サンアントニオ・スパーズに、静かな地殻変動が起きています。今夏ドラフト全体2位で指名したディラン・ハーパーの急成長が、チームのバックコート陣に思わぬ波紋を投げかけているのです。
ESPNが伝えた匿名の西地区スカウトの証言によると、ハーパーの潜在能力は、ベテランガードのデアーロン・フォックスを「トレード候補」に変える可能性があるといいます。「もし3ポイントショットが本物の武器になれば、彼はフォックスを不要にし、スパーズに素晴らしいトレード資産をもたらすだろう」。この発言は、単なる憶測ではなく、スパーズが直面する豪華すぎるバックコート問題の核心を突いています。
豪華すぎるガード陣が生む「贅沢な悩み」
現在のスパーズには、3人の実力派ガードが存在します。
デアーロン・フォックスは、昨シーズン途中にサクラメント・キングスからトレードで加入。怪我で離脱するまでの17試合で、平均19.7得点、4.3リバウンド、6.8アシストを記録しました。シーズン通算では23.5得点、4.8リバウンド、6.3アシストと堂々たる数字を残しましたが、3ポイント成功率は約31%まで低下。チームへのフィット感は悪くありませんでしたが、完璧とは言えない状況でした。
一方、ステフォン・キャッスルは新人王を獲得する活躍を見せました。平均14.7得点、4.1アシスト、3.7リバウンド、FG成功率42.8%という成績で、ビクター・ウェンバンヤマと共にスターティングガードの座を確保。ルーキーとは思えない落ち着きと実力を証明しました。
そこに加わったのが、ラトガース大学出身のディラン・ハーパーです。大学時代は平均19.4得点、4.0アシスト、4.6リバウンドを記録。より大柄でフィジカルな選手で、天性のプレイメーカーとしての資質を持っています。シュート力はまだ発展途上ですが、メカニクスは確かで、サイズを活かした守備力も魅力。一部のスカウトは「よりアスレチックなケイド・カニングハム」と評価しています。
サマーリーグで見せた将来性と「マヌ・ジノビリの再来」
ハーパーは、サマーリーグでわずか2試合の出場でしたが、確かな印象を残しました。合計42分間で32得点、8リバウンドを記録。特に2試合目の延長戦での勝利に貢献し、17分間で16得点、6リバウンド、2アシスト、2スティールという数字を残しました。
前出の西地区スカウトは、ハーパーのプレイスタイルについて「彼のオフェンスゲームにはマヌ・ジノビリを彷彿とさせるものがある」と語っています。これは、スパーズファンにとって最高の褒め言葉でしょう。ジノビリといえば、予測不可能な動きと勝負強さで4度のNBAチャンピオンに貢献したレジェンド。その再来と評されるハーパーの将来性は計り知れません。
フォックスがトレード候補になる3つの理由
なぜフォックスが「トレード候補」になる可能性があるのでしょうか。
1. 年齢と契約 フォックスは現在27歳で、高額な長期契約を結んでいます。一方、キャッスルとハーパーはルーキー契約で、チームの将来を担う若手です。サラリーキャップの観点から、若手に投資する方が合理的という判断もあり得ます。
2. プレイスタイルの重複 フォックスはボール支配的なプレイヤーで、自らが攻撃の起点となることを好みます。しかし、キャッスルもハーパーも成長のためには実戦経験が必要なコンボガード。3人全員に十分な出場時間を与えることは物理的に不可能です。
3. ハーパーの急成長 もしハーパーが3ポイントショットを武器として確立できれば、フォックスの存在価値は相対的に低下します。より若く、より安価で、より将来性のある選手がいる中で、ベテランを保持し続ける理由は薄れていきます。
現時点では、ハーパーはベンチからの出場となり、試合の流れに応じて1番と2番を行き来することになるでしょう。しかし、シーズン序盤で飛躍的な成長を見せれば、スパーズは難しい決断を迫られることになります。
これはパニックになるような状況ではなく、ロッカールームの問題でもありません。むしろ、才能ある選手が多すぎるという「贅沢な悩み」です。しかし、長期的な視点で見れば、いずれは解決しなければならないロスター構成のパズルです。
スパーズは若手に賭けて完全な再建を進めるのか、それともベテランの経験と得点力を必要とするチームにフォックスをトレードするのか。ハーパーの成長曲線とキャッスルの活躍次第では、その決断の時は思いのほか早く訪れるかもしれません。
ウェンバンヤマを中心とした新時代のスパーズにとって、この「幸せな問題」をどう解決するかが、今後数年間の成功を左右することになるでしょう。
引用:YARDBARKER

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