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「今のWNBAは最も有害な取材現場です」──視聴者7300万人の過去最高シーズンに、中継の顔エル・ダンカンが漏らした疲弊

 

WNBAを長く伝えてきた放送のプロが、ここまで率直に「しんどい」と口にするのは珍しいことです。USAネットワークでWNBA中継の前後番組を仕切るエル・ダンカンが、公共放送WHYYのポッドキャスト「Sports In America」で、いまのWNBAは取材する側にとって最も有害な空間になっていると語りました。読んだ第一印象を正直に書けば、これは誰か一人を吊るし上げる発言ではなく、リーグに関わる全員への呼びかけです。数字が過去最高を更新し続けている裏側で、伝える側がここまで消耗しているという事実は、ファンとしても他人事ではありません。

「悔しくて悲しいです」──発言の中身

ダンカンは今年ネットフリックスで新しい役割に移りながら、自分を世に押し上げたWNBAのスタジオ司会を続けています。今秋のWNBAファイナル中継にも、USAネットワークの一員として加わる予定です。その立場にいる人物が口にしたのが「今のWNBAは最も有害な取材現場で、それが本当に悔しくて悲しいです」という一言でした。

彼女が振り返ったのは、注目度と視聴率が一気に伸び、新しいスターが次々に入ってきて、長年積み上げてきた選手たちがようやく報われるはずだった時間です。それがこの3年ほどで、本来政治的である必要のないものを政治化し、可能な限り対立を煽るための材料に変わってしまった、という実感を語っています。同僚と話すとほぼ全員が同じ疲れを抱えている、とも明かしました。

数字は伸びている、それでも空気は重い

やっかいなのは、興行としての数字がまったく悪くないことです。リーグ30年目の今季、オールスターブレイク時点で全米中継のユニーク視聴者数は7300万人を超えたと報じられており、前年を上回るペースで推移しています。人気という一点だけを見れば、リーグは間違いなく歴史上最良の位置にいます。

それでも今季のコート外は騒がしいままでした。新しい労使協定をめぐる緊張、クラークのコート上での接触が繰り返し報じられ続けた一連の騒動、根拠の示されない干され疑惑、フィーバーによる記者の取材資格剥奪、コミッショナー交代を求める声、トランスジェンダー選手の参加規定をめぐる議論、賭博がらみの小さな騒ぎ。ダンカンはこの状況を、多くの人が愛していた空間が「乗っ取られている」と表現しました。

「悪い宣伝など存在しない」は本当だったのか

数年前、WNBAの周辺ではよくこう言われていました。注目が集まるならネガティブな話題でも構わない、むしろ男子スポーツと同じ土俵に立った証拠だ、と。ダンカンはその空気を当時の言葉づかいのまま再現したうえで、それが今では「みんなが大事にしていたものが奪われている」という感覚に変わったと述べています。ここが今回の発言でいちばん鋭い部分だと感じました。

筆者の見立てとしては、この転換は必然だったと思います。全国中継の枠が増え、リーグが大きな商業コンテンツになれば、切り取りやすい対立軸ほど拡散されます。試合の中身を語るより、誰が誰を嫌っているかを語るほうが再生数が伸びる構造は、他競技がとっくに通ってきた道です。WNBAが特別に劣化したというより、規模の拡大に対して語り方の作法が追いついていない、というのが実態に近いはずです。

ダンカンが「メディアだけの責任でも、リーグだけの責任でも、選手だけの責任でもありません」と線を引いたのも重要です。全員の問題だと言い切ったうえで、この船をどう立て直すか一緒に考えようという結び方は、単なる愚痴とは明確に違います。

これから何を見るべきか

救いがあるとすれば、試合そのものの視聴は落ちていないことです。プレーオフが近づき、優勝を狙える戦力を揃えたチームが複数並ぶ今季の終盤は、話題の重心をコートに戻す最大のチャンスになります。ファイナルの中継席にはダンカンも座ります。彼女が「有害」と呼んだ空気のまま秋を迎えるのか、それともシリーズの中身が上書きしていくのか。ここからの数週間は、順位表と同じくらい、リーグを取り巻く言葉の温度にも注目したいところです。

引用:https://awfulannouncing.com/wnba/elle-duncan-most-toxic-space-to-cover.html

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