日本時間8月18日にかけて、WNBAがひとつの短い声明を出しました。8月16日にアトランタのステートファーム・アリーナで行われたフィーバー対ドリームで、リーグの警備担当がスタンドの観客にTシャツを隠すよう求めた件について、リーグ自らが非を認める内容です。試合はフィーバーが95対91とオーバータイムを制する好ゲームでしたが、翌日にアメリカのメディアを駆け巡ったのはコートの外で起きたこちらの出来事でした。リーグが自分たちの警備の判断を公の場で否定するのは、かなり踏み込んだ対応だと感じます。
アトランタで何が起きたのか、リーグとドリームはどう答えたのか
報じられているところによると、この試合を観戦していた2人のファンが、着ていたXX-XY Athleticsのシャツをドリームのシャツで覆うよう求められ、応じなければアリーナの外へ案内されると伝えられました。これに対してWNBAの広報担当は、Front Office Sportsに寄せた声明で「これは起こるべきではありませんでした」と述べています。
ドリームは当初リーグの声明を示すにとどめたあと、球団としての見解を追加しました。安全で包摂的な環境をつくることを信じており、前夜の試合でWNBAの警備がとった行動はその基準に達しなかった、そしてドリームの関係者はWNBA警備の判断に一切関与していない、という内容です。ホームチームが自ら会場運営の判断と距離を置く形になりました。
事情に詳しい関係者の話として、その日のステートファーム・アリーナでは服装をめぐる警備とファンのやり取りが複数回あり、その中にはトランスジェンダー女性の女子競技参加について異なる立場を示すメッセージを身につけたファンも含まれていたと伝えられています。つまり一方向だけの出来事ではなかった、という点は押さえておきたいところです。
なお試合そのものは、クラークが26得点9アシスト、ティンプソンとミッチェルがそろって20得点、ボストンが18得点14リバウンドを記録し、32得点のグレイを擁するドリームを延長で振り切る展開でした。
7月から続いてきた一連の流れ
XX-XY Athleticsは、元トップ体操選手のジェニファー・セイが「女子スポーツを守る」を掲げて立ち上げた創業2年のオンライン専業ブランドです。このブランドが注目を集めたきっかけは、7月に公開されたESPNの特集で、フィーバーのカニンガムがトランスジェンダーの競技参加について踏み込んだ発言をしたことでした。この発言に対しては、反トランス的である、侮蔑的であるといった批判も継続的に出ています。
以降、フィーバーのアウェー戦の会場周辺やスタンドで同ブランドのシャツを着たファンが目立つようになり、7月28日のストーム戦では、シャツを着た若いファン2人とストームの共同オーナーの間でトラブルが起き、球団が謝罪する事態にまで発展しました。7月31日のポートランドでの試合では、シーズンチケット保有者が唾を吐かれ侮蔑的な言葉を浴びせられたと地元紙オレゴニアンに証言し、警察が偏見に基づく犯罪の可能性を捜査しています。
一方でブランド側は、直近2週間で売上が6倍に伸び、その期間の購入のおよそ85%が初回の顧客で、男性の割合が高かったとFront Office Sportsに説明しています。創業者のセイは、注目が大きくなるほどリーグや会場、球団が抑え込もうとしていると主張しています。
リーグが本当に問われているのは運用の一貫性です
今回の対応で目を引いたのは、リーグが言い訳を並べずに短く非を認めたことです。ここ数年のWNBAは、2025年にコートへの投てき物が相次いだ件を含め、観客の行動をめぐる問題への対処を積み重ねてきました。その延長線上で考えると、今回の焦点は「どの主張が許されるか」ではなく、「会場での服装に関する基準が明文化され、現場の警備員まで共有されていたか」という運用の問題に見えます。
基準が曖昧なままだと、判断は現場の一瞬の裁量に委ねられ、同じ日の同じ会場でも扱いがぶれます。実際にこの日は複数のやり取りがあったと伝えられており、立場の異なるメッセージが同じものさしで扱われたのかどうかは、リーグが説明を求められる部分でしょう。
商業的にも、抑え込もうとする動きは逆に注目を押し上げてしまいました。売上6倍という数字は、対応の難しさをそのまま示しています。レギュラーシーズンは残り10試合前後まで来ており、ここからプレーオフに向けて観客数も全国中継の本数も増えていきます。曖昧な運用のまま10月を迎えるのは、リーグにとって最も避けたい形のはずです。
これからの見どころ
フィーバーは今回の勝利で23勝12敗となり、東の順位争いで一歩前に出ました。ドリームとの差はわずかで、両者が再び顔を合わせる可能性も十分にあります。コート上ではクラークとリースを軸にした注目カードが続き、コート外ではリーグがどこまで具体的な運用指針を示すのかが問われます。試合日程や放送予定はWNBA公式サイトで確認できますので、残りの数週間は両方の動きを追いかけたいところです。
引用:https://frontofficesports.com/wnba-dream-fever-xxxy-athletics-shirts-fans-security-incident/

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