新労使協定(CBA)の発効で選手の年俸が一気に跳ね上がり、100万ドル超えの「スーパーマックス契約」まで登場した2026年のWNBA。しかし、大型契約が必ずしも成功を意味しないことを示す事例として、ダラス・ウィングスのアラナ・スミスの名前が挙がりました。米ポッドキャスト「No Offseason」で、アニー・コスタビルとサブリーナ・マーチャントという2人のWNBAアナリストが、スミスの3年総額375万ドルの契約を「見合っていない」と揃って指摘したのです。
昨季の最優秀守備選手(DPOY)が、移籍からわずか半年でこのような評価を受けるとは驚きですが、数字を確認すると、この指摘には一定の説得力があると感じざるを得ません。
今季は平均14.2分で3.8得点、20試合で先発はわずか7試合
スミスの今季の成績は、20試合の出場で先発はわずか7試合。平均出場時間は14.2分にとどまり、3.8得点、2.9リバウンド、1.1アシストという数字に沈んでいます。守備の要として迎えられたはずの選手が、シーズン折り返し地点でベンチ要員に近い立ち位置になっているのが現状です。
この状況を受けて、コスタビルはポッドキャスト「No Offseason」で「最初に挙げなければならないのはアラナ・スミスです」と、期待に見合っていない契約の筆頭として名指ししました。共同ホストのマーチャントも「アラナ・スミスは私のリストにも入っています」と即座に同意しており、2人の見解が完全に一致した形です。ウィングスがスミスに用意したのは3年総額375万ドル。年平均125万ドルという金額は、ベンチスタートが多い現在の役割からすると、明らかに割高に映ります。
昨季は全42試合先発で球団記録の80ブロック、共同DPOYからの急落
この評価が衝撃的なのは、スミスの昨季の実績があまりに輝かしかったからです。2025年シーズン、ミネソタ・リンクスの一員だったスミスは全42試合に先発出場し、シーズン80ブロックという球団記録を樹立。エイジャ・ウィルソンとともにWNBA史上初の「共同最優秀守備選手」に輝きました。ウィングスはこの実績を買い、華々しいオフシーズン補強の目玉として彼女を獲得したのです。ペイジ・ベッカーズを擁する若いチームに欠けていた守備のアイデンティティを注入する、という狙いは理にかなっていました。
しかし現実は想定通りに進みませんでした。まず誤算だったのは負傷の連続です。鼻骨の骨折に顔面の負傷、さらに下腿の張りと、細かい故障が重なって稼働率が上がりません。そしてもう一つの誤算が、チーム内の勢力図の変化です。アジー・ファッドがスティール1.7で、アワク・クイアーがブロック1.1でそれぞれチームトップに立つなど、スミス抜きでも守備の柱が育ってしまいました。ホセ・フェルナンデスHCの構想の中で、スミスの序列は開幕前の想定から大きく下がっているのが実情です。
「契約失敗」と断じるのはまだ早い理由
それでも、この契約を今の時点で失敗と断定するのは早計だと考えます。第一に、スミスの数字は出場時間を考えればそこまで悲惨ではありません。14.2分で3.8得点、2.9リバウンドという生産性は、30分近くプレーしていた昨季のペースとそう大きく変わらないのです。問題は成績そのものより、契約額と役割のミスマッチにあります。第二に、プレーオフの舞台では、リンクスで優勝争いを経験した彼女の守備の引き出しと経験値が効いてくる場面が必ず訪れます。若いウィングスにとって、修羅場を知るビッグの存在は数字に表れない保険です。
むしろこの一件は、新CBA時代のWNBAが直面する最初の教訓と言えるかもしれません。年俸の相場が急騰した結果、契約と貢献度のズレがこれまで以上に厳しく可視化されるようになりました。今後は各球団のフロントに、NBAと同じレベルの契約査定能力が求められる時代になっていくはずです。健康を取り戻したスミスが後半戦で序列を巻き返せるのか、それとも375万ドルの重みが批判の的であり続けるのか。ウィングスの命運を左右する見どころの一つです。
ウィングスの今後の試合情報
ウィングスは現地7月20日、チャーター機のトラブルで延期となっていたニューヨーク・リバティ戦に臨みます。その後は来週シカゴで開催されるオールスターウィークエンドへ突入し、ベッカーズはケイトリン・クラークとエイジャ・ウィルソンの組と対戦するチームの一員として出場予定です。休養明けのスミスがどんな表情でコートに戻ってくるのか、後半戦の巻き返しに注目しましょう。

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