ゴールデンステート・ウォリアーズのジョナサン・クミンガが、シーズン途中でのトレードを望んでいないことが明らかになりました。ESPNのインサイダー、アンソニー・スレイターが報じたこの情報は、長引いた契約交渉の末に2年4,850万ドルの契約にサインしたばかりのクミンガの複雑な状況を浮き彫りにしています。
クミンガは制限付きフリーエージェントとして、契約交渉が夏の間ずっと難航していましたが、9月30日にようやく合意に至りました。この契約の2年目はチームオプションとなっており、ウォリアーズ、あるいはトレード先のチームが来オフシーズンに契約を破棄して新たな契約を結ぶことを想定した設計となっています。
「彼はシーズン途中にトレードされることを望んでいないと聞いている」とスレイターは述べました。「これは理解できることだ。新天地を求めていたとしても、トレーニングキャンプから始めたいと考えているだろう。選手でシーズン途中のトレードを好む者はいない」
カーとの関係性に亀裂
複数の情報筋によると、クミンガはウォリアーズのヘッドコーチ、スティーブ・カーと良好な関係を築けていません。実際、クミンガは今オフシーズン中にゴールデンステートを離れ、サクラメント・キングスでプレーすることを望んでいたことが明らかになっています。
カーは10月2日の練習後、クミンガとの関係について質問を受け、慎重に言葉を選びながらも、自身の立場を説明しました。「私たちはこれよりも大きな問題を経験してきた。これはそれほど大きな問題だとは思わない。これはビジネスだ。契約紛争はスポーツでは常に起こることだ」とカーは述べました。
しかし、カー自身も過去の発言で、チームが必要とするプレーとクミンガがやりたいことの間にギャップがあることを認めています。「彼を良くすること、彼がなれる選手になる手助けをすることが全てだ。それが彼を妨げてきたことだ――私たちが必要としていることと彼がやりたいことの違いだ」とカーは語っています。
2024-25シーズンのパフォーマンスと契約交渉の経緯
クミンガは昨シーズン、47試合に出場し、平均15.3得点、4.6リバウンド、2.2アシスト、0.8スティール、0.4ブロックを記録しました。シーズン途中で足首の捻挫に見舞われ、31試合を欠場したことが、彼の数字に大きく影響しました。
2025年のプレーオフでは、ヒューストン・ロケッツとの第1ラウンドで7試合を戦い、ミネソタ・ティンバーウルブズとの第2ラウンドで5試合に敗退しました。ロケッツ戦では、カーはクミンガをほとんど起用せず、7試合で合計50分の出場に留まりました。4試合はコーチの判断で完全にベンチに座ったままでした。この際、クミンガは平均6得点、シュート成功率30.4%という低調な数字に終わりました。
しかし、ステフィン・カリーが負傷欠場したティンバーウルブズ戦では、クミンガは輝きを見せました。平均20.8得点、シュート成功率54.3%を記録し、シリーズ最後の3試合では連続で20得点以上をマークしました。この活躍は、クミンガが適切な役割を与えられれば高いレベルでプレーできることを証明しました。
契約交渉の過程では、ウォリアーズは当初3年7,520万ドルの契約を提示しましたが、3年目にチームオプションが付いていました。クミンガ側はこれを拒否し、プレーヤーオプションを求めました。クミンガのエージェント、アーロン・ターナーは3年8,200万ドル、3年目にプレーヤーオプション付きの契約を提示しましたが、GMのマイク・ダンリービー率いるフロントオフィスはこれを拒否しました。
最終的に、ウォリアーズは2年4,850万ドルの契約を提示し、クミンガは9月30日にこれに合意しました。これは当初の2年4,500万ドルのオファーから850万ドル増額されたものでした。また、クリーブランドで契約にサインした後、10月2日にサンフランシスコに飛び、10月3日からチームの練習に合流しています。
トレード市場での動向と1月15日の制限解除
