるこのキャンプは、2026年FIBAワールドカップに向けた選考の第一歩。そして、大学時代の恩師であるUConnのジーノ・オリエンマHCは、教え子の成長を誰よりも近くで見守ってきた人物として、興味深い見解を示しています。
ルーキーイヤーを終えたばかりの選手が代表キャンプに呼ばれること自体が異例ですが、ベッカーズの場合、それは驚きというより「当然の帰結」という印象を受けます。
数字が証明するベッカーズの圧倒的なルーキーシーズン
ベッカーズの2025年シーズンの成績は、新人離れしたものでした。36試合に出場し、平均19.2得点、3.9リバウンド、5.4アシスト、1.6スティールを記録。特筆すべきは、WNBAで得点・アシスト・スティールの3部門すべてでトップ9にランクインした唯一の選手だったという事実です。
ロサンゼルスでの44得点という記録的なパフォーマンスは、ルーキーの域を完全に超えていました。新人王受賞、オールWNBAセカンドチーム選出、そしてオールスター戦でのスターター起用。これだけの実績を1年目で積み上げた選手は、近年のWNBAでも稀有な存在です。
オリエンマHCは、この1年がベッカーズにもたらした変化について語っています。「リーグでの1年間が、彼女に『このレベルの競争でも自分はやっていける、チームが必要とする存在になれる』という理解を与えたと思う」と述べており、WNBAでの経験が代表レベルへの準備を加速させたという見解を示しています。
スー・バード引退後の「空白」と代表ポイントガード争い
アメリカ女子バスケットボール代表において、スー・バードの存在は絶対的でした。5度のオリンピック金メダル、4度のワールドカップ優勝を経験した司令塔の引退後、代表チームは明確な後継者を見つけられていません。
オリエンマHCはこの状況を率直に認めています。代表チームにおいて、ベテラン選手たちを率いることができる次世代のリーダーがまだ確立されていないという現実があるのです。
この「空白」こそが、ベッカーズにとっての最大のチャンスです。代表チームでは所属チームとは異なる役割を求められることが多く、自己認識と適応力が試されます。オリエンマHCによれば、ベッカーズはまさにそうした資質を備えているとのこと。「代表チームでプレーするには多くの意識が必要だ。自分が何者で、どんな選手で、普段所属しているチームとは違う役割を担うかもしれないと理解すること。彼女はそうしたことすべてに精通している」という評価は、大学4年間を通じて培われた信頼の証でしょう。
「若すぎるか、それとも準備ができているか」—2026年に向けた展望
興味深いのは、オリエンマHCが明言を避けた部分です。ベッカーズが2026年ワールドカップのロスターに入るかどうかについて、「若すぎるのか、それとも準備ができているのか、私にはわからない。ただ、彼女には必要なものがすべて揃っていることは確かだ」と述べています。
筆者の見解として、この発言には深い意味があると考えます。オリエンマHCほどベッカーズを知る人物が「わからない」と言うのは、能力の問題ではなく、タイミングと競争環境の問題を示唆しているからです。
代表チームには現役のベテランガードたちがおり、いきなりルーキー上がりの選手が主軸を担うのは現実的ではありません。しかし、2026年のワールドカップを経て、2028年のロサンゼルス五輪を見据えた場合、ベッカーズが代表の顔になっている可能性は十分にあります。むしろ、その準備を今から始めることが、このキャンプ招集の真の意味ではないでしょうか。
ベッカーズ自身はInstagramで「神様、素晴らしいルーキーイヤーをありがとう。結果よりプロセス。無条件の喜びと感謝を」と投稿し、謙虚な姿勢を崩していません。この精神的な成熟度こそが、オリエンマHCが「彼女には必要なものがすべて揃っている」と評価する理由なのかもしれません。
ダラス・ウイングスにとって、フランチャイズプレイヤーが代表候補として認められたことは、チームのブランド価値向上にも直結します。2026年ドラフトで全体1位指名権も保有しており、ベッカーズを中心とした黄金時代の幕開けが近づいています。

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