WNBA2025年シーズンで新人王を獲得したペイジ・ベッカーズが、3on3バスケットボールリーグ「Unrivaled」の第2シーズンで新設チーム「Breeze」の全体1位指名を受けました。ダラス・ウィングスでのルーキーシーズンを終えたばかりのベッカーズにとって、この参戦は単なるオフシーズンの活動ではなく、WNBA選手の収入構造そのものを問い直す象徴的な出来事となっています。
新チーム「Breeze」の戦力構成と戦略的意図
Unrivaledリーグは第2シーズンに向けて2つの新チーム「Breeze」と「Hive」を追加しました。拡張ドラフトのルールは、プレーオフ進出チームが2名、非進出チームが1名の選手を保持でき、残りの選手がドラフトプールに入るという仕組みです。
Breezeが全体1位でベッカーズを指名した背景には、明確な戦略があります。ベッカーズは2025年WNBAシーズンでオールスターゲームのスターターに選ばれ、オールWNBAセカンドチームにも選出されました。ウィングスのチーム成績は10勝34敗と低迷しましたが、個人としては文句なしのシーズンを送っています。
Breezeの完成したロスターを見ると、ベッカーズを中心にリッケア・ジャクソン、ドミニク・マロンガ、アーリ・マクドナルド、ケイト・マーティン、そしてキャメロン・ブリンクという布陣です。特にブリンクとの組み合わせは注目に値します。ブリンクは長身でディフェンス力に定評があり、ベッカーズのプレイメイク能力と組み合わせることで、3on3という限られたスペースでも多彩な攻撃パターンを展開できる可能性があります。
3on3のフォーマットでは、個々の選手の判断力とスキルセットがより顕著に結果を左右します。Breezeはベッカーズというトップティアのプレイメーカーを軸に、複数のスコアリングオプションを揃えたバランスの良い編成と言えるでしょう。
WNBA選手の収入問題を浮き彫りにする参戦
ベッカーズは実はUnrivaledリーグの投資家でもあります。第1シーズン時はまだコネチカット大学でプレーしていたため選手としては参加できませんでしたが、「インターン」としてシャツをたたむなどの活動をしていたというエピソードが残っています。
しかし今回の参戦で最も議論を呼んでいるのは報酬面です。ベッカーズはUnrivaledリーグの第1シーズンで得る収入が、WNBAのルーキー契約4年間の総額を上回ると報じられています。この事実は、WNBA選手たちがなぜ新しい労使協定を強く求めているかを端的に示しています。
WNBAのルーキー契約は段階的な給与体系になっており、1位指名選手でも年間約8万ドル程度からスタートします。一方でUnrivaledリーグは選手への報酬配分を重視しており、シーズンも短期集中型です。ベッカーズのような人気選手にとっては、オフシーズンに高収入を得られる機会として非常に魅力的な選択肢となっています。
この構図は、WNBA選手たちがオフシーズンに海外リーグでプレーしてきた従来のパターンとは異なります。Unrivaledはアメリカ国内で開催され、移動負担も少ないため、身体的な負荷を抑えながら収入を得られる点が革新的です。
ウィングスの選手たちが集結する理由
興味深いことに、ベッカーズ以外にも多くのウィングス選手がUnrivaledリーグに参加します。マディ・ジーグリストは「Laces」でプレーし、アリケ・オグンボワレとリー・ユエルは「Mist」に所属、そしてヘイリー・ジョーンズとアジア・ジェームズは育成プールに入っています。
ウィングスは2025シーズン後にヘッドコーチのクリス・コクレーンズを解任し、ホセ・フェルナンデスを新監督として迎えました。アシスタントコーチだったノーラ・ヘンリーはUnrivaledの「Rose BC」のヘッドコーチとして第1シーズンで優勝を果たしており、エンジェル・リースやチェルシー・グレイといったスター選手を指導しました。ヘンリーのウィングススタッフとしての今後の地位はまだ明らかになっていませんが、一部のファンは彼女がWNBAのヘッドコーチに昇格することを期待しています。
ウィングスの選手たちがこれほど多くUnrivaledに参加する理由は複合的です。第一に報酬の魅力、第二にオフシーズンでもバスケットボールのスキルを維持できる環境、そして第三にウィングスというチームの低迷が続いていることへの対応という側面もあるでしょう。10勝34敗というシーズンを経験した選手たちにとって、Unrivaledは自信を取り戻し、新しい戦術やポジションに挑戦できる貴重な場となります。
3on3という新しいバスケットボール文化の可能性
Unrivaledリーグが採用する3on3フォーマットは、5on5のWNBAとは大きく異なります。コートは狭く、選手の個人技術とスピードがより重視されます。またスケジュールも選手に配慮した設計になっており、身体への負担が軽減されています。
第1シーズンでは選手たちがこの新しいフォーマットに迅速に適応し、高いレベルのプレーを披露しました。3on3は瞬間的な判断とクリエイティビティが求められるため、ベッカーズのようなハイIQプレイヤーにとっては自分の強みを最大限に発揮できる舞台と言えます。
さらに3on3はバスケットボールの普及という観点でも意義があります。少人数で気軽にプレーできるフォーマットは、世界中のストリートバスケットボール文化と親和性が高く、WNBAとは異なる観客層を取り込める可能性があります。Unrivaledリーグがどこまで成長できるかは未知数ですが、第2シーズンでベッカーズという新人王を獲得することができたのは、リーグの信頼性と将来性を示す重要な指標です。
今後の展望:WNBA選手のキャリア設計が変わる
ベッカーズのUnrivaled参戦は、WNBA選手たちのキャリア設計に新しい選択肢を提示しました。従来は海外リーグでプレーするか、完全にオフシーズンとして休養するかの二択でしたが、今後はUnrivaledのような国内の短期リーグが第三の選択肢として定着する可能性があります。
これはWNBA側にとっても無視できない動きです。もしトップ選手たちが国内の別リーグでより高い報酬を得られるようになれば、WNBAは選手の待遇改善を加速させざるを得なくなります。実際、次回の労使協定交渉では報酬体系の大幅な見直しが議題になると予想されています。
ベッカーズはまだキャリアの初期段階にありますが、すでに投資家としても活動し、自分の市場価値を最大化する戦略を取っています。このような新世代の選手たちが増えることで、女子バスケットボール界全体のビジネスモデルが変革される可能性があります。
Breezeでのベッカーズのパフォーマンスは、彼女個人のキャリアだけでなく、WNBA選手全体の未来にも影響を与える重要な試金石となるでしょう。
引用: yardbarker

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