現地8月3日にウィントラスト・アリーナで行われたマーキュリー戦のあと、シカゴ・スカイのタイラー・マーシュHCは、敗因の説明よりも先に笛の話を始めました。106-101という5点差の敗戦そのものではなく、カミラ・カルドーゾがこの試合で一度もフリースローラインに立てなかったという事実に、抑えが利かなくなっていたのです。地元紙シカゴ・サンタイムズが伝えた会見の様子は、WNBAのジャッジをめぐる不満がついに沸点に達したことを示していました。
15本中8本で16得点、それでもフリースローは0本
この試合のカルドーゾは、フィールドゴール15本中8本成功で16得点を記録しています。ペイント内で体をぶつけ合い続けたにもかかわらず、フリースローの試投数は最後まで0のままでした。対するマーキュリーは、この試合で40本のフリースローを得ています。会見でマーシュが口にしたのは、「あと何試合、彼女はフリースローなしで戦えばいいんだ」という一言でした。
興味深いのは、そこで批判の矛先を審判だけに向けなかった点です。マーシュは、この日は自分たちがファウルをしすぎた、もっと規律を保てたはずだとも述べており、40本という数字がすべて誤審の結果だとは主張していません。負けの責任を丸ごと審判に押し付けるのではなく、カルドーゾという一人の選手に対する笛の基準だけを切り分けて問題視しているところに、この発言の重さがあります。なお、スカイはこの試合の第4クオーターを、左そけい部を痛めて退いた得点源シドニー・テイラー抜きで戦っていました。
毎試合11本でもおかしくない──7月から続いている同じ訴え
マーシュがこの問題を口にしたのは今回が初めてではありません。カルドーゾが11本のフリースローを獲得した先週のコネチカット・サン戦のあとにも、彼は同じ主張を展開しています。毎試合11本近く打ってもいいと主張できる、彼女は相当ホールドされている、映像は嘘をつかない──主張の中身はほぼ同じでした。勝った日にも負けた日にも同じことを言い続けている点で、その場の感情論とは性質が異なります。
背景にあるのは、カルドーゾという選手の身体的な特殊性です。200センチを超えるサイズとフィジカルを持つ選手がペイント内で仕掛けたとき、守る側が反則なしで止めるのは物理的に簡単ではありません。それでも笛が鳴らない状態が続くと、彼女への接触はある程度織り込み済みという前提が、無意識のうちに基準として固まってしまう危険があります。
9.7本と3.9本、リーグ8位とリーグ24位のねじれ
ここで注目したいのが、サンタイムズが示した2つの数字です。カルドーゾは1試合平均9.7本のシュートをペイント内で放っており、これはリーグ8位にあたります。ところがフリースロー試投数は1試合平均3.9本で、こちらはリーグ24位にとどまります。ペイント内で最も打っているグループに属しながら、ラインに立つ頻度では中位以下という、はっきりとしたねじれが起きているわけです。
もちろん、フリースローの本数はプレースタイルにも左右されます。フェイダウェイやフックを多用する選手は接触を受けにくく、リムへ正面から突っ込む選手ほど笛は鳴りやすいものです。ただ、今季平均14点前後・8リバウンド超を残すチームの主力ビッグマンについて、またしても0本で終わったと報じられる試合が繰り返されているのなら、それはスタイルだけで説明できる範囲を超えていきます。
WNBAは2026年のオールスターの場で、2027年から集中管理型のリプレイセンターを新設すると発表しました。ニュージャージー州セコーカスにあるNBAの施設を経由し、全アリーナと接続する仕組みで、数千万ドル規模の投資が予定されています。判定の一貫性がリーグ自身の課題であることは、この決定が何よりも証明しています。ただ、今回のようなペイント内の接触は、そもそもリプレイ検証の対象になりにくい領域でもあります。設備が整っても現場の基準がそろわなければ、同じ不満は残り続けるはずです。マーシュの怒りは、2027年まで待っていられないという現場の温度をそのまま映したものだと言えます。
次戦は日本時間8月6日午前10時、ホームでスパークス戦
スカイは現地8月5日、ホームのウィントラスト・アリーナでロサンゼルス・スパークスと対戦します。日本時間では8月6日午前10時のティップオフで、米国ではUSAネットワークでの中継が予定されています。会見での発言のあと、カルドーゾへの笛が変わるのか、それとも何も変わらないのかは、この試合の隠れた見どころになります。ボックススコアのフリースロー欄だけを追いかけても、十分に見応えのある一戦になりそうです。

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