2024年1月、プレーオフ進出を目指すマイアミ・ヒートは、シャーロット・ホーネッツから平均23.2点をマークしていたテリー・ロジアーを獲得しました。その対価として送り出したのは、ベテランのカイル・ラウリーと、2027年にロッタリープロテクト付き、2028年には無条件となる1巡目指名権でした。当時、このトレードはヒートにとって「ファイナル再挑戦への最後のピース」と期待されていました。
しかし、あれから約21か月。ロジアーが2025年10月23日にFBIによって逮捕されたことで、このトレードは球団史に残る「最悪のディール」の一つとなる可能性が浮上しています。
トレード後のロジアーの急激なパフォーマンス低下
ホーネッツ時代に23.2点、6.6アシストという自己最高の成績を残していたロジアーですが、ヒート移籍後はまるで別人のようなパフォーマンスを見せました。
ヒートでの2023-24シーズン後半、ロジアーの平均得点は16.4点、アシストは4.6本まで低下しました。さらに深刻だったのは、加入後最初の4試合でチームが全敗したことです。プレーイン・トーナメントと1回戦では首の負傷で欠場を余儀なくされ、ヒートはボストン・セルティックスに敗退しました。
2024-25シーズンに入ると、状況はさらに悪化します。平均得点は10.6点まで落ち込み、3ポイント成功率はわずか29.5%という惨憺たる数字を記録していました。これはルーキーシーズン以来の低水準でした。12月12日のトロント・ラプターズ戦では、ヒートが勝利したにもかかわらず、ロジアーはチーム内で9番目の得点者に終わり、3ポイントシュートは6本中1本しか成功せず、2ポイントシュートは1本も打ちませんでした。
逮捕の背景──2023年3月の「異常な賭け」
ロジアーの逮捕は突然のものではありませんでした。起訴状によると、2023年3月23日、当時ホーネッツに所属していたロジアーは、ニューオーリンズ・ペリカンズ戦の前に幼なじみのデニーロ・ラスターに対し、第1クォーターで負傷を理由に試合を早期退場する計画を伝えたとされています。
その情報を受けたラスターは、他のギャンブラーに10万ドルでその情報を売却し、最終的に25万ドル以上の賭け金がロジアーの成績「アンダー」に投じられました。実際にロジアーは約10分間のプレー後、足の負傷を理由に退場し、5点4リバウンドという低い成績で終えました。この試合では、複数のスポーツブックがロジアー関連の賭けの受付を停止するほど異常な賭けの動きが見られました。
NBAは2023年3月にこの「異常な賭けの動き」を把握していましたが、リーグの方針に従い、調査中であることをヒートを含むどのチームにも通知しませんでした。そして2024年1月、NBAはこのトレードを承認しました。ヒートの関係者複数が、トレード時にロジアーが捜査対象であることを知らなかったと証言しています。
ヒートが取り得る選択肢
現在、NBAはロジアーを有給休暇扱いとしており、今後の処分はアダム・シルバー・コミッショナーに委ねられています。ロジアーの残契約は2640万ドルで、シルバー・コミッショナーには契約の無効化や出場停止処分を科す権限があります。
逮捕前からロジアーはマイナスの資産と見なされていたため、ヒートとしては契約が無効化されれば、贅沢税ラインから約2800万ドルの余裕が生まれることになります。
さらに注目されるのが、ドラフト指名権の返還請求です。もしホーネッツがギャンブル疑惑について知っていながらヒートに伝えなかった場合、NBAがトレードの調整を命じる可能性があります。過去には2015年、フィラデルフィア・76ersがジュルー・ホリデーの負傷歴を開示しなかったとして、ニューオーリンズ・ペリカンズに300万ドルの支払いを命じられた前例があります。
ただし、ESPNのボビー・マークスが指摘するように、チームは負傷に関する情報開示は義務付けられていますが、捜査に関する情報開示は明確に義務付けられていません。この「グレーゾーン」が、ヒートの救済を難しくする可能性があります。
ロジアーの弁護側の主張
ロジアーの弁護士ジェームズ・トラスティーは強く反論しています。「検察は1年以上前からテリーを『対象者』であって『標的』ではないと表現していました。しかし10月23日午前6時、FBI捜査官がホテルで彼を逮捕しようとしていると連絡がありました」とトラスティー弁護士は述べ、「自首の機会を与えず、プロスポーツ選手を恥ずかしめる写真撮影の機会を選んだ」と批判しました。
また、「NBAはテリーを問題なしとした。検察は信頼性に欠ける情報源の言葉を頼りにしており、実際の不正の証拠に基づいていない」と主張し、「テリーはギャンブラーではないが、戦うことを恐れず、この戦いに勝つことを楽しみにしている」と述べています。
ヒート内部の反応
逮捕後、ヒートの選手たちはロジアーへの支持を表明しています。エリック・スポエルストラ・ヘッドコーチは「テリーは私たち全員にとって大切な存在です」と述べ、バム・アデバヨは「チームとして彼を全面的に支援します。彼は私たちの兄弟です」とコメントしました。
しかし、シーズン開幕戦のオーランド・マジック戦でロジアーが「コーチの判断」で欠場していたことから、球団側は逮捕の可能性を事前に把握していた可能性も指摘されています。
今後の展望──ヒートにとっての教訓
ロジアーは12月8日に次回の法廷出廷が予定されています。有罪となれば、電信詐欺共謀罪とマネーロンダリング共謀罪により、長期の出場停止または契約無効化は避けられないでしょう。
このトレードは、ヒートにとって複数の教訓を残しています。第一に、キャリアハイの成績を記録している選手が必ずしも新しいチームでも同じパフォーマンスを発揮するとは限らないということ。ロジアーは第4のオプションとして期待されましたが、役割の変化に適応できませんでした。
第二に、NBAの調査情報開示の方針に問題がある可能性です。ヒートが事前に捜査の事実を知っていれば、別のトレード相手を探していたことはほぼ確実でしょう。リーグがチームを保護するためのより透明性の高い情報共有システムが必要かもしれません。
最後に、「失うものが大きいトレード」のリスクです。ヒートは比較的価値の高い1巡目指名権を放出してロジアーを獲得しましたが、パフォーマンスの低下と逮捕により、このトレードは球団にとって大きな負担となっています。もしホーネッツが2027年または2028年に高順位指名権を得ることになれば、ヒートの失策はさらに際立つことになります。
パット・ライリー・プレジデントは、デイミアン・リラードの獲得に失敗した後、ロジアーをプランBとして選びました。しかし、このプランBは、ヒートにとって高くつく代償となる可能性が高まっています。
引用: yardbarker

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