ケイトリン・クラーク

なぜ1試合でNBAの年間平均に並べたのか──107万人が映すクラーク特需の異変

 

アマゾンのPrime Videoで中継されたフィーバー対ウィングスが、平均107万人を集めました。Prime Videoで計測されたWNBAの試合としては過去最多で、しかもこの数字は、同じPrime Videoが昨シーズンを通して記録したNBAの平均視聴者数とぴったり並んでいます。1試合とシーズン平均を単純に比べるのはフェアではありませんが、それでもケイトリン・クラークという一人の選手が持つ集客力が、もはやリーグの枠を越えた場所にあることを突きつける数字です。筆者が驚いたのは記録そのものより、この夏ほぼすべての放送局で同じことが起きているという事実の方でした。

107万人と40万人、同じ配信基盤で開いた2.6倍の差

まず数字を整理します。8月20日にPrime Videoで配信されたフィーバー対ウィングスは平均107万人。それまでの最高だった2週間前のエーシズ対フィーバーの94万8000人を、12万人以上上回りました。集計元はスポーツ視聴率を追うSports Media Watchです。

比較対象として置かれたNBAの数字が興味深いところです。Prime VideoのNBA中継は昨シーズン平均107万人。つまりWNBAの1試合が、NBAの年間平均に到達したことになります。ただし公平を期すなら、NBA側の最高値はNBAカップ決勝の307万人であり、単発の山でいえばまだ大きな開きがあります。

そしてもう一つ、見逃せない対比があります。同じPrime Videoが配信したWNBAコミッショナーズカップ決勝、エーシズ対リバティの平均は40万3000人でした。リーグ屈指の2チームがタイトルを争う一戦が40万人、レギュラーシーズンの1試合が107万人。同じ配信基盤の、同じシーズン内で、2.6倍以上の差が開いたことになります。クラークが出るかどうかが、WNBA中継の視聴者数を丸ごと別の桁へ押し上げているわけです。

なお、この記録には注意書きが必要です。Prime VideoはWNBAを2021年から配信していますが、ニールセンによる視聴率計測の対象になったのは今季が初めてです。「史上最多」は、正確には「計測が始まって以降で最多」という意味になります。

局を問わず塗り替えられた夏、唯一残ったABCの壁

この現象はPrime Videoに限った話ではありません。7月のフィーバー対エーシズは、NBCとPeacockで平均264万人を記録しました。これは2000年以降のWNBAレギュラーシーズンで2番目に多い数字です。

8月のフィーバー対ドリームはESPNで258万人を集め、ケーブル放送のWNBA中継として史上最多となりました。7月のフィーバー対リバティもCBSで258万人に達し、CBSにおけるWNBA中継の歴代最高値を更新しています。

規模の小さい放送局でも同じことが起きました。8月のフィーバー対ウィングスはIONで162万人。これはIONというネットワーク全体で、2022年8月30日以来もっとも見られた番組でした。ジャンルを問わず、です。7月のフィーバー対バルキリーズもUSAネットワークで114万人を集め、同局のWNBA中継として最高を記録しました。

記録更新を免れたのはABCだけです。8月のフィーバー対スカイは260万人でしたが、昨季のスカイ対フィーバー(270万人)には届きませんでした。そしてこの昨季の一戦こそが、2000年以降のWNBAレギュラーシーズンで最多視聴の試合として今も残っています。皮肉なことに、クラークがABCで記録を破れなかった理由は、破るべき記録もまたクラーク自身が作ったものだったからです。

「Big Data」という但し書きと、中断明けに待つ本当の試験

ここからは筆者の見方です。今季の記録ラッシュには構造的な追い風があります。ニールセンが9月から採用した新しい「Big Data」基準はスポーツ中継の視聴者数全般を押し上げる方向に働いており、単純な前年比較は成立しにくくなっています。数字を扱うなら、この但し書きは外せません。

それでも、同じ基準の中で局ごとに横並びにしたとき、フィーバーの試合だけが突出しているという事実は動きません。計測基準が変わったところで、同じシーズンの中でコミッショナーズカップ決勝の2.6倍を集めるという構図までは説明できないからです。

問題はこの先にあります。各局はいま「WNBAはどれだけ数字を取れるか」ではなく「クラークが出る試合はどれだけ数字を取れるか」を測っている段階に見えます。もしポストシーズンでフィーバーが早い段階で姿を消したとき、40万人という数字がどこまで戻ってしまうのか。リーグにとっての本当の試験は、記録更新のニュースが途切れたあとに始まります。

一人の選手への依存は、成長の証であると同時にリスクでもあります。エンジェル・リースやペイジ・ベッカーズといった同世代のスターが、局ごとの記録表に自分の名前を残せるかどうか。それが次の2、3年でWNBAの経済的な地力を決めることになりそうです。詳細な数字はAwful Announcingの記事にまとまっています。

今後の見どころ

WNBAはワールドカップによる中断を控えており、最後のプレーオフ枠はベッカーズを擁するウィングスが確保しました。中断明けのポストシーズンで、フィーバーの試合がどの放送局にどれだけの数字を持ち込むのか。今季の視聴率をめぐる話は、コート上の勝敗と同じくらい追いかける価値がありそうです。

引用:https://awfulannouncing.com/wnba/caitlin-clark-viewership-prime-video-nba-average.html

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