スパーズが公開したオフシーズンの練習映像に、リーグ中がざわつく1本のシュートが映っていました。ウェンバンヤマが放ったのは、ダーク・ノビツキーの代名詞だった片足フェイダウェイです。ファイナルであと一歩届かなかった男が、この夏に何を積み上げようとしているのか。映像1本から読み取れる情報量としては、今オフでも屈指の濃さでした。
映像に映った「ダーク・フェイド」
片足フェイダウェイは、軸足でない側の膝を前に折りたたみながら後方へ跳び、高い位置でボールを離す技術です。ノビツキーが実質的に発明し、20年以上にわたって誰にも真似できなかったショットとして知られています。それを224センチのウェンバンヤマが撃つとなると、意味合いは大きく変わります。もともと届かない高さから放たれるボールが、さらに後方へ逃げながら出てくるからです。相手が手を伸ばして触れる可能性は限りなくゼロに近づきます。
この技術がやっかいなのは、単に高さで解決しているわけではない点です。片足で跳ぶ動作は肩を正面に向け直す時間を生み、シュートの土台を安定させます。昨季のウェンバンヤマは地上での押し合いで負けない体を手に入れており、ポジション争いに勝ったうえでこの型に入れるなら、防ぎようがない選択肢が1つ増えることになります。
数字が示していた「唯一の穴」
なぜミドルレンジなのかは、プレーオフの数字を見ると腑に落ちます。SBネイションの分析によれば、彼のシュート試投のうち28%はリム以外の2ポイント、いわゆるミドルレンジ域からのものでした。ところが、その成功率は35%にとどまっています。3ポイントを打ちたくない、かといってリムまで到達できないという局面で、確実にすがれる形を持っていなかったわけです。
技術的な素養が足りないわけではありません。キャリアのフリースロー成功率は82%、3ポイントは34%です。つまりタッチは十分にあり、足りていなかったのは「毎回同じ形で撃てる型」でした。ノビツキーの片足フェイダウェイは、その空白にぴたりとはまる解答です。
週10万ドルのオラジュワン、そして2021年の伏線
型作りの相手も豪華です。ジ・アスレチックのジャレッド・ワイスによると、ウェンバンヤマはこの夏、ハキーム・オラジュワンと個人練習を重ねています。報道によればオラジュワンの指導料は週およそ10万ドルで、受け入れる選手を毎年ごく少数に絞っているといいます。過去にはコービー・ブライアント、レブロン・ジェームズ、ヤニス・アデトクンボらが門を叩いてきました。教わるのは筋力トレーニングではなく、フェイクと間合いで相手を出し抜くフットワークです。
さらに言えば、伏線は5年前からありました。ウェンバンヤマは2021年に、ノビツキーを育てたホルガー・ゲシュビンドナーとも練習しています。当時取り組んだのはピボットの踏み方、歩幅、バランスでした。今夏はデアーロン・フォックスのテキサスの施設にも足を運んでおり、点と点が線になりつつあります。
それでも連覇の道が険しい理由
ここからは私見です。スパーズは昨季、SBネイションのプレシーズン順位で30球団中13位という評価でした。6シーズン連続でプレーオフを逃していたチームですから妥当な位置づけでしたが、そこから一気にファイナルまで駆け上がっています。しかしニックスに1勝4敗で敗れ、第5戦は本拠地フロストバンク・センターで幕を閉じています。ここで冷静になっておきたいのは、2019年のウォリアーズを最後に、カンファレンス連覇すら誰も達成できていないという事実です。若く強いチームが毎年ファイナルに出る時代ではありません。
だからこそ、この夏の取り組みは効いてくると見ています。ディラン・ハーパーやステフォン・キャッスルの成長は時間が解決しますが、プレーオフで試合の速度が落ちたときの得点手段だけは、意図的に用意しないと手に入りません。守備ではすでに歴代級の存在です。攻撃で「困ったときの1本」を持てるかどうかが、4年目の到達点を決めます。
開幕までのチェックポイント
新シーズンは10月に開幕し、ウェンバンヤマは4年目を迎えます。プレシーズンで片足フェイダウェイを何本試すのか、ポストアップの頻度が昨季から増えるのかは、序盤の楽しみ方として分かりやすい指標です。夏の練習映像がそのまま10月のスコアシートに反映されるとは限りませんが、少なくとも準備の方向性は、リーグでもっとも筋が通っています。
引用:https://sports.yahoo.com/articles/victor-wembanyama-working-dirk-nowitzki-120000964.html

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