2025年WNBAセミファイナル第5戦。ラスベガス・エーシズとインディアナ・フィーバーの死闘は、延長戦までもつれ込む壮絶な展開となりました。最終スコア107-98でエーシズが勝利を収め、3年連続となるファイナル進出を決めましたが、この試合で最も印象的だったのは、試合後にエイジャ・ウィルソンが見せた敬意と思いやりの姿勢でした。
延長戦を制したエーシズ、だがフィーバーの健闘も光る
エーシズは第4Qで二桁リードを築きながらも、フィーバーの粘り強い追い上げを許し、試合は延長戦へと突入しました。延長戦ではチェルシー・グレイが連続で3ポイントシュートを沈めるなど、ベテランの経験値が勝敗を分けることになりました。
この試合でウィルソンは圧巻のパフォーマンスを披露しました。41分間プレーし、27本中13本成功で35得点、8リバウンド、5アシスト、4スティール、4ブロックという完璧に近いスタッツを記録しました。さらに、ジャッキー・ヤングも32得点10アシストという素晴らしい成績を残し、2人合わせて67得点という記録的な数字を叩き出しました。これはWNBAプレーオフ史上初めて、1試合で2人の選手がそれぞれ30得点以上を記録した快挙となります。
一方のフィーバーは、ケイトリン・クラークを欠きながらも、オデッセイ・シムズが27得点6アシスト、アリーヤ・ボストンが6回のファウルアウトまで11得点16リバウンドと奮闘しました。レキシー・ハルも12得点7リバウンドを記録するなど、戦力不足を補う戦いぶりを見せました。
勝負の分かれ目となったミッチェルの離脱
しかし、この試合の流れを大きく変えたのは、ケルシー・ミッチェルの途中離脱でした。ミッチェルは第3Q終了前に下半身の痛みを訴えてコートを去り、その後プレーに戻ることはありませんでした。後に明らかになったところによると、ミッチェルは痙攣(けいれん)に襲われていたとのことです。
離脱前のミッチェルは23分間のプレーで15得点を記録し、フィールドゴール8本中4本成功、3ポイントシュートは3本すべて成功という高い決定力を見せていました。2リバウンド2アシストも加え、フィーバーの攻撃の要として機能していただけに、彼女の離脱は大きな痛手となりました。
ミッチェルはこのポストシーズンを通じてフィーバーの攻撃を牽引し続けてきました。シリーズを通してエーシズのディフェンスに苦しめられながらも、第1戦ではプレーオフキャリアハイとなる34得点を記録するなど、存在感を示していました。
ウィルソンが示した真のライバルへの敬意
試合後のインタビューで、ウィルソンは勝利の喜びよりも先に、ミッチェルへの配慮を口にしました。
「まず最初に、ケルシー・ミッチェルへの祈りを捧げたいです。彼女は私のドラフト同期であり、あのような形で倒れるのを見るのは辛かった。本当に彼女の無事を祈っています。彼女は素晴らしいシーズンを過ごしてきました。インディアナ・フィーバーが今後も彼女を大切にしてくれることを心から願っています」
この言葉は、単なる社交辞令ではありません。ウィルソンとミッチェルは2018年のWNBAドラフトで、それぞれ全体1位と2位で指名された同期です。ウィルソンがエーシズに、ミッチェルがフィーバーに指名されてから7年間、2人はリーグを代表する選手へと成長してきました。
ウィルソンは史上初の4度目のMVPを獲得し、2度のチャンピオンシップリングを手にするなど、キャリアの成功という点では明らかにミッチェルを上回っています。しかし、ミッチェルもまた2023年以降毎年オールスターに選出され、2024年と2025年のMVP投票でトップ10に入るなど、リーグを代表するガードとして確固たる地位を築いています。
過酷な戦いを強いられ続けたフィーバー
このセミファイナルシリーズを振り返ると、フィーバーが置かれていた状況の厳しさが浮き彫りになります。シーズン途中からクラークが欠場し、さらにソフィー・カニンガム、シドニー・コルソン、アーリ・マクドナルドといった主力選手も負傷リストに名を連ねる状況でした。
それでも第1戦で89-73の勝利を挙げ、第4戦でも90-83で勝利して対戦成績を2-2のタイに持ち込むなど、フィーバーは不屈の精神を見せました。このポストシーズン、フィーバーはアンダードッグとして4試合に勝利しましたが、これは2021年にチャンピオンシップを制したシカゴ・スカイ以来の記録です。また、エリミネーションゲームで3勝を挙げたのは、2022年のコネチカット・サン以来の快挙となりました。
ボストンとミッチェルの2人が中心となってチームを引っ張り続けたフィーバーでしたが、最終戦でミッチェルが欠けたことで、さすがに戦力的な限界を露呈する形となりました。
王朝への道を歩み続けるエーシズ
一方のエーシズは、2022年、2023年とチャンピオンシップを連覇しており、今回のファイナル進出で4年間で3度目となります。もしファイナルを制すれば、2011年から2017年にかけて7シーズンで4度の優勝を果たしたミネソタ・リンクス以来の王朝チームとしての地位を確立することになります。
ファイナルの相手は、フェニックス・マーキュリー。第1戦は10月3日(金)、ラスベガスで午後8時(東部時間)にティップオフされます。マーキュリーは2014年以来のチャンピオンシップ獲得を目指しており、激しい戦いが予想されます。
スポーツが持つ人間性の美しさ
ウィルソンの試合後のコメントは、スポーツが持つ本質的な価値を思い起こさせてくれます。コート上では激しく戦い合う相手であっても、コートを離れれば互いを尊重し合う仲間である、という精神です。
史上初の4度目のMVPに輝き、チームを3年連続でファイナルへと導いたウィルソンが、最初に口にしたのは勝利の喜びではなく、負傷した対戦相手への心配でした。この姿勢こそが、真のチャンピオンが持つべき品格なのかもしれません。
ミッチェルの早期回復と、エーシズとマーキュリーによる素晴らしいファイナルシリーズを期待したいところです。
引用: yardbarker

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