クミンガの契約には、1月15日までトレードできないという制限が含まれています。この日以降、ウォリアーズはクミンガをトレードすることが可能になります。契約の構造から見ても、クミンガが今シーズン途中、あるいは来オフシーズンにトレードされる可能性は非常に高いと考えられています。
今夏、フェニックス・サンズとサクラメント・キングスがクミンガ獲得に最も積極的でした。サンズはサイン・アンド・トレードで4年約9,000万ドル、プレーヤーオプション付きの契約を提示しましたが、ウォリアーズはロイス・オニールと複数の2巡目指名権という提案に興味を示しませんでした。キングスはマリーク・モンクとプロテクト付きの1巡目指名権を提示しましたが、これもウォリアーズは拒否しました。
クミンガ自身は、できれば新しいチームでトレーニングキャンプから始めたいという意向を持っていますが、1月15日以降にトレードが実現する可能性は依然として高いでしょう。新天地では、彼が求める「チームの第1オプション」としての役割を得られる可能性があります。
ジミー・バトラーの加入がもたらした影響
クミンガのウォリアーズでの立場をさらに複雑にしているのが、昨シーズン途中に加入したジミー・バトラーの存在です。バトラーの加入後、ウォリアーズの攻撃は飛躍的に改善し、守備も引き締まりました。しかし、これはクミンガの出場時間とタッチ数の減少を意味しました。
カリー、バトラー、ドレイモンド・グリーンという3人のアルファドッグがいるチームで、クミンガが望むような大きな役割を得ることは困難です。カー自身もバトラーについて「ジミーはアルファだ。ステフとドレイモンドもアルファだ。彼らがロッカールームを仕切っている」と述べており、クミンガがこの序列の中で上位に食い込むことの難しさを示唆しています。
クミンガのエージェント、ターナーは40分にわたるポッドキャストでの対談で、カーがクミンガに完全にコミットしていないことを指摘しました。また、サイン・アンド・トレードの契約の透明性についても語り、交渉の詳細を公にすることで、クミンガの市場価値を高めようとしました。
今後の展望とウォリアーズの戦略
ウォリアーズのフロントオフィスは、クミンガを「選手」と「交渉者」として意識的に分離しようとしています。10月2日のメディアデーで、カリーや他の選手たちは、クミンガがすぐにチームに戻ってくることを期待しており、雰囲気は良好になるだろうと述べました。
カーも、クミンガとの長い対話を数日以内に持つ計画があると語っています。「これは彼が望んでいた契約ではないかもしれないが、人生を変えるお金だ。彼がより良い選手になることを助け、さらにいくつかの契約にサインできるようにすることが全てだ。それが彼が焦点を当てるべきこと、そして私が焦点を当てるべきことだ」
しかし、現実的には、クミンガが1月15日以降にトレードされる可能性は高いでしょう。年間2,250万ドルという彼の契約は、サラリースワップの観点から見ても魅力的な金額です。トレードが実現すれば、獲得したチームはすぐに彼と長期契約を結ぶことが予想されます。
クミンガは10月2日、メディアとの対話で「それは誰もの目標だ。どこかにもっと長くいること。自分の未来はわからない。でも、それが私の目標であり、達成したいことだ。ここにもっと長くいることだ」と語りました。この発言からは、ウォリアーズに残りたいという気持ちと、自身のキャリアの不確実性への認識が入り混じった複雑な心境が読み取れます。
ウォリアーズは現在、ロースターを15人の標準選手で埋めることができない状況にあり、トレードを行わない限り、この問題は解決しません。セス・カリー(ステフィンの弟)、アル・ホーフォード、デアンソニー・メルトンといったベテランとの契約も進んでおり、チームの即戦力補強も同時に進めています。
2021年のドラフト全体7位指名だったクミンガにとって、この2025-26シーズンは自身の価値を証明する重要な年となるでしょう。新天地を求める彼の願いが実現するのか、あるいはウォリアーズでの関係修復が可能なのか、今後数ヶ月の動向が注目されます。

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