ペイジ・ベッカーズ

「このリーグは黒人女性が築いた」ベッカーズが沈黙を破った夜──WNBAから黒人女性ヘッドコーチが消えた異常事態

 

ダラス・ウィングスのペイジ・ベッカーズが、7月12日のシカゴ・スカイ戦勝利後の会見で、WNBAに黒人女性ヘッドコーチが1人もいないという現状に正面から言及しました。2026年シーズンは、2020年以来初めて黒人女性のヘッドコーチが不在のシーズンです。リーグの人気が急上昇しているまさにその裏側で進んでいた「静かな後退」に、リーグを代表するスターが声を上げた形です。ファン投票全体1位に輝いた白人のスター選手が、自ら進んでこのテーマを語ったことの意味は決して小さくないと感じます。

22得点11リバウンドの夜、コート外で放った言葉

この日のベッカーズは22得点11リバウンドの活躍で、スカイとの接戦を制する原動力になりました。しかし試合後のメディア対応で彼女が時間を割いたのは、自身のスタッツではなくリーグの構造的な問題でした。地元コネチカット州のCT Insiderによると、ベッカーズは「このリーグは多くの黒人女性によって築かれたのだから、彼女たちが他の誰とも同じ平等な機会を得るのは当然のことです」と語りました。

彼女は自身の生い立ちにも触れ、義理の母やAAU時代のコーチなど、人生の重要な場面で自分を導いてくれたのが黒人女性たちだったと説明しています。単なる一般論ではなく、自分の言葉として語ったからこそ、発言には重みがありました。

4年で7人からゼロへ──数字が示す急激な後退

数字を追うと、この問題の深刻さがよく分かります。2022年シーズン開幕時点では、当時12球団のヘッドコーチのうち7人が黒人指導者で、そのうちタニーシャ・ライト、ヴィッキー・ジョンソン、ノエル・クインの3人が黒人女性でした。ところが現在、リーグの黒人ヘッドコーチはタイラー・マーシュとシドニー・ジョンソンの男性2人だけです。拡張球団が加わってチーム数が増えたにもかかわらず、黒人女性はゼロになりました。

ベッカーズが所属するウィングス自身も、2年連続プレーオフ進出を果たしていたヴィッキー・ジョンソンを解任した過去があります。さらに昨季終了後にはシアトル・ストームが5年間指揮を執ったノエル・クインを解任し、これで黒人女性ヘッドコーチが完全に姿を消しました。選手の約8割を有色人種が占めるリーグで、指導者層だけが逆の方向へ進んでいるという構図です。

対照的なのが、ナフィーサ・コリアーとブリアナ・スチュワートが共同設立した3×3リーグ「Unrivaled」です。2026年シーズンには5人の黒人女性コーチが指揮を執り、ベッカーズ自身もこの冬、クインの下でプレーしました。クインは「偶然ではなく意図的なもの」だとして、リーダーシップ層の意思次第で状況は変えられると指摘しています。

「言うだけ」で終わらせないために──後半戦への視点

ベッカーズの社会的発言は今回が初めてではありません。UConn時代の2021年、ESPYの受賞スピーチで黒人女性アスリートへのメディア露出の少なさを訴えたことは、いまも語り草になっています。あれから5年、リーグの顔となった今も同じメッセージを発信し続けている一貫性こそ、彼女の発言が「ポーズ」ではないことの証明だと思います。

今後の焦点は、この声が実際の採用に結びつくかどうかです。シーズン終了後には例年通りコーチ人事が活発化するとみられます。Unrivaledで指導実績を積んだクインやライトのような経験者がいる以上、「候補がいない」という言い訳は通用しません。リーグ拡張で指導者ポストが増え続けるこのタイミングは、流れを反転させる最大のチャンスではないでしょうか。ファン投票1位のスターが注目をこの問題に向けたことで、各球団のオーナーやGMにも静かなプレッシャーがかかるはずです。

関連情報

ウィングスはこの勝利でスカイとの今季対戦を勝ち越し、チームはオールスターウィークエンドを控えて勢いに乗っています。コートで結果を出しながらリーグの未来にも目を向けるベッカーズの後半戦から、ますます目が離せません。

引用:https://www.ctinsider.com/sports/uconn-womens-basketball/article/paige-bueckers-black-coaches-wnba-comments-22343761.php

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です