キャンディス・パーカーが殿堂入りのスピーチで壇上に立ったのとほぼ同じ週末に、エイジャ・ウィルソンがそのパーカーをWNBA通算得点で追い抜きました。ただの偶然ではありますが、これほど物語として出来すぎた偶然もそうありません。しかも記録が動いたのは、エーシズがリンクスに92対87で敗れた試合でした。勝てなかった夜に歴史のほうが先に動く。この妙な落差が、いまのウィルソンとエーシズの立ち位置を正直に映しているように感じます。
32得点の夜に、6点差で歴代11位へ
ウィルソンはリンクス戦で32得点7リバウンド2スティール1ブロック1アシストを記録しました。今季11回目の30得点ゲームで、直近10試合に限れば4回目です。チームは競り負けたものの、個人の数字は明確に上向きです。
この試合を終えた時点で通算得点は6580点となり、6574点のパーカーをわずか6点上回って歴代11位に浮上しました(Basketball-Reference、8月16日時点)。6点差というのは、ウィルソンの得点ペースなら1クォーターで簡単にひっくり返る幅です。裏を返せば、抜くタイミングが1試合ずれていれば、殿堂入りの週末とは重ならなかったということでもあります。今季の彼女は6月8日に通算6000得点へ到達しており、その278試合というのはWNBA史上最速でした。8月には30歳の誕生日も迎えたばかりです。
パーカーが積み上げた6574点の重み
抜かれた側の数字も、あらためて眺める価値があります。パーカーは2008年のドラフト全体1位で入団し、新人王とMVPを同じ年に獲得した唯一の選手として今も名前が残っています。2013年に2度目のMVP、2020年に最優秀守備選手、2016年にはファイナルMVP。ブロック王2回、リバウンド王3回、アシスト王1回という内訳は、センターやフォワードという枠に収まらない選手だったことを物語ります。スパークス、スカイ、そしてキャリア最後のエーシズと、3球団で優勝を経験し、五輪の金メダルも2つ持っています。
オフシーズンに母国で休むという選択肢がなく、海外リーグでプレーし続けた世代でもありました。年中バスケットボールを続けた負荷がキャリアの長さを削った可能性は否定できず、6574点という数字はその条件下で積み上げられたものです。殿堂入りのスピーチでパーカーは「リサ・レスリーの偉大さとともにルーキーとして入ってきて、去り際にエイジャ・ウィルソンへ手渡すことになりました」と語りました。レスリーからパーカーへ、パーカーからウィルソンへ。バトンの受け渡しが、記録表の上でも同じ週末に起きたわけです。
次の標的は6709点、その先には10646点
歴代10位はブレアナ・ステュワートの6709点で、差は129点です。ウィルソンの今季の得点ペースを考えれば、シーズン中に射程へ入る数字でしょう。ただしステュワートも現役で加点を続けているため、この順位争いは一方通行にはなりません。さらに上には6803点のスー・バード、6811点のカピー・ポンデクスター、6895点のキャンディス・デュプリーが並び、実はこのあたりは団子状態です。歴代7位までなら、来季中に到達しても驚きません。
その先に立ちはだかるのが、10646点のダイアナ・トーラジです。4000点以上の差があり、単純計算でも数シーズンを要します。30歳という年齢とこれまでの得点ペースを掛け合わせれば「射程外ではない」と言える位置にはいますが、そこはケガと出場試合数との勝負になります。個人的には、通算得点そのものよりも「30代前半でどれだけ優勝を積めるか」のほうが、ウィルソンの評価を最終的に決めるように思います。MVP4回、最優秀守備選手3回、ファイナルMVP2回という現時点の受賞歴は、すでに得点記録だけで語れる領域を超えています。
今後の見どころ
エーシズはレギュラーシーズン終盤に入り、ポストシーズンへ向けた調整の時期に差しかかっています。今季のMVPレースも終盤まで読めない展開になっており、ウィルソンがそこにどう絡むかを含めて、残り試合の一つひとつが記録更新の舞台になります。放送予定や日程はWNBA公式サイトで確認するのが確実です。次に彼女が30得点を挙げる夜には、また順位表のどこかが静かに書き換わっているはずです。

WNBA FAN BLOG運営者/バスケットボールジャーナリスト
WNBA・NBAをこよなく愛し、バスケットボール歴30年以上。特にWNBAの魅力を日本に広げるため、2025年5月に WNBA FAN BLOG をスタートしました。試合結果や選手情報だけでなく、独自の視点による戦術分析や選手インタビュー、海外ニュースの速報翻訳まで幅広くカバーしています。
現在、日本国内では数少ないWNBA専門メディアとして、最新ニュースをどこよりも速く正確にお届けすることをミッションにしています。
得意分野
試合分析・戦術解説
選手のデータ分析(EFF、PER など)
海外ニュース速報翻訳(英語 → 日本語)
サイト目標
日本最大の WNBA 情報ポータルサイト構築
日本のバスケットボールファンコミュニティ作り
関連 SNS アカウント
X(Twitter):@WNBAJAPAN
フォローしてWNBA の最新情報をキャッチしてください!





