WNBAは現地時間7月18日、トロント・テンポを率いるサンディ・ブロンデロヘッドコーチに対し、アトランタ・ドリームのエンジェル・リースに関する不適切な発言を理由として、1試合の無給出場停止処分を科すと発表しました。場内マイクが偶然拾った一言が、わずか1日ほどでリーグ全体を揺るがす騒動へと発展した形です。
長年WNBAで指揮を執ってきたベテランのブロンデロだけに、この処分のインパクトは小さくありません。発言の背景には文化の違いという事情もあり、単純な断罪では片付けられない難しさを含んだ一件だと感じます。
第4クォーター残り3分16秒、マイクが拾った「保護された種」
発端は7月17日のドリーム対テンポ戦です。ドリームが111-92で快勝したこの試合の第4クォーター残り3分16秒、テンポのニアラ・サバリーが、オフェンスリバウンドを確保したリースにファウルを犯した場面で事件は起きました。テンポ側は「リースの肘がサバリーの肋骨に入った敵対的行為だ」として判定にチャレンジ。サバリーはその後のタイムアウト中にコートを後にしています。
リプレー検証の最中、審判に抗議するブロンデロの「エンジェル、彼女は保護された種だ!」という叫びを場内マイクが鮮明に拾ってしまいます。リーグはこの発言を「不適切なコメント」と認定し、1試合の無給出場停止という処分を下しました。なお、リースはこの試合で23得点12リバウンド3スティールと圧巻の活躍を見せています。
試合後、「黒人女性をspecies(種)と呼ぶなんて…」というファンの投稿をリースが引用し、「ARE WE SURPRISED?(驚くことじゃないでしょ?)」とピエロの絵文字付きでブロンデロをタグ付けして反応したことで、騒動は一気に拡大しました。
豪州スラングか人種的侮辱か──受け止めを分けた文化の溝
ブロンデロはオーストラリア出身です。豪州のスポーツ界では「protected species」は審判の笛に守られている選手を指す常套句で、ラグビーリーグなどでも日常的に使われてきた表現だと指摘するファンもいます。本人に人種的な意図があったかどうかは、言葉だけからは判断できません。
しかし米国において、黒人女性に「species」という言葉を向けることは、まったく異なる響きを持ちます。ブロンデロも処分発表前にSNSで全面的な謝罪を公表し、その中で「私の言葉が、特にこのリーグの黒人女性たちに、意図を超えた影響を与えたことも理解しています」と述べました。
この謝罪に対しては、サウスカロライナ大学のドーン・ステイリーHCが「本物の謝罪」と反応するなど、指導者たちから一定の評価も寄せられています。今季のWNBAではケイトリン・クラークを巡る処分介入問題など、リーグの裁定そのものが注目を集める場面が続いており、今回のスピード処分もその緊張感の延長線上にあると言えるでしょう。
発言から約1日でのスピード処分、国際化するリーグが抱える火種
今回目を引くのは、金曜夜の発言から土曜のうちに処分発表へと至った対応の速さです。急成長を続けるWNBAにとって、人種を巡る問題への毅然とした姿勢はリーグの生命線であり、判断を先送りしないという明確なメッセージを感じます。
一方で、テンポのような新設チームの誕生も含めてリーグの国際化が進む中、文化や言語の違いに起因する摩擦は今後も起こり得ます。ブロンデロの謝罪が固有名を挙げた具体的かつ迅速なものだったことは、騒動の長期化を防ぐうえで重要でした。リースは謝罪への直接の返答をまだ出しておらず、自らの姿勢を支持する記者の投稿をリポストするに留めています。両者が今後どう折り合いをつけるのかが焦点になります。
拡張1年目のテンポは現在10勝15敗。ドリームには今季3戦全敗と苦しめられており、プレーオフ争いの正念場で指揮官不在の一戦を迎えることになります。
今後の試合・観戦情報
ブロンデロは現地時間7月20日(月)のラスベガス・エーシズ戦で出場停止処分を消化する予定です。また、テンポとドリームの今季最終対戦は8月10日に予定されており、米国ではPeacockで全国配信されます。因縁の再戦がどのような空気の中で行われるのか、こちらも見逃せません。詳報はYahoo Sportsの記事でも確認できます。

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