シーズンが終盤に入り、話題の中心はプレーオフと個人賞へ移ってきました。MVPをめぐる会話では、4度の受賞歴を持つエイジャ・ウィルソンの5度目が濃厚だと語られ、ルーキーのオリビア・マイルズが新人王との二冠に迫っていると騒がれ、ケイトリン・クラークとペイジ・ベッカーズの名前も当たり前のように並びます。ところが、リーグ得点ランキング2位にいる人物の名前だけが、なぜかほとんど出てきません。インディアナ・フィーバーのケルシー・ミッチェルです。High Post Hoopsが8月17日に投げかけたこの違和感は、数字を並べれば並べるほど正当なものに思えてきます。
平均24.2得点、FG50.3%、3P43.7%という同居しないはずの数字
ミッチェルの今季の平均得点は24.2で、26.3のウィルソンに次ぐリーグ2位です。同じチームで圧倒的に注目を集めるクラークが21.6ですから、フィーバーの得点源は実のところ2番の座にいるベテランのほうだということになります。
驚くのは効率のほうです。フィールドゴール成功率50.3%、3ポイント成功率43.7%。これだけの得点量を背負いながら、2本に1本を沈め続けているガードはそう多くありません。得点王争いに絡む選手は試投数が増えるぶん確率が落ちるのが普通で、量と質のどちらかを差し出すのが一般的な姿です。ミッチェルは今季、その取引に応じていません。
そして連続記録です。6月22日のフェニックス・マーキュリー戦から始まった20得点以上の試合が19試合連続まで伸び、同一シーズンのWNBA記録を更新しました。従来の記録は2023年にウィルソンがつくった15試合連続です。つまりミッチェルは、リーグで最も安定して点を取る選手という称号を、記録の形で手にしたことになります。
2018年の全体2位指名から8年、遅れてやってきたキャリアハイ
ミッチェルは2018年のドラフトでフィーバーから全体2位指名を受けて入ってきました。当時のフィーバーは長い低迷期の入り口にいて、勝てないチームで点を取り続ける役回りを何年も引き受けてきた選手です。チームが強くなった今、その積み重ねがようやくキャリアハイの数字として表に出てきたという見方ができます。
チームメイトのアリーヤ・ボストンは、The AthleticのJames Boydに対して「彼女は毎晩出てきて、もうこの調子では何点取るのか分かりません」と語っています。守備も含めて必要なことを全部やっている、という趣旨の賛辞でした。
興味深いのは、注目の集まり方が完全に非対称だという点です。クラークに向かう視線の量は、時に本人にとって重荷にすら見えます。その隣でミッチェルは、比較的静かな場所から淡々と自分のバスケットをしています。注目されないことが、かえって彼女に自由を与えているのではないか。そう考えると、19試合連続という数字が誰にも騒がれないまま積み上がっていったこと自体が、ミッチェルらしいとも言えます。
MVPは優勝候補から出る、という重力とどう戦うか
ここからは筆者の考えです。ミッチェルがMVP論争に食い込みにくい最大の理由は、数字ではなく構造にあります。この賞は歴史的に、優勝争いの中心にいるチームから出やすい傾向があります。フィーバーは直近で4連勝、23勝12敗まで来ましたが、順位はミネソタ・リンクス、ゴールデンステート・ヴァルキリーズ、ラスベガス・エーシズに次ぐ4位です。首位のチームにいるのは、MVPと新人王の同時受賞というキャンディス・パーカー以来の快挙を狙えるマイルズのほうなのです。
もう一つ、フィーバーには構造的な不利があります。クラークとミッチェルという2人の候補が同じロースターに同居していることです。チームの功績を2人で分け合う形になり、投票が割れやすくなります。MVP投票では「このチームで最も価値のある1人は誰か」という問いが先に来ますが、フィーバーの場合その答えが投票者ごとに揺れてしまいます。
逆に言えば、ミッチェルが浮上する道筋ははっきりしています。フィーバーが上位シードを引きずり下ろし、ファイナルの舞台まで進むことです。プレーオフで24点を取り続ける2番ガードが優勝に直結すれば、投票者の視界は一気に変わります。今の効率を保ったまま10月まで走れるかどうか、そこが分かれ目になりそうです。
ここからの見どころ
残りのレギュラーシーズンで追いかけたいポイントは3つあります。1つ目は、19で止まっている連続20得点がどこまで伸びるか。2つ目は、4位のフィーバーがヴァルキリーズやエーシズを捉えて上位シードを奪えるか。3つ目は、クラークとミッチェルの得点分担が終盤戦でどう変化するかです。プレーオフの組み合わせが決まる前のこの数週間は、順位表と同じくらい個人賞の行方も動きます。フィーバーの試合はリーグ公式の日程ページ(https://www.wnba.com/schedule)で確認できます。
引用:https://highposthoops.com/wnba-mvp-conversations-are-ignoring-the-leagues-second-highest-scorer

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