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女子バスケの象徴ケイトリン・クラーク──WNBA2年目の衝撃と歴代最多得点までの物語


2025年最新ニュース・WNBAでの活躍

インディアナ・フィーバーに所属するガードのケイトリン・クラークは、2025年シーズン開幕戦でさっそくトリプルダブルを達成し、大差での勝利に貢献しました。

本拠地ゲインブリッジ・フィールドハウスには17,274人もの観客が詰めかけ、これは球団史上2番目の得点差勝利と相まって、彼女への高い関心を物語っています。

クラークは昨季のWNBA新人王かつオールWNBAファーストチーム選出選手であり、2年目の開幕戦で20得点・10リバウンド・10アシスト(ブロック4)と「3度目」のトリプルダブルを記録しました(大学時代には通算17回達成)。

この試合では、昨年ドラフト同期(1位指名)のクラークと7位指名のエンジェル・リース(シカゴ・スカイ所属)が再びマッチアップし、第3Qに小競り合いが発生しました。クラークはリースへのファウルがアンスポーツマンライクファウルに判定されたことに対し「ビデオで確認した審判の裁量だが、単に得点を防ぐためのプレーだった」とコメントし、大きく騒ぎ立てる必要はないと強調しました。両者は互いに「個人的な確執はない」と公言しており、この日の衝突後もチームとして集中を切らさず勝利に結びつけています。

また、オフコートでもクラークの存在感は増す一方です。

2024年4月にはナイキ社との8年総額2,800万ドル規模の大型契約を結ぶ見込みと報じられ、個人契約として女性バスケットボール選手史上最高額となりました。
この契約には彼女自身のシグネチャーシューズの展開も含まれ、スポーツ業界全体から注目されています。

WNBA全体でも彼女の登場効果は絶大で、2024年シーズンのリーグ観客動員数は前年比48%増となり、試合平均9,807人(前年6,615人)と記録的な盛り上がりを見せました。

クラーク出場試合のチケットはホームでもアウェーでもリーグで最も入手困難なホットチケットとなり、テレビ視聴率やグッズ売上も軒並み向上する「クラーク効果」が生まれています。

実際、大学からプロにかけて彼女は女子バスケット界の顔とも言える存在となっており、その人気と実力から“American Icon(アメリカの象徴)”と称する声もあります。

リーグ関係者も「彼女はこのリーグに属し、自分が活躍できると確信している」と語っており、プレッシャーの中でもクラークは自信を持ってWNBA2年目に挑んでいます。

大学時代の活躍と記録

アイオワ大学在学中、クラークは歴史的な記録を次々と打ち立て、女子カレッジバスケの象徴的存在となりました。

1年生の頃から全米に名を轟かせた彼女は、2023年と2024年に2年連続で主要な年間最優秀選手賞(ネイスミス賞、ウッデン賞、AP通信年間最優秀選手など)を総なめにし、ブリーナ・スチュワートら歴代の名選手に並ぶ偉業を達成しています。

また同期間にビッグ・テン・カンファレンス年間最優秀選手にも3年連続で選出されました。在学4年間を通じて数々の驚異的スタッツを残し、NCAA男子・女子を通じた歴代最多通算得点記録となる3,951得点をマーク(従来の男子記録ピート・マラビッチの3,667点、女子記録ケルシー・プラムの3,527点を更新)。

さらに通算で3,000得点・1,000アシスト以上を達成したNCAA史上初の選手となり、4年間の総計では3,900点超・1,100アシスト超・980リバウンド超に到達しています。

特に最終学年(シニア)には平均31.6得点・8.9アシスト・7.4リバウンドという圧倒的な数字を残し、2年連続でNCAA全体の得点王とアシスト王の双方を兼ねる離れ業を演じました。

NCAAディビジョンIでシーズン得点とアシストの両方でトップに立ったのは男女通じて史上初であり、しかもそれを2年連続で成し遂げています。

4年間毎シーズンで所属カンファレンス(ビッグ・テン)の得点王兼アシスト王に輝いたのも史上初の偉業でした。

クラークはチーム成績の面でもアイオワ大を頂点に導きました。

3年次の2022-23シーズンにはアイオワ大女子史上初となるNCAAトーナメント準優勝に導き、自身もトーナメント史上初の40得点トリプルダブル(エリート8で41得点・10リバウンド・12アシスト)を達成するなど記憶に残る活躍を見せました。

その翌年の4年次(2023-24シーズン)もチームを再び全国大会決勝に進出させ(34勝5敗)、NCAA女子バスケ史で初めてビッグ・テン所属校の連続決勝進出を実現しました。

