WNBAのウェーバー制度が、これほど短時間で明暗を分けた例も珍しいと思います。ニューヨーク・リバティが8月6日に解雇したベトナイジャ・レイニー=ハミルトンを、ワシントン・ミスティックスが8日の午後にウェーバーで獲得しました。2024年の優勝メンバーが、48時間ほどで次のユニフォームを手にした計算になります。しかも移った先は、球団タイ記録の6連勝で走っているチームです。第一印象を正直に書けば、これは拾った側の判断がかなり的確だった、という話に見えます。
17試合で平均4.7得点、そして8試合連続のDNP
2026年の彼女にとって、この夏は苦しいものでした。開幕から4試合は先発を務めたものの、そこからベンチに回り、出場時間は削られ続けます。17試合で平均4.7得点は、ブレイクした2020年以降で最も低い数字です。
決定的だったのは7月のテンポ戦でした。チームメートのジョンケル・ジョーンズが落としたシューズを戻そうとした場面が、相手のマリーナ・メイブリーに向かって投げた行為と判断され、退場処分を受けます。本人は返そうとしただけだと説明していますが、結果的にこれがリバティでの最後の出場となりました。以降8試合はすべて「DNP-コーチ判断」。トレード期限までに移籍先は見つからず、8月6日に解雇が発表されています。
5.6得点から17.2得点へ、そしてファイナル2年連続先発
数字だけ見れば失速に映りますが、彼女の経歴はそれほど単純ではありません。2019年時点ではインディアナ・フィーバーで平均5.6得点だった選手が、2020年にアトランタ・ドリームで平均17.2得点・4.9リバウンド・4.0アシスト・1.6スティールまで数字を伸ばし、最優秀成長選手に選ばれました。全米の記者・放送関係者による47票のうち25票を集めた圧勝で、同年はオールディフェンシブ・ファーストチームにも名を連ねています。
翌2021年にリバティへ移ると、平均16.8得点でチームの得点源となり、自身唯一のオールスターにも選出されました。リバティはその後32勝8敗まで駆け上がり、2023年のファイナルではエーシズに敗れ、2024年はリンクスを下して球団初優勝を果たします。この2度のファイナルで、彼女はすべての試合に先発しました。2025年は膝の手術で全休。今季は復活の年になるはずでした。
リーグ最年少ロースターに「決勝の経験」を足す意味
ミスティックスは18勝12敗です。ドリームを79-74で振り切って6連勝とし、2019年の優勝チームが作った球団記録に並びました。シャキーラ・オースティンが21得点11リバウンド5ブロック、キキ・イリアフェンが15得点、ソニア・シトロンが14得点と、若い選手が結果を出し続けています。ただし裏を返せば、このチームはリーグで最も若いロースターでもあります。
ここに、2年連続でファイナルを先発で戦った32歳を1人加える意味は、平均得点の欄には表れません。ベンチから出るウイングとして、終盤の1ポゼッションをどう守るかを知っている選手が1人いるかどうか。プレーオフ争いの最終盤では、その差が順位表に効いてくる可能性があります。平均4.7得点という今季の数字を理由に見送るのは簡単ですが、ミスティックスは17試合のサンプルより、9試合のファイナル先発のほうを買ったのだと読めます。
一方で、この獲得のためにロースターを1枠空ける必要がありました。外れたのは、今年のドラフト3巡目・全体34位でテキサス大から指名されたロリ・ハーモンです。ただしESPNの取材によれば、球団は育成契約で彼女を呼び戻すことを望んでいるとされています。ルーキーの枠が経験値と入れ替わった格好で、ここは終盤戦のリスクを取りにいった判断と言えそうです。
次の試金石は王者エーシズとの2連戦
ミスティックスは8月11日と13日に、王者エーシズとの2連戦を迎えます。レイニー=ハミルトンがどのタイミングでコートに立つのか、そして復帰初戦でどれだけの出場時間を与えられるのか。6連勝中のローテーションに割って入れるかどうかは、この2連戦がひとつの目安になりそうです。
自分を必要としなくなったチームの2つ隣の街で、彼女はもう一度キャリアを立て直す機会を得ました。優勝経験者を無料で手に入れられる時期はそう長くありません。ミスティックスの一手が正しかったかどうかは、9月の順位表が教えてくれるはずです。

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