ドイツ・ベルリンで開催中のFIBA女子バスケットボールワールドカップ2026は、9月10日から準々決勝に入ります。4連覇を狙うアメリカが最初に対峙するのはハンガリーです。そしていま、そのアメリカで最も語られているのは先発5人ではなく、ベンチの顔ぶれの方でした。ケイトリン・クラークとエンジェル・リース。大学時代から比較され続けてきた2人が、同じユニフォームを着て、同じタイミングでコートに送り出されています。今大会が始まる前、この光景を正確に思い描けた人はどれだけいたでしょうか。
ベンチから出た13得点と7アシスト、グループフェーズが残した数字
アメリカはグループフェーズを3戦全勝で通過しました。ただし中身は一様ではありません。第2戦のイタリア戦は55対52という3点差の辛勝で、2桁得点を記録した選手はわずか1人。シュートも決まらず、王者らしさとは程遠い内容でした。その反動のように、続くチェコ戦は105対64、41点差の圧勝で終わっています。
この2試合で存在感を示したのが、先発ではない2人でした。チェコ戦でリースは13得点6リバウンド、クラークは9得点7アシストを記録しています。いずれもベンチスタートからの数字です。大会全体で見ると、クラークの1試合平均6.3アシストはチーム最多であり、出場全選手の中でも3位に位置しています。リースはオフェンスリバウンド9本がチーム最多、スティール4本とブロック3本はいずれもチーム2番目です。得点表には表れにくい領域で、着実に数字を積み上げていることが分かります。
カーラ・ローソン率いるアメリカがこの2人をベンチに置いた判断には、当初から少なくない批判が向けられました。ただ、グループフェーズを終えてみると、試合の流れが淀んだ場面にエネルギーを注ぎ込むという役割が明確に機能しています。ナフィーサ・コリアーが本来の持ち場ではない3番を引き受けている構図と重ねると、この代表チームは役割の再配置によって成り立っていると言えそうです。
102対85で終わった夜から3年、ライバル物語がたどり着いた場所
2人の関係を語るとき、必ず持ち出されるのが2023年のNCAA決勝です。リースのLSUがクラークのアイオワを102対85で破り、試合終盤のジェスチャーが全米規模の議論に発展しました。翌2024年のドラフトでクラークは全体1位でフィーバーへ、リースは7位でスカイへ進み、以来2人の対戦は常に注目カードとして扱われてきました。リースは今季アトランタ・ドリームに移籍しています。
その2人が、いまは同じベンチに並んでいます。AP通信のダグ・ファインバーグの取材に対し、クラークはリースについて「彼女はリーグでも屈指のモーターを持っています」と語りました。互いに競争心が強いことこそ共通点であり、それがリースの魅力なのだという趣旨です。
興味深いのは、その激しさが数字にも表れている点です。今季のWNBAでテクニカルファウルが最も多いのは、クラーク、リース、そして同じくアメリカ代表のカリーア・コッパーの3人で、いずれも7個で並んでいます。リーグでは互いに火花を散らす材料だったその気性が、代表では同じ方向を向いている。ライバル関係が消えたのではなく、向ける先が変わっただけ、という表現が実態に近いはずです。
ハンガリー戦の先にあるもの、ロサンゼルスへの助走という視点
準々決勝の相手ハンガリーは、1998年以来となる本大会出場を果たしたチームです。196センチのドルカ・ユハースを擁する高さのあるフロントコートが持ち味で、アメリカがイタリア戦で見せた停滞を繰り返すようなら、簡単な試合にはなりません。ユハースはかつてペイジ・ベッカーズとチームメイトだった選手でもあり、その意味でも見どころのある一戦です。勝てば準決勝で、オーストラリア対スペインの勝者と当たります。
ここで注目したいのは、ローソンがノックアウトステージでも同じ起用法を続けるかどうかです。短期決戦では先発を固定して立ち上がりを取りにいく発想もありますが、この代表チームの最大の強みは明らかに層の厚さにあります。流れを変えられる駒をベンチに残しておくことは、4日間で最大3試合を戦う日程を考えれば十分に合理的です。
そしてもう一つ、2028年のロサンゼルス五輪という視点があります。今大会のアメリカは、クラーク、リース、ベッカーズら世界大会初出場の選手を多く含む編成で臨んでいます。ここで勝ち切る経験を積めるかどうかは、2年後の代表構成に直結するはずです。ベンチスタートという扱いは、この世代にとって不遇ではなく、助走なのかもしれません。
準々決勝の日程と、日本代表が残したもの
アメリカ対ハンガリーは日本時間9月10日18時30分に開始します。同日は21時30分にフランスの試合が続き、日付が変わって11日0時45分にベルギー対ドイツ、3時45分にスペイン対オーストラリアが組まれています。準決勝は9月12日、決勝と3位決定戦は9月13日です。
日本は9月9日、ハンガリーとの準々決勝進出決定戦に63対84で敗れ、今大会を1勝で終えました。町田瑠唯が12アシストを記録して奮闘しましたが、47年ぶりのベスト8には届きませんでした。日本の夏は終わりましたが、ベルリンの4日間はまだ続きます。同じコートで戦った相手が、どこまで勝ち上がるのか。その視点で追いかけると、この準々決勝はまた違った表情を見せてくれるはずです。

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