シーズン終盤のロースター補強は、たいてい静かに処理されます。ところが今回フェニックス・マーキュリーが迎え入れたのは、同じチームに在籍する選手の実の妹でした。8月18日、マーキュリーはマディ・ウェストベルドとシーズン残り期間の契約を結んだと発表しています。シカゴ・スカイがオファーシートにマッチしない判断を下した結果の移籍でした。プレーオフ争いから事実上外れたチームが、24歳のフォワードを確保した。表面だけ見れば、それだけの話です。ただ、この1枚の契約書にたどり着くまでの1年半を並べ直すと、印象はずいぶん変わってきます。
オファーシートにスカイが応じず、わずか3試合で今季が動きました
マーキュリーがオファーシートを提示したのは週明けの8月17日でした。スカイはこれにマッチせず、ウェストベルドはシーズン残り期間の契約でフェニックスへ移ります。ドラフトで指名した球団が、2年目の途中で引き止めを放棄したかたちです。
数字を並べると、スカイ側の判断の背景は見えてきます。2026年のウェストベルドは開幕前にウェイブされ、その後デベロップメンタル契約でロースターに戻ったものの、出場はわずか3試合にとどまりました。2025年のルーキーイヤーに26試合・平均13.6分の出番を得ていたことを考えると、明確な後退です。
ただしルーキーイヤーの中身そのものは、決して悪くありません。平均4.1得点2.4リバウンド、そして3ポイント成功率39.5%。13分強の出番でこの効率を出せるなら、ロールプレーヤーとしては十分に計算が立ちます。191センチでコーナーからスリーを沈められるフォワードは、現代のWNBAでどのチームも欲しがる型です。スカイが手放し、マーキュリーが即座に手を挙げたのは、そういう選手でした。
ノートルダムでの5年間と、姉が先に開けた扉
大学時代のウェストベルドは、明らかに主役側の人間でした。ノートルダムで5シーズンを過ごし、通算141試合で平均12.1得点6.7リバウンド1.3スティール1.0ブロック、3ポイント成功率34.9%。オールACCに3度選ばれ、2024年のACC制覇にも貢献しています。リバウンドとブロックでは、いまも同校の歴代トップ10に名前が残っています。2025年ドラフトで全体16位という評価は、その積み上げに対する妥当な値付けでした。
そして、この物語には先を歩いた人がいます。姉のキャサリン・ウェストベルドです。姉はドラフトで指名されず、7年間を海外で過ごしたうえで、2025年にマーキュリーで遅すぎるルーキーイヤーを迎えました。54試合に出場して24試合で先発、平均5.1得点2.5リバウンドを記録し、チームのファイナル進出を支えています。妹がドラフト1巡目で入った同じ年に、姉が回り道の末に同じリーグへたどり着いた。オハイオ州フェアモント高校出身の姉妹にとって、2025年はそういう年でした。
ところが2026年は、その姉が欠けています。キャサリンは海外での最終戦で右膝前十字靭帯を断裂し、今季全休が決まりました。ナット・ティベッツは「彼女にとってつらい出来事です」と受け止めを語っています。姉が戦列を離れた球団に、妹が加わる。狙って組んだ筋書きではないはずですが、結果としてそう並びました。
13勝23敗のチームが、いま24歳と契約する意味
マーキュリーは8月19日時点で13勝23敗。昨季ファイナルに進出した球団の数字としては厳しく、8位のダラス・ウィングスとは7ゲーム差がついています。トレード期限にはモニーク・アコア・マカニと将来のドラフト指名権を放出してケルシー・プラムを獲得しましたが、それでも順位は動きませんでした。
つまり残り試合の意味は、勝敗ではなく2027年にあります。プラムをフリーエージェントで引き留める交渉と、若手の見極め。ウェストベルドの契約は、間違いなく後者の側にあります。
ここからは独自の見方になりますが、この補強は「安いスリー」を確保する動きだと考えています。191センチでスリーが4割近く入る選手は、勝っているチームなら年俸が跳ね上がるカテゴリーです。ところがウェイブとデベロップメンタル契約を経た今のウェストベルドは、その市場評価が一度リセットされた状態にあります。3試合しか出ていない2026年の実績は、価格を確実に押し下げました。負けているチームがこのタイミングで拾える選手としては、ほぼ理想形です。
もちろん、39.5%という数字は26試合・13分強のサンプルから出たものですから、そのまま鵜呑みにはできません。出番が増えたときに同じ確率を維持できるかは、これからの数試合で確かめるしかない部分です。ただ、確かめるためのコストが今なら極端に低い。マーキュリーの判断は、そこに賭けたものだと読んでいます。
残り試合の見どころと、2027年のロッカールーム
短期的な注目点は、ウェストベルドがどれだけの出場時間を与えられるかです。勝敗の重みが薄れたチームでは、こうした選手にまとまった分数が回ってくることが珍しくありません。スリーの試投数と成功率、そしてビッグラインナップでのディフェンスの対応力。この3つを追えば、来季の立ち位置はかなり見えてくるはずです。
そして中期的な楽しみは、やはり2027年です。姉のキャサリンがリハビリを終えて戻り、妹がロースターに残っていれば、姉妹が同じユニフォームで並ぶことになります。ドラフト外から7年間を海外で戦った姉と、1巡目指名からウェイブを経験した妹。まったく違う道を通ってきた2人が、同じロッカールームに落ち着く。順位表には出てこない見どころが、シーズン終盤のフェニックスにはあります。
引用:https://www.sbnation.com/womens-sports/1125461/phoenix-mercury-maddy-westbeld

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