2年連続で惜しくも全国優勝は逃したものの(2023年はLSUに敗戦、2024年はサウスカロライナ大に敗戦)、連年の準優勝と自身の連続MOP級の活躍によって全米の注目を集めました。

NCAAトーナメント通算得点・アシスト・3ポイント成功数において歴代1位となる記録も樹立しており、まさに大学バスケ界の記録を塗り替えた存在でした。

クラークの在学中、アイオワ大の試合は観客動員やテレビ視聴率で軒並み過去最高を更新し、2023年には屋外スタジアム(米国フットボールのアイオワ・キニックスタジアム)で行われたエキシビションゲームに5万人超を集めるなど、女子バスケ人気を押し上げた功績も大きいと言えます。

「クラーク効果」とも称されるこの人気と影響力は、大学からWNBAに舞台を移した後も衰えることなく続いています。

【主な大学時代の実績】
大学通算得点3,951点(NCAA史上最多)、通算アシスト1,135本(ビッグ・テン史上最多)、通算トリプルダブル※12回(NCAA女子歴代2位)など。年度別には下表参照。

年度(学年)所属主な成績・出来事
2020-21(1年)アイオワ大(NCAA)平均26.6得点・7.1アシストで全米得点王。ビッグ・テン新人王受賞。NCAAトーナメントSweet16進出。
2021-22(2年)アイオワ大(NCAA)平均27.0得点・8.0アシストで2年連続全米得点王&初の全米アシスト王達成。ビッグ・テン年間MVP受賞。NCAAトーナメント2回戦敗退。
2022-23(3年)アイオワ大(NCAA)平均27.8得点・8.6アシストで全米アシスト王。AP通信など主要個人賞を総なめし全米年間MVP。NCAAトーナメント準優勝(決勝でLSUに敗退)。エリート8で史上初40点超トリプルダブル達成。
2023-24(4年)アイオワ大(NCAA)平均31.6得点・8.9アシストで全米得点王&アシスト王。主要個人賞連覇。NCAAトーナメント準優勝(決勝でサウスカロライナ大に敗退)。通算得点・3P・アシスト等でNCAA歴代記録更新。

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※トリプルダブル…得点・リバウンド・アシストの各項目で二桁(10以上)を記録すること。クラークは大学通算で公式記録上10回(非公式を含め12回)達成し、女子NCAA記録(サブリナ・イオネスクの26回)に次ぐ歴代2位。

WNBAでのキャリア(2024~)

2024年4月、クラークは同年のWNBAドラフトで全体1位指名を受け、インディアナ・フィーバーに入団しました。

ドラフト前には「大学での追加年次を放棄してプロ入りする」と2月に表明しており、注目度の高いドラフト当日には会場チケット1,000枚が15分で完売するほどのフィーバーぶりでした。

フィーバーへの「救世主」として迎えられたクラークは、期待通りルーキーイヤーから大車輪の活躍を見せます。

開幕当初こそ1勝8敗と躓いたものの、その後チームは巻き返して最終成績20勝20敗で2016年以来のプレーオフ進出を果たしました。

クラーク自身は**平均20点前後を挙げてリーグトップのアシスト数(平均8本前後)を記録し、チームのオフェンスを牽引。
シーズンを通して全試合でチームトップまたはタイのアシスト数をマークするなどゲームメイクの才能も示しました。

その結果、新人ながらWNBAオールスターに選出されただけでなく、年間最優秀新人(ROY)とオールWNBAファーストチームにまで輝きました。
新人がベスト5に選ばれるのは極めて異例で、2008年のキャンデース・パーカー以来とも言われます。

さらにクラークは2024年リーグのアシスト王(シーズン総アシスト数1位)**にも輝き、スティール(スリーポイントから長距離砲まで決める高得点力)とパスセンスを兼備した“得点もできるポイントガード”としてリーグに強いインパクトを与えました。

個人記録の面でも、クラークはWNBA1年目から次々と金字塔を打ち立てています。

新人シーズン中の6月には1試合7本のスリーポイント成功でWNBA新人記録(1999年クリスタル・ロビンソンの記録にタイ)に並び、同月にはフィーバー球団史上最多の1試合13アシストも樹立しました。

また、開幕から12試合で通算200得点・75アシストに到達し、これはリーグ史上最速(従来記録はスー・バードの14試合)という快記録でした。

トリプルダブルも新人史上初めて達成(2024年シーズン中に2回記録)しており、2025年シーズン開幕戦で早くも通算3回目をマークするなど、マルチなスタッツを残せる選手として名を馳せています。このような突出した活躍ぶりから、新人ながらクラークは早くも将来のWNBAを代表するスター選手と目されています。

米国代表での経歴

クラークはアメリカ合衆国の各年代別代表としても活躍してきました。高校時代の2017年にU16女子アメリカ代表の一員としてFIBA U16アメリカ選手権で金メダルを獲得し、その後U19ワールドカップには2019年大会(タイ)と2021年大会(ハンガリー)で2大会連続出場しました。特に2021年大会では大会MVPに選出される活躍でチームを優勝に導き、自身も平均14.3点・5.6アシスト・5.3リバウンドというオールラウンドな成績を残しました。これらジュニアカテゴリーでの実績を引っ提げて、大学4年時にはシニアの米国代表候補にも招集されます。2024年パリ五輪に向けた代表トライアウトキャンプに招待されましたが、NCAAファイナルフォー進出と日程が重なったため参加できず、最終メンバーには選出されませんでした。この件について米国代表選考委員会はコメントを控えていますが、将来的にクラークがシニア代表で活躍する可能性は十分高いとみられます。現に彼女の台頭によって「なぜ五輪代表に選ばなかったのか」との議論もファンの間で起こったほどで、次回以降のオリンピックや国際大会でのプレーに期待が寄せられています。

話題となったエピソード

クラークはその卓越した競技パフォーマンスのみならず、コート内外でのエピソードでも度々メディアの話題となってきました。

特に有名なのが2023年NCAA女子決勝でのジェスチャー論争です。ルイジアナ州立大(LSU)との優勝決定戦で敗れた直後、勝者であるLSUのエンジェル・リースがクラークに対しプロレスラーのジョン・シナになぞらえた「You Can’t See Me(ユー・キャント・シー・ミー)」ジェスチャー(手のひらを顔の前で振る仕草)を執拗に送り、これがスポーツマンシップ論争に発展しました。

SNS上では人種的なダブルスタンダード議論も巻き起こる事態となりましたが、クラーク本人は試合後の会見で「あの場では気付いていなかった。ただ握手の列に並びに行こうとしていただけ」と述べ、リースの行為を気に留めていない姿勢を示しました。

さらに「私は敗者としてホワイトハウス(大統領府)訪問をするつもりはない。招待は優勝したLSUが受けるべきもの」と語り、当時ファーストレディのジル・バイデン氏が「準優勝のアイオワ大もホワイトハウスに招待したい」と発言した件についても丁重に辞退の意向を示しました。

この毅然としたコメントは「敗者に栄誉を与える“参加賞”的な扱いは不要」とする意見として支持を集め、結果的にホワイトハウス招待案は撤回されています。

こうした出来事を通じて、クラークは勝敗に関わらず相手を称えるスポーツマンシップと、競技者としての強い信念を示しました。

【主な受賞歴・記録】(2025年5月時点)

  • WNBA: 新人王(2024)、オールWNBAファーストチーム(2024)、オールスター選出(2024)、アシスト王(2024)、WNBAオールルーキーチーム(2024)。新人シーズンで通算676得点(新人最多記録)と269アシスト(リーグ最多)を記録。新人による1試合トリプルダブル達成(史上初)、新人1試合最多3P成功7本(歴代タイ)など。AP通信年間最優秀女性アスリート賞(2024年)を受賞。
  • NCAA: AP通信年間最優秀選手(2回:2023, 2024)、ネイスミス賞(2回)、ウッデン賞(2回)ほか主要個人賞を複数回受賞。ビッグ・テン年間MVP(3回:2022-2024)。通算3,951得点・1,135アシスト(男女通じNCAA歴代最多得点、新人時代から4年連続でカンファレンス得点王&アシスト王)。NCAAトーナメント通算得点・アシスト・3P成功数歴代1位。NCAA歴代最高得点平均(28.4点)、トリプルダブル通算11回(歴代2位)など。背番号22番はアイオワ大で永久欠番に指定。
  • 代表/その他: FIBA U19ワールドカップ金メダル2回(2019, 2021)・大会MVP(2021)、U16アメリカ選手権金メダル(2017)。Honda Cup(全米女子最優秀大学選手賞)2回(2023, 2024)。タイム誌「Next100」選出(2023)など。

クラークは以上のように大学・プロ双方で突出した成績と人気を誇り、「世代のアイコン」として女子バスケットボール界を牽引しています。

今後もWNBAや国際舞台で彼女がどのような新たな伝説を築くのか、ファンやメディアの注目はますます高まっています。

今まさに躍動する若きスーパースター、ケイトリン・クラークから目が離せません。

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