河村勇輝

河村勇輝の現地メディアの評価まとめ:シカゴ・ブルズ契約後の立ち位置

ブルズが河村勇輝をサマーリーグに招待した理由

2024-25シーズンにメンフィス・グリズリーズでNBAデビューを果たした河村勇輝選手は、翌シーズンに向けて所属先を探していました。グリズリーズでは主力ポイントガードのジャ・モラントの存在もあり平均出場時間は4分程度に留まりましたが、それでもシーズン最終戦で12得点・5リバウンド・5アシストを記録するなど潜在能力を示していました。しかしグリズリーズは河村との2ウェイ契約を更新しなかったため、彼は新たなチャンスを求めていたのです。

そこで白羽の矢を立てたのがシカゴ・ブルズでした。ブルズは2025年のサマーリーグに向けたロースターに河村を招待します。当時のブルズは先発PGのジョシュ・ギディーとの契約交渉が難航し、控えPGのトレ・ジョーンズも前季に負傷離脱、さらに長期離脱中だったロンゾ・ボールも他チームへ放出済みという状況で、バックコートの層を厚くする必要がありました。5フィート8インチ(約173cm)とNBAでは最も小柄な河村ですが、そのサイズのハンデを「抜け目ないプレーメイク」で補っていると評されており、チームに不足しがちなゲームメイクとスピードを提供できる存在として期待されたのです。

さらに河村自身も「NBAのエコシステムに食い込むにはまず2ウェイ契約からでも始めたい」と考え、このサマーリーグ参加の機会を掴むためにブルズを選択したと報じられています。実際、ブルズのサマーリーグチームを率いるビリー・ドノバン三世コーチ(※ヘッドコーチのビリー・ドノバンの息子)は、サマーリーグ開幕戦の大敗にも「ユウキ(河村)がチームを落ち着かせてくれた」と唯一ポジティブな点に挙げたほどで、河村の試合コントロール能力は当初からチーム内で高く評価されていました。総じて、「エナジッシュなプレースタイルとダイナミックなパス能力」でオープンコートのゲームメーカーとなれる河村の長所は、当時のブルズのニーズに合致していたと言えます。

サマーリーグで際立ったプレーとメディアの評価

河村勇輝はラスベガスでのサマーリーグ5試合を通じて平均約10得点・6アシスト・2スティールという立派な成績を残し、3ポイント成功率も39%と高精度でした。ベンチスタートながら常に真っ先に起用され、特に7月14日のインディアナ・ペイサーズ戦では15得点・10アシストのダブルダブルをマークし勝利に大きく貢献。また連戦となった7月16日のミルウォーキー・バックス戦でも9得点・6アシストを挙げ、巧みなパス捌きで観る者を沸かせました。試合後、NBA公式のSNSアカウントが彼を指して「Yuki Kawamura is a passing WIZARD(河村勇輝はパスの魔法使いだ)」と称したほど、そのプレーメイクは注目を集めました。

ディフェンス面でも河村の小さな体から繰り出される闘志は光っています。例えばペイサーズ戦と翌サクラメント・キングス戦で連続して3スティールを記録し、常に94フィート(コート全体)で相手にプレッシャーをかけ続ける姿は「フルコートで相手を捕まえ続ける心臓(ハート)の持ち主」との評価を得ました。昨年のドラフト1巡目指名でチームの将来を担うマタス・ブゼリスも、河村について「彼はコート上でフルコートプレスから何でもやってのける。まさに『ハート(心)で身長のハンデを補っている選手』だ。彼と一緒にプレーできることは大きいし、彼は本当に素晴らしい選手であり人格者だ」と絶賛しています。「Heart over height(身長ではなくハートで勝負)」という表現通り、身長差をものともせず食らいつくプレースタイルがチームメイトにも刺激を与えているようです。

米スポーツメディアも河村の活躍を連日伝えました。ESPNやBleacher Reportといった大手もサマーリーグのハイライトで河村の妙技を取り上げ、Sam Smith記者は「彼のアシストや果敢な競争心はサマーリーグで必見の存在となっている」と評価しています。一方で、その小柄さゆえに「派手なハイライトは提供してくれるが、NBAレベルでフィジカル面を乗り越えられるかという懸念は依然残る」と冷静な分析もありました。実際、Bleacher Reportのザック・バックリー記者は河村と同じく話題を集めた身長7フィート超のルーキー選手に言及しつつ、「5フィート8インチの河村も確かに楽しいハイライトを生んだが、フィジカルの課題をクリアできるかという pressing questions(差し迫った疑問)には答えを出せていない」と指摘しています。このようにメディアの論調は総じて河村のプレー自体は高く評価しつつ、NBAで生き残るためのハードルにも触れるバランスの取れたものとなっています。

アメリカ現地の反応:SNSとジャーナリストの声

河村勇輝はすでに「NBAファンの間では一種のカルト的ヒーロー」になりつつあるとも報じられています。事実、サマーリーグ期間中にはSNS上で彼のプレー動画が拡散され、「Yuki Show(ユウキ・ショー)の開幕だ!」「彼はまるでマジック(ジョンソン)2.0だ」といった熱狂的なコメントが多数寄せられました。またシカゴ・ブルズ公式X(旧Twitter)も河村のスティールから得点、さらには直後に再びコート全体でディフェンスに戻るクリップを投稿し、ファンから「彼がロスターに入らない理由はない」「毎日『ユウキと契約しろ』と呟いているよ」といった声が上がるなど、ブルズファンのみならず各地のNBAファンが「#SignYuki」ムーブメントを起こす勢いでした。

記者や識者からも好意的なリアクションが目立ちました。NBA情報ブレイカーのシャムズ・シャラニア氏は、河村がサマーリーグで好調を維持する中でブルズが「5-foot-8 point guard amid a strong summer league(サマーリーグで活躍中の5フィート8インチのPG)」との契約合意に至ったと速報し、このニュースは瞬く間に全米に伝わりました。またシカゴの名物記者KCジョンソン氏は自身のXで「ジャーミール・ヤングを解雇してユウキマニア(Yukimania)に道を譲ることに。ヤングは1試合で37得点する爆発もあったが、総合的には河村ほど上手くいかなかった」とツイートし、ブルズが河村の安定した貢献度を評価した結果の契約だと示唆しています。実際、ブルズはサマーリーグ開幕前から「河村は昨季リーグ最短身長ながら巧みなプレーメイクでその弱点を相殺してきた」という紹介を行っており、地元メディアも期待の眼差しを向けていました。総じて現地の記者・解説者たちは、河村のプレーぶりに驚き称賛しつつも「この活躍が本契約やNBA定着に繋がるか」に注目している状況です。

他の若手ガードとの比較と将来への期待

シカゴ・ブルズのサマーリーグ陣容には河村の他にも、前年ドラフト全体12位指名からNBA復帰を目指したジョシュ・プリモや、地元シカゴ出身でGリーグ得点源のジャボン・フリーマン=リバティなど複数のガードがいました。しかし、その中でチームが2ウェイ契約を勝ち取らせたのは河村でした。比較対象となったジャーミール・ヤングはサマーリーグで1試合40得点という大記録を樹立しましたが、ブルズは「ヤングの派手な一発より河村の安定した総合力」を選んだ形です。事実、河村は5試合でチーム最多となる計31アシストを記録し、これは少なくとも2013年以降のブルズのサマーリーグで歴代2位の数字でした。またリーグ全体で見ても2025年のサマーリーグで平均6.0アシスト・2.0スティール以上をマークした選手は河村を含め3人しかおらず、スタッツ面でも突出した存在だったことが分かります。

今後の期待値という点では、ブルズは河村をまずGリーグ(傘下のウィンディシティ・ブルズ)主体で育成しつつ、必要に応じてNBAに呼び戻す方針と見られます。2ウェイ契約枠は他にフォワードのエマニュエル・ミラーとドラフト2巡目指名のラチャン・オルブリッチが占めていますが、球団内部では「新人ビッグマンのノア・エッセンゲにとっても、トランジションでテンポを上げられるサヴィーなパスファーストPG(河村)の存在は大いにプラスになるはずだ」という声もあるようです。これは河村のパスセンスがチーム全体の若手育成にも好影響を与えるという評価の表れでしょう。

日本人選手としては八村塁選手に次いで史上二人目となるNBAプレーヤー(日本生まれ)となった河村勇輝ですが、本人は現状に満足することなく「まだNBAでプレーできると信じている。2ウェイでも何でもいいから契約を勝ち取りたい」と語っていました。その言葉通り、見事ブルズとの契約を手にした今、次なる目標はこの「身長のハンデを情熱で乗り越える」ガードが真にNBAの舞台で活躍できるかどうかです。サマーリーグで見せた「観る者を魅了するアシストと relentless(容赦ない)なフルコートディフェンス」がレギュラーシーズンでも発揮できれば、河村勇輝という名前がシカゴの地で現実のものとなる日も遠くないかもしれません。日本そして現地アメリカから寄せられる熱いエールを胸に、河村の挑戦は続いていきます。

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