ファイナル進出を果たしたサンアントニオ・スパーズの新本拠地計画が、コートの外で最大の山場を迎えました。8月17日、サンアントニオ市議会は市が負担する4億8900万ドルについて住民投票を実施する案を5対6で否決しました。総額13億ドルのアリーナ計画は前進した形ですが、満席の議場で2時間を超える意見表明が続いた事実そのものが、この計画に残る溝の深さを物語っています。ウェンバンヤマという時代の主役を擁しながら、市民との合意形成では苦戦している、というのが率直な印象です。
1票差で決まった、11月3日の投票用紙に載らない4億8900万ドル
否決された提案は、市の負担分を11月3日の中間選挙の投票用紙に載せるというものでした。提案を主導したのはジーナ・オルティス・ジョーンズ市長です。市が深刻な財政赤字に直面している以上、この規模の投資には独自の住民の判断が必要だという主張でした。
結果は賛成5、反対6。賛成にはジョーンズ市長のほか、マッキー・ロドリゲス、カスティージョ、ガルバン、そしてムンギアの4議員が回りました。反対はカウア、ビアグラン、スピアーズ、アルデレテ・ガビト、メサ・ゴンザレス、ホワイトの6議員です。昨年の暫定合意が7対4で可決されたことを考えると、賛成派は2票分だけ勢いを失った計算になります。立場を変えたのはムンギアただ1人でした。
そもそも市の4億8900万ドルは、住民投票を法的に必要としない財源から出ます。州の事業税を取り込むプロジェクト・ファイナンス・ゾーン、固定資産税の増収分を充てる再投資地区、そして市有地の地代収入です。一般財源や住宅の固定資産税から直接支出されるわけではありません。それでも半数近い市民が「投票の機会を奪われた」と受け止めているのが実情です。
2025年11月の住民投票は、本当に「民意」だったのでしょうか
この計画の公的資金は総額8億ドルを超えます。うち3億1100万ドルはベア郡の会場税で、2025年11月の住民投票、いわゆるプロポジションBで承認済みです。サンアントニオ市の有権者の約51.7%が賛成し、市内だけで17万8000人以上が賛成票を投じました。反対派が問題視しているのは、この投票が郡の負担分だけを説明したものだった点です。スパーズ側に近い政治団体は920万ドルを投じてキャンペーンを展開しましたが、その説明では市の負担分に触れていなかったと批判されています。
議場では「もう民意は示された」という声と、「半分の真実しか伝えられなかった」という声が真正面からぶつかりました。ある市民は議員に対して、なぜ自分たちに投票させるのが怖いのかと問いかけています。一方で建設業界からは約50人が集団で意見を述べ、資金と政治的意思が宙に浮いた状態では大型案件を進められないと訴えました。計画の不確実性そのものにコストがある、という指摘は現実的です。
構想全体を指す「プロジェクト・マーベル」からは、すでにコンベンションセンター併設ホテルの計画が撤回され、連邦資金の見込みが立たなかったランドブリッジも取り下げられました。当初の絵と現在の絵は、確実に変わってきています。
2027年、もう一度住民投票の可能性が残ります
否決を受けて、スパーズ・スポーツ&エンターテインメントの最高経営責任者であるR.C.ビュフォードは、これで共有されたビジョンの実現に全力を注げるという趣旨のコメントを出しました。ただし課題は残っています。ベア郡のピーター・サカイ判事は、公共の利益を守れているかを見極めている段階だとして、財源となる会場税の徴収をまだ始めていません。市が負担分を用意できなければ訴訟に発展しうる、とも述べています。
さらに、アリーナ周辺のインフラ整備には2億2000万ドルから2億5000万ドルが必要と市は見積もっており、これは市債プログラムから支出されます。市債の発行には住民投票が必要です。つまり2027年に、形を変えた「スパーズ関連の住民投票」がもう一度実施される可能性が高いということになります。今回の否決は、争点を先送りしただけとも読めます。
筆者が注目したいのは、この一件がリーグ全体の新アリーナ交渉に与える影響です。公的資金への視線がこれだけ厳しくなっている以上、今後の各球団の本拠地建て替えでは、球団側の自己負担割合を引き上げる圧力が強まっていくと考えます。スパーズが負担する5億ドルという数字も、5年後には「安すぎた」と評価されるかもしれません。
スパーズの2026-27シーズンに向けて
コート上のスパーズは、2014年以来となるファイナル進出を果たした勢いをそのまま新シーズンに持ち込みます。ウェンバンヤマは2025-26シーズンに平均25.0得点、11.5リバウンド、3.1ブロックを記録しました。新アリーナの完成はまだ先ですが、その頃にはリーグの中心にいるであろうチームです。アリーナ問題の続報とあわせて、開幕日程もチェックしておきたいところです。

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