WNBAで珍しい退場劇が起きました。7月12日(日本時間13日)、モントリオールのベル・センターで行われたトロント・テンポ対ニューヨーク・リバティ戦で、リバティのベトニヤ・レイニー=ハミルトンがコートに転がった味方の靴を投げたところ、テンポのマリーナ・マブリーの背中に直撃。この試合2つ目のテクニカルファウルを宣告され、退場となりました。試合はテンポが93-91で接戦を制しています。バスケットボールの試合で「靴」が勝敗の分岐点になるとは、長年のファンでもなかなか見られない光景ではないでしょうか。
残り1分48秒、靴の一投が試合を動かした
第4クォーター残り1分48秒、リバティのセンターであるジョンクエル・ジョーンズの靴が脱げてコートに転がりました。これを拾ったレイニー=ハミルトンが投げたところ、靴はマブリーの背中にヒット。担当審判のケビン・ファヒーはプールレポーターに対し、靴がマブリーに当たったため2つ目のテクニカルファウルとなり退場処分になったと説明しています。
マブリーがテクニカルフリースローを沈めてテンポが91-89とリードすると、直後にブリアナ・スチュワートが同点に追いつきました。しかし残り52.5秒、2023年から2025年までリバティに在籍していたニアラ・サバリーがレイアップを決め、これがそのまま決勝点に。テンポは第4クォーターに27-13と圧倒されながらも、16点あったリードをぎりぎりで守り切りました。マブリーはこの日30得点と、勝利の立役者となっています。
第3クォーターから続いていた2人の火種
実はこの2人、試合を通じてマッチアップし続けており、第3クォーターには小競り合いで両者にテクニカルファウルが宣告されていました。つまりレイニー=ハミルトンはすでにテクニカルを1つ抱えた状態だったわけです。そこに靴の一投が重なり、自動的に退場という結末になりました。
気になるのは意図があったかどうかですが、リバティのクリス・デマルコHCは、ジョーンズに靴を返そうとしただけでマブリーに当てるつもりはなかったと説明しています。当てられた側のマブリーも「彼女はただJJに靴を返そうとしただけだと思います」と語り、意図的ではなかったという見方を示しました。そのうえでフリースローはしっかりいただく、というあたりに勝負師らしさを感じます。
なお、テンポを率いるサンディ・ブロンデロHCは2022年から2025年までリバティを指揮しており、古巣相手の白星となりました。ブロンデロHCも靴の直撃は意図的ではなかったと見ています。
拡張球団テンポの「カナダ全土戦略」が生んだ大舞台
テンポはこの試合前まで4連敗中で、これで10勝13敗。今季リーグに参入したばかりの拡張球団ですが、本拠地トロントだけでなくカナダ全土にファンベースを広げる戦略を採っており、直近2試合をモントリオールのベル・センターで開催しました。金曜のウィングス戦では20,996人というWNBAレギュラーシーズン最多観客記録を樹立し、この日も12,724人を動員。連敗中でもこれだけの観客を集める求心力は、拡張球団として大成功と言っていいはずです。
マブリーは今季初のオールスターに選出され、金曜のウィングス戦で34得点、この日30得点と絶好調。テンポの後半戦を占ううえで、彼女の得点力は最大の武器になりそうです。一方のリバティは、16点差を追い上げた勝負どころでエースディフェンダーを失う痛い敗戦。リーグがレイニー=ハミルトンに追加処分を科すかどうかは現時点で不明ですが、偶発的という関係者の見解がそろっている点を踏まえると、罰金程度にとどまる可能性が高いのではないかと筆者は見ています。
今後の注目ポイント
シーズンは折り返しを過ぎ、オールスターウィークエンドが近づいています。靴投げ事件で全米の話題をさらったマブリーとテンポが勢いに乗るのか、リバティが仕切り直せるのか。両チームの今後の日程はESPNのスケジュールページで確認できます。次の直接対決があれば、2人のマッチアップから目が離せません。

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