「これがどれほど大きなことか分かっているのか?」—ケイトリン・クラークの2024年ドラフト宣言翌日、USAトゥデイのコラムニスト、クリスティーン・ブレナンがWNBAの幹部に電話でこう問いかけました。その幹部の返答は衝撃的でした。「マヤ・ムーア以来の大きな出来事だ」。ブレナンは愕然としました。この認識の甘さこそが、WNBAがクラーク現象に完全に準備不足だった証拠だと、新刊書籍で痛烈に批判しています。
リーグ幹部の致命的な認識不足
マヤ・ムーアは確かに殿堂入り選手であり、2017年にスポーツ・イラストレイテッド誌から「女子バスケットボール史上最高の勝者」と称された偉大な選手でした。しかし、リーグ外での注目度は限定的でした。
一方、クラークは「国全体の注目を集める」選手でした。ブレナンは何年もクラークとWNBAを取材しており、この現象を予見していました。しかし、リーグ幹部にはその認識が全くありませんでした。
「この会話が、リーグがこれから起こることに対する準備不足、いや理解すらできていなかったことを物語っている」とブレナンは語ります。「残念だが、それが現実だった」
クラークの登場は「モンスター級で、強力で、本物の『クラーク効果』」をもたらすことになります。しかし、WNBAはその準備が全くできていませんでした。
「リーグは選手たちを見捨てた」
2024年5月9日、インディアナポリスでのフィーバー初のプレシーズンゲーム。ゲインブリッジ・フィールドハウスに向かうファンで、アラバマストリートは3ブロック以上にわたって渋滞が発生しました。木曜日の午後6時、プレシーズンのWNBA試合でこんな光景を見たことがないと、駐車場スタッフは驚きを隠せませんでした。
「これは普通ペイサーズの試合で起こることで、フィーバーではない。これが『ケイトリン効果』だ」
2023年シーズン、フィーバーの平均観客動員数は4,067人でした。しかし、この夜は14,000人が詰めかけました。プレシーズンゲームに、です。
アメリカの社会学者で公民権活動家のハリー・エドワーズ博士は、この状況を「リーグが選手たちを見捨てた」と痛烈に批判しています。
「WNBAは選手たちをこの瞬間に備えさせる機会を逃しただけでなく、リーグが進む道に罠を仕掛けた」とエドワーズ博士は指摘します。
人種問題への配慮不足が混乱を招く
WNBAの最新統計によると、選手の63.8%がアフリカ系アメリカ人、19.1%が白人です。また、選手の約3分の1がLGBTQ+コミュニティの一員とされています。
「この世界に、WNBAで1秒もプレイしたことがない22歳の白人のストレートの女性が、すでに国民的現象となり、リーグの顔になろうとして現れた」とブレナンは書いています。
エドワーズ博士は、リーグが特にアフリカ系アメリカ人選手が経験するであろう「失望と怒り」に備える必要があったと指摘します。「これは予測可能だった。一生懸命努力してきたのに、(クラークが)受けているような報酬や拍手に近づくことすらできない環境で、新人が成功することを喜ばないのは人間の本性だ」
驚愕の経済効果!一人の選手がリーグを変える
インディアナ大学コロンバス校のライアン・ブリューワー教授による分析では、クラークの経済効果は驚愕的な数字となりました。
- WNBA全体の26.5%の活動がクラーク関連
- 売上チケット6枚に1枚がクラーク効果
- テレビ視聴率300%増加
- 放送価値の45%がフィーバーの試合から
- グッズ売上500%増加
- インディアナポリス市への経済効果52億円超
「これは1年間の数字だ。一人の選手について話している」とブリューワー教授は強調します。
女子サッカーのスーパースター、ブリアナ・スカリーは言います。「クラークの存在は一部の人には分極的だが、リーグにとって本当に分水嶺の瞬間だ。これらの素晴らしいアフリカ系アメリカ人選手たちが、今スポットライトが当たっているという事実を最大限活用していることを願っている」
選手との認識ギャップが示す問題
しかし、今週明らかになった問題は深刻です。WNBAの選手投票で、クラークはガード部門9位にランクされました。一方、ファン投票では全体1位でした。
「ファンが思うことと選手が思うことの間の断絶は、WNBAとその経済、そして財政的未来にとって問題となるだろう」とブレナンは警告します。
労使協定の交渉が進む中、「クラークは彼らにとって最も重要な人物だ。これがジレンマなのだ。彼女は経済的なロケット船であり、より多くのお金を得るために彼女を必死に必要としているからだ」
WNBAがこの歴史的機会を最大限活用できるかどうか、それとも準備不足により混乱を続けるのか。クラーク現象は、女子スポーツの未来を決定づける重要な分岐点となっています。「私は生きている間にこれを見ることになるとは思わなかった」とブレナンは語ります。「これは女子スポーツ、スポーツ全体、そして私たちの文化における注目すべき瞬間なのです」

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