NBA史上最高額の給与を得てきたレブロン・ジェームズが、実は史上最もアンダーペイド(過小評価)されてきた選手だった――。HoopsHypeが開発した「リアル・バリュー」という独自指標が、こんな驚くべき事実を明らかにしました。この指標は、選手のコート上での生産性、年齢、ポテンシャルなどを総合的に評価し、「本来その選手が稼ぐべき金額」を算出するものです。
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リアル・バリューが暴く給与格差の実態
HoopsHypeのデータアナリスト、アルベルト・デ・ロアが3年前に開発したこの指標は、1990-91シーズン以降の35年間にわたるNBAの完全な統計データと給与情報を分析しています。
レブロンの場合、キャリア通算で約2億2070万ドル(約220億円)もアンダーペイドされてきたと算出されています。これは、彼のルーキースケール契約終了後、約17年間にわたってマックス契約を結び続けてきたにもかかわらず、コート上での圧倒的な貢献度を考えると、それでも不十分だったということを意味します。
特に顕著だったのが2008-09シーズンです。この年、クリーブランド・キャバリアーズからレブロンが受け取った給与は1440万ドルでしたが、リアル・バリューは4440万ドルと算出され、その差額は3000万ドルに達しました。この3000万ドルの差額は、データベース内で2番目に大きな単年度の給与格差となっています。
この年のレブロンは平均28.4得点、7.6リバウンド、7.2アシスト、1.7スティール、1.1ブロックという驚異的な成績を残し、MVPを獲得。チームを66勝16敗という圧倒的な成績でレギュラーシーズンを終えました。
2024-25シーズンの最大バーゲン選手
現役選手の中で最もアンダーペイドとされているのが、オクラホマシティ・サンダーのシェイ・ギルジャス-アレクサンダーです。2024-25シーズン、彼のマックス契約額は約3590万ドルでしたが、リアル・バリューはなんと9700万ドルと算出されました。
この数字は、彼が実際の給与の2.7倍近い価値をチームにもたらしていることを示しています。シーズン平均31.4得点、4.8リバウンド、5.5アシスト、1.6スティールという成績で、オールスター選出とオールNBAファーストチーム入りを果たし、経験の浅いサンダーをプレーオフ目前まで導いた彼の貢献度を考えれば、この評価も納得できます。
歴代アンダーペイドランキング
リアル・バリュー指標による歴代最もアンダーペイドされた選手のトップには、レブロンに続いてニコラ・ヨキッチが2位にランクインしています。デンバー・ナゲッツのセンターは、まだ29歳という若さながら、キャリア通算で約1億5150万ドルもアンダーペイドされてきたと算出されています。
2023-24シーズン、ヨキッチのマックス契約額は4760万ドルでしたが、リアル・バリューは8300万ドルと評価され、3540万ドルものアンダーペイとなりました。MVPを獲得した彼の圧倒的なパフォーマンスを考えれば、これも妥当な評価といえるでしょう。
3位にはルカ・ドンチッチがランクインしています。ダラス・マーベリックスのスーパースターは、ルーキーシーズンからボーダーラインのオールスター選手として活躍し、2年目以降はオールNBAファーストチーム常連となっています。
オーバーペイドの代表例
一方、最もオーバーペイドとされている選手のトップは、元オールスターのゴードン・ヘイワードです。2017年夏にボストン・セルティックスとマックス契約を結んだ彼は、その後の怪我に悩まされ、7シーズンで564試合中わずか319試合の出場にとどまりました。この期間、約2億4000万ドルの給与を受け取りながら、平均14.5得点という成績では、リアル・バリューとの乖離が大きくなるのも無理はありません。
現役選手では、フェニックス・サンズのブラッドリー・ビールが注目されています。2023-24シーズン、4670万ドルの給与を受け取りながらわずか53試合の出場で平均18.2得点という成績は、リアル・バリューとの差が3500万ドルに達したと算出されています。給与額ではリーグ6位でありながら、WS/48、VORP、BPMといった主要指標でトップ85位圏外という評価が、この結果につながっています。
ルーキー契約の圧倒的なコスパ
興味深いのは、リアル・バリュー指標が明らかにした「ルーキー契約の圧倒的なコストパフォーマンス」です。トップ10の最もアンダーペイドされた選手のうち9人が、年俸200万ドル以下のルーキー契約または最低保証契約の選手たちでした。
ニューオーリンズ・ペリカンズのブランドン・ボストンは、効率性ポイントあたりわずか1064ドルというリーグ平均の1万6952ドルを大きく下回るコストで、チームに貢献しています。これは、リーグ平均より93.7%も効率的という驚異的な数字です。
一方、スーパースターたちのコストは桁違いです。ステフィン・カリーは効率性ポイントあたり3万3664ドル、レブロンは3万4013ドルと、ルーキー契約の選手たちの30倍以上のコストがかかっています。
チーム戦略への影響
この指標は、チームのGMやフロントオフィスにとって重要な示唆を与えています。オクラホマシティ・サンダー、メンフィス・グリズリーズ、サンアントニオ・スパーズといったチームは、ルーキー契約の若手選手を効果的に育成し、優れた開発パイプラインとスマートな契約戦略によって、給与効率の高いロスター構築に成功しています。
特にサンダーは、シェイ・ギルジャス-アレクサンダーという圧倒的なバーゲン選手を中心に、若手の高バリュー選手たちを揃えることで、衰退したスター選手への過剰な支払いを避け、柔軟性を維持する戦略を実践しています。
契約更新の難しさ
しかし、ルーキー契約で圧倒的なパフォーマンスを見せた選手がマックス契約に移行すると、その価値を上回り続けることは極めて困難になります。トレイ・ヤングがその好例です。1年前の調査では歴代7位のアンダーペイド選手でしたが、最新の調査では24位まで後退しました。わずか1シーズンで、キャリア通算のアンダーペイド額が7220万ドルから4560万ドルへと大幅に減少しています。
これは、マックス契約に見合うパフォーマンスを維持し続けることの難しさを如実に示しています。レブロン、ヨキッチ、ドンチッチといった選手たちが、マックス契約を大きく上回る価値を提供し続けていることが、いかに特別なことかがわかります。
指標の限界と今後
もちろん、リアル・バリュー指標にも限界はあります。怪我による欠場は考慮されていますが、ディフェンスアンカーやチームリーダーとしての貢献など、統計には表れにくい価値は完全には反映されていません。
また、サラリーキャップという制約がある現実のNBA では、すべての選手に「本来の価値」通りの給与を支払うことは不可能です。それでも、この指標は選手の真の価値を測る一つの客観的な基準として、契約交渉やチーム編成の参考になることは間違いありません。
レブロンが近い将来、ヨキッチやシェイに「史上最もアンダーペイドされた選手」の座を譲る日が来るかもしれません。しかし、20年以上にわたってマックス契約すら上回る価値を提供し続けてきたレブロンのキャリアは、まさに伝説的としか言いようがありません。
引用:hoopshype

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