WNBAに新たな歴史が刻まれました。ゴールデンステート・バルキリーズのヘッドコーチ、ナタリー・ナカセが2025年State Street Investment Management SPY WNBA最優秀コーチ賞を受賞したのです。驚くべきことに、これは彼女にとってWNBAヘッドコーチとしての初年度での快挙でした。しかも率いたチームは新規参入のエクスパンションチームという、まさに前例のない偉業を成し遂げたのです。
圧倒的支持で掴んだ栄冠と驚異の守備戦術
投票結果が物語る通り、ナカセの手腕は圧倒的な評価を受けました。72人のスポーツライターとブロードキャスターによる投票で、実に53票という過半数を大きく超える支持を獲得。2位のアトランタ・ドリームのカール・スメスコHCの15票、3位タイのラスベガス・エーシズのベッキー・ハモンHCとミネソタ・リンクスのシェリル・リーブHCの各2票と比較すると、その差は歴然としています。
ナカセが構築したバルキリーズの戦術で最も際立ったのは、その鉄壁の守備システムです。チームは相手の平均得点を76.3点に抑え、フィールドゴール成功率も40.5%という、いずれもリーグ最少の数値を記録しました。一方で攻撃面では、1試合平均9.7本の3ポイントシュートを決めるという、リーグトップの長距離砲を誇りました。この攻守のバランスこそが、エクスパンションチーム初年度での成功の鍵となったのです。
さらに注目すべきは、個人の成長も促した点です。ガードのベロニカ・バートンは2025年Kia WNBA最優秀成長選手賞を受賞し、フォワードのケイラ・ソーントンは初めてAT&T WNBAオールスターゲームに選出されました。新チームでありながら、選手個々の才能を最大限に引き出すナカセの指導力が証明された形となりました。
苦難を乗り越えた驚異の立て直し力
シーズン開幕当初、バルキリーズは2勝5敗という厳しいスタートを切りました。新チーム特有の連携不足や戦術の浸透に時間がかかったことが要因でしたが、ナカセはここから見事な立て直しを見せます。次の9試合で7勝2敗という好成績を収め、6月のWNBA月間最優秀コーチ賞を受賞。この時期の躍進が、チーム全体に自信と勢いをもたらしました。
シーズン終盤には、8月9日から15日にかけての4連勝、8月24日から9月4日にかけての5連勝という2つの大きな連勝を記録。プレーオフ争いの重要な局面で、プレッシャーをものともしない勝負強さを発揮しました。最終的に23勝21敗という成績は、エクスパンションチーム初年度の勝利数として新記録を樹立。さらに、創設初年度でプレーオフ進出を果たした史上初のチームとなったのです。
この驚異的な成功の背景には、ナカセの豊富な経験がありました。2024年10月にバルキリーズのヘッドコーチに就任する前は、エーシズで3シーズンアシスタントコーチを務め、2022年と2023年の2連覇に貢献。さらにその前は、NBAのロサンゼルス・クリッパーズで10シーズンを過ごし、最終的にはアシスタントコーチを務めるなど、男子プロバスケットボール界での経験も積んでいました。
新時代のコーチング哲学とWNBAの未来
ナカセの成功は、WNBAにおける新しいコーチング哲学の到来を示唆しています。従来のエクスパンションチームは、既存チームとの戦力差に苦しみ、数年かけて徐々に力をつけていくのが常でした。しかしナカセは、守備を基盤とした堅実なチーム作りと、3ポイントシュートを軸とした現代的な攻撃システムを融合させることで、初年度から競争力のあるチームを作り上げました。
特筆すべきは、NBA・WNBA両方での経験を活かした戦術の多様性です。男子バスケットボールで培った戦術的アプローチを、WNBAの特性に合わせて柔軟にアレンジする能力は、今後のWNBAコーチングの新たなスタンダードとなる可能性があります。また、アジア系アメリカ人女性として初めてWNBA最優秀コーチ賞を受賞したことも、リーグの多様性という観点から大きな意味を持っています。
バルキリーズのプレーオフでの戦いぶりが注目される中、ナカセの指導力がどこまでチームを導けるかが試されます。初年度でのプレーオフ進出という快挙を成し遂げた今、次なる目標はチャンピオンシップへの挑戦です。エクスパンションチームが短期間で優勝争いに加わることができれば、それはWNBAの競争力と魅力をさらに高めることになるでしょう。
ナカセの成功は、新規参入チームにとっての希望の光となっています。適切な人材登用と革新的な戦術があれば、短期間での成功も可能であることを証明しました。今後WNBAに参入を検討している都市やオーナーシップグループにとって、バルキリーズとナカセのモデルは貴重な参考事例となることは間違いありません。
引用: wnba.com

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