新リーグがもたらす革新と波紋
女子バスケットボール界に新たな転換点が訪れました。シアトル・ストームのエースであり、WNBA選手会会長を務めるネカ・オグミケが、2026年秋にデビュー予定の国際女子バスケットボールリーグ「Project B」との契約を発表しました。この動きは、単なる選手の移籍以上の意味を持っています。
Project Bは、アラナ・ビアード、キャンディス・パーカー、ローレン・ジャクソンといったレジェンドたちが創設・投資に関わる新リーグです。ヨーロッパ、アジア、南北アメリカの主要都市で7つのトーナメントを開催し、6チーム各11名の選手が参加する予定です。注目すべきは、その報酬体系です。
Front Office Sportsの報道によれば、Project Bの年俸は最低200万ドルからスタートし、複数年契約では1000万ドルを超える可能性があります。これはWNBAが新労働協約交渉で提案したとされる最高年俸85万ドルを大きく上回ります。また、UnrivaledよりもProject Bの年俸は高いと考えられています。
さらに重要なのは、全選手にリーグの株式が提供される点です。オグミケはAPの取材に対し「これは通常、私たち、つまり女性アスリートには提供されないものです。全員に公平にエクイティが提供されるということは、目を引くものでした」と語りました。
WNBPA会長の決断が持つ政治的意味
オグミケがProject Bとの契約を公表した第一号選手となったことは、偶然ではないでしょう。彼女はWNBA選手会の会長という立場にあります。この発表のタイミングは、現在進行中のWNBAの労使交渉に対する明確なメッセージと受け取られています。
実際、Front Office Sportsの報道では、WNBAの幹部たちはこの発表を「労使交渉に圧力をかける意図的な動き」と解釈しています。これは、ブリアナ・スチュワートとナフェサ・コリアーが共同創設したUnrivaledに対する見方と同様です。
一部の関係者は、労使交渉が難航し続けた場合、WNBA選手がシーズンをボイコットする可能性さえ示唆しています。オグミケはAPの取材で「多くの選手が、短い現役時代を最大限に活かすために、できることをやっています。これは私にとってそれを実現するチャンスです」と述べ、スチュワートやコリアーと同様の論理を展開しています。
ビアードによれば、Project Bには「複数のオールWNBA選手、台頭中の若きスーパースター、そして4大陸からの選手」が既に契約しているとのことです。オグミケの公表をきっかけに、今後続々と大物選手の発表が続く可能性があります。
サウジアラビアマネーの影と倫理的ジレンマ
Project Bを巡っては、財政的な透明性に対する懸念も浮上しています。リーグは、ノバク・ジョコビッチやスローン・スティーブンスといった著名なアスリート投資家を前面に押し出していますが、サウジアラビアからの資金提供の度合いや、これがスポーツウォッシング(人権侵害から目をそらすためにスポーツを利用すること)ではないかという疑問が提起されています。
APのダグ・ファインバーグ記者の取材によれば、Project B側は「サウジアラビアの投資家からの資金はない」と主張しています。ただし、イベント運営会社としてサウジアラビアのSelaを利用しているとのことです。
しかし批評家たちが指摘するように、Selaはサウジアラビア公共投資基金(PIF)が所有しています。Project B側はその後、「Selaは試合運営に関与する可能性があるが、SelaやPIFは直接の投資家ではない」と釈明しましたが、これは言葉の綾に過ぎないという見方もあります。
もちろん、アメリカ政府や米国企業も道徳的に完璧とは言えません。スポーツは社会の反映であり、腐敗にまみれた世界において、スポーツも同様に不透明な水域を泳いでいます。女性アスリートたちは、その水域に飛び込むか、別の道を切り開くか、あるいは多くの人々と同様に、不快感を抱きながら不完全な選択を続けるかの選択を迫られています。
女子バスケ界の未来を左右する分岐点
オグミケとビアードは、ロサンゼルス・スパークスで8シーズンにわたってチームメイトでした。またオグミケはパーカーとも同僚だったことがあります。こうした個人的な関係が今回の決断に影響を与えたことは間違いないでしょう。
しかし、この動きが持つ影響は個人的な絆を超えています。WNBAの選手たちは、自分たちの市場価値を正当に評価されることを求めています。Project BとUnrivaledの出現は、WNBA側に対して、選手たちには他の選択肢があることを明確に示しています。
今後数カ月で、より多くのスター選手がProject Bへの参加を表明する可能性があります。これはWNBAの労使交渉に大きな影響を与えるでしょう。選手会会長の決断は、単なる個人的なキャリア選択ではなく、女子プロバスケットボールの未来を形作る政治的な意思表示なのです。
引用: sports.yahoo

WNBA FAN BLOG運営者/バスケットボールジャーナリスト
WNBA・NBAをこよなく愛し、バスケットボール歴30年以上。特にWNBAの魅力を日本に広げるため、2025年5月に WNBA FAN BLOG をスタートしました。試合結果や選手情報だけでなく、独自の視点による戦術分析や選手インタビュー、海外ニュースの速報翻訳まで幅広くカバーしています。
現在、日本国内では数少ないWNBA専門メディアとして、最新ニュースをどこよりも速く正確にお届けすることをミッションにしています。
得意分野
試合分析・戦術解説
選手のデータ分析(EFF、PER など)
海外ニュース速報翻訳(英語 → 日本語)
サイト目標
日本最大の WNBA 情報ポータルサイト構築
日本のバスケットボールファンコミュニティ作り
関連 SNS アカウント
X(Twitter):@WNBAJAPAN
フォローしてWNBA の最新情報をキャッチしてください!





