ソフィー・カニンガム

「ブーイングも歓声もスポーツです」──カナダ初上陸のカニンガムが浴びた声と、返した13得点3本の3ポイント

 

現地時間8月18日、トロントのスコシアバンク・アリーナで行われたテンポ対フィーバーは、インディアナが101対95で勝って5連勝を伸ばしました。ところがカナダのメディアが試合後に最も多く書いたのは、スコアでもケルシー・ミッチェルの29得点でもなく、ベンチから出てきた一人のガードに向けられた声でした。ソフィー・カニンガムがコートに立つたび、会場からブーイングが起きたのです。それでも本人が試合後に語った言葉は、こちらの予想とはずいぶん違うものでした。

チェックインの瞬間に響いた声と、13得点という返答

カナディアン・プレスの報道によれば、ブーイングが起きたのは一度や二度ではありません。第1クォーターでウォームアップウェアを脱いだ時点で歓声とブーイングが入り混じり、正式にチェックインがアナウンスされると、より大きなブーイングがアリーナを包みました。第4クォーターに3本のフリースローを打つ場面でも、試合後にサインに応じながらコートを去る場面でも、同じ声が飛んでいます。

それでもプレーの内容は落ちていません。カニンガムはベンチから28分間出場し、13得点、2リバウンド、2アシスト。しかも3ポイントは3本打って3本すべて成功という完璧な数字でした。101対95という6点差の試合で、控えの選手が3ポイントを100%で沈めた事実は、勝敗にそのまま効いています。この夜のフィーバーはミッチェルが16本中11本の高確率で29得点、ケイトリン・クラークが24得点7アシストを記録しており、その脇でカニンガムが確実に加点した格好です。

試合後の会見で、記者から「ブーイングは聞こえたか」と問われた彼女の第一声は「本当に?」でした。記者が冗談まじりに、以前クラークやレクシー・ハルとケチャップ味のポテトチップスを試した投稿が原因ではないかと振ると、カニンガムは「その発想、いいですね」と笑って受け流しています。そのうえで、トロントの観客についてはこう述べました。

「観客は本当に素晴らしかったですし、それこそがスポーツだと思います」

7月21日から続く4週間、賛否はアリーナの外にも出ていました

ブーイングの背景にあるのは、7月21日のESPNのインタビューでの発言です。カニンガムはそこで、女子選手がトランスジェンダー女性と対戦する状況について反対の立場を明確にしました。この発言は米国内でも大きく賛否が割れ、彼女自身も8月5日に「気が散る要因になっている」と語っています。WNBA選手会は多様性と包摂の重要性を強調する声明を出しました。

カナディアン・プレスによれば、現時点でWNBAにもNCAAの女子バスケットボールにもトランスジェンダー女性の選手は在籍していません。NCAA全体でも、約50万人の学生アスリートのうち公表しているトランスジェンダーの選手は10人未満とされています。WNBAの労使協定は「女性である選手のみが出場資格を持つ」と定めるものの、性自認や出生時の性別に関する具体的な文言は含まれていません。リーグ側は当面の資格問題は生じていないとしつつ、この論点を議論するワーキンググループを設置しています。

この夜のアリーナは、その分断がそのまま可視化された場所になりました。客席には「トランスの権利は人権だ」と書かれた旗を含め、少なくとも3枚のトランスジェンダー・プライドフラッグが掲げられ、一方で試合前のアリーナ外では十数人がカニンガムを支持する看板と旗を持って集まっていました。その旗は会場内にも持ち込まれ、彼女がロッカールームへ向かう通路の上で掲げられています。

それでも残るのは「初めてのカナダ」という事実です

ここで注目したいのは、テンポにとってこの試合が持っていた意味です。トロントは2026年5月にリーグ参入したばかりの新設チームで、普段の本拠地はコカ・コーラ・コロシアムですが、この日はチケット需要に応えるためにNBAラプターズと同じスコシアバンク・アリーナへ会場を移しました。クラークのカナダ初戦という要素も加わり、テンポのホームゲームでありながら客席にはフィーバーのユニフォームが大量に並んでいます。

つまりこの夜のブーイングは、女子バスケットボールに人が集まらなくなった結果ではなく、集まりすぎた結果として起きたものです。観客が増えれば意見の幅も広がり、選手の発言はコートの外まで届きます。カニンガム自身が「カナダに来るのは初めてで、チームの多くにとっても初めてだった」と語ったうえで観客を称えたのは、この状況を彼女なりに受け止めた表現だったのかもしれません。ブーイングを浴びながら3ポイントを3本沈める、というのが結局は選手としての最も強い返答でもあります。

フィーバーは5連勝で東地区の順位争いを押し上げており、レギュラーシーズンは残りわずかです。プレーオフに入れば、彼女が敵地で受ける声はトロント以上に大きくなる可能性があります。テンポは初年度の途中ながら、この一戦で「新規参入チームが2万人規模の会場を埋められる」ことを証明しました。次にこのカードが組まれるとき、スコシアバンク・アリーナがどんな音で満たされるのかは、今季のWNBAを象徴する場面のひとつになりそうです。

引用:https://www.tsn.ca/wnba/article/fever-reserve-cunningham-draws-boos-at-tempo-game/

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