オールスターブレイクが明けて後半戦に入るこのタイミングで、チームメイトが少しだけ本音をこぼしました。アリヤ・ボストンが、キャンディス・パーカーと共同で配信するポッドキャスト「Post Moves」の公開収録で、ケイトリン・クラークが受けた今季7個目のテクニカルファウルについて、率直な戸惑いを口にしたのです。糾弾というより、あきれ半分の愛情表現に近いトーンでした。ただ、この一言が持つ重さは決して軽くありません。クラークはいま、あと1個で自動的に出場停止となる崖のふちに立っているからです。
28点リードの場面で出た「7個目」の中身
問題の場面が起きたのは、フィーバーがコネチカット・サンを123対88で下した試合の第3クォーターでした。クラークがこの日記録したのは27得点11アシストで、いずれも両チーム最多。試合はすでに95対67と28点差がつき、勝敗の行方はほぼ決していました。
きっかけはサンのオリビア・ネルソン=オドダによるファウルです。そこにサニヤ・リバーズが割って入り、クラークに「自分が抑え込んでいる」という趣旨の言葉を投げました。これに対しクラークが返したのが、スコアボードを見ろという一言。審判は両者にダブルテクニカルを宣告し、クラークの今季通算は7個に到達しました。
数字だけを並べれば、クラークの今季は文句のつけようがありません。オールスターブレイク時点で平均21.0得点、3.8リバウンド、7.9アシスト。得点はリーグ4位、アシストは2位につけています。それでもテクニカルの累積という一点だけが、彼女のシーズンに影を落とし続けています。
ボストンが公開収録で漏らした戸惑い
ボストンが語ったのは、まさにこの「なぜあの場面で」という部分でした。彼女はクラークについて、あれは遊んでいるようなものだったと表現し、テクニカルが出た瞬間に周囲が「またか」という反応を見せたことを振り返っています。
さらにパーカーから、28点も離した場面でわざわざ言い合いに乗る必要はなかったのではと問われると、ボストンははっきりと言い切りました。
「本当に意味が分からなかった」
叫んで発散するだけでもよかったはずだ、というのがボストンの見立てです。パーカーに「それは効かなかったでしょう」と返されると、ボストンは「試してもいない」と応じました。ルーキーイヤーから隣で戦ってきた相棒だからこそ言える、遠慮のない指摘だったように思います。
背景を押さえておくと、クラークはこれまで一貫して、自分のプレースタイルを変えるつもりはないと語ってきました。情熱と闘志こそが自分を今の選手にした要素だ、という主張です。この姿勢自体はファンから広く支持されています。ただ、その姿勢とルールの厳格さが、いま真正面からぶつかっているのが現状です。
8個目が出た瞬間、何が起きるのか
WNBAの規定では、シーズン通算8個目のテクニカルで自動的に1試合の出場停止となります。しかもそこで終わりではなく、10個目、12個目、14個目と、以降は2個ごとに1試合ずつ出場停止が積み上がる仕組みです。つまりクラークが今のペースを維持したまま後半戦を戦えば、1試合欠場では済まない可能性すらあります。
救済の道がないわけではありません。リーグは判定を取り消す権限を持っており、フィーバー側もこのテクニカルについて異議を申し立てたと報じられています。ただ、確率という観点では厳しいと言わざるを得ません。統計サイトAcross the Timelineの集計によれば、今季ここまでコールされた144個のテクニカルのうち、取り消されたのはわずか4個です。クラーク自身、今季は1個も取り消されていません。6月22日のフェニックス・マーキュリー戦では、拍手をした行為が挑発にあたるとしてテクニカルを受けたほどです。
ちなみに7個というのは今季のリーグ最多タイで、並んでいるのはアトランタ・ドリームのエンジェル・リースです。リーグを代表する2人の看板選手が揃って出場停止の一歩手前にいるという状況は、審判の基準そのものへの議論を呼び続けています。ボストンの「意味が分からない」という言葉は、クラークだけでなく、この基準の分かりにくさにも向けられていたのかもしれません。
後半戦のフィーバーはどう戦うのか
フィーバーはオールスター明けの初戦でシアトル・ストームと対戦します。プレーオフ争いが本格化するこの時期に、リーグ2位のアシスト数を誇る司令塔を1試合でも欠けば、影響は小さくありません。逆に言えば、クラークが自分の熱量を保ったままテクニカルだけを回避できるかどうかが、そのまま後半戦のフィーバーの上限を決めることになります。
ボストンの一言は、単なる身内いじりではなく、優勝を狙うチームからの静かな注文だったように見えます。次の1個が出るのか、それとも出さずに走り切るのか。後半戦のフィーバーを見る楽しみが、また一つ増えました。